明確さを欠いた会話は、相手を泣かせることすらある
ギャロ:ここで、もう1つ話をします。私が中間管理職だったある時、難しい会話をしなければならなくなりました。上司から、「この人に、病欠が多すぎると伝えてきて」と言われたんです。私は、「わかりました」と答えました。
でも何も質問しなかった。「なぜそれが問題なのか?」とも聞かなかった。彼女は仕事をこなしているように見えたし、私はよくわからなかった。でも私はそれを、「極秘任務」みたいに扱ってしまったんです。よし、会話に入る。「病欠が多すぎます」。言った。終わり。退出。
さて、何が起きたと思いますか? 彼女は泣きました。そうですよね。私は本当にひどいやり方をしたんです。上司の対応もまずかった。なぜそれが問題なのか、何の情報も彼女に与えなかったからです。
彼女の頭の中にも、彼女なりの物語がありました。彼女には、仕事に来られないもっともな理由があった。でも私は、そこに何の好奇心も示さなかったんです。
本来、あの会話に入る前に自分に聞くべきだったのは、「どうすればこれをできるだけ明確に伝えられるか」でした。「どうやって言って、すぐ逃げるか」ではない。「どうやって自分にとって楽に済ませるか」でもない。「どうやって一番気まずくなく済ませるか」でもない。
「彼女が“何が起きているのか”を推測しなくて済むように、どうすればできるだけ明確にできるか」だったんです。
ヒント4 難しい会話には感情の調整力が欠かせない
ギャロ:さて、4つ目のヒントです。「感情の調整力を高めること」。
私たちが難しい会話で最悪になるのはいつか。真実を伝えるのが下手になるのはいつか。透明であることができなくなるのはいつか。適切な言葉が言えなくなるのはいつか。それは、自分の感情がうまく整っていない時です。
正直、今の時代、私たちのほとんどはたいてい感情が乱れた状態にある、と私は思っています。みなさんが笑っているということは、同じように感じているのかもしれませんね。
世の中には、私たちの感情を乱すものがあふれています。そして、私たちの内側でも同じように感情を揺さぶることが起きています。
でも、そうした感情を整えられれば、大きな助けになります。ここで「感情調整」とは何かをはっきりさせたいのですが、私たちはその意味をよく誤解しているんです。私はこの画像を選びました。たぶん私たちは、感情調整と聞くと、こんな状態を思い浮かべているからです。
いつも幸せ。子犬と虹。ずっと穏やかで、落ち着いていて、平常心。
でも、それは抑圧です。ネガティブな感情を押し込めているだけ。感情調整とは、自分が何を感じているかに気づいていて、その感情に会話を乗っ取られたり、自分の反応を支配されたりしないようにしつつ、その場にちゃんと居続けられることです。
さっき不快感の話をした時、私の頭の中では、「逃げろ、逃げろ、逃げろ」「止まれ、止まれ、止まれ」と独り言が始まる、と言いましたよね。あれが感情の不調整です。
だから、ここは高めていかなければいけない。感情調整については、いろいろな情報があります。イーサン・クロスには『
Shift』という本もあります。興味があればおすすめです。
ここでは、難しい会話の中で感情調整に苦労する人のために、その場で、あるいは事前にできることを3つだけ、手短にお伝えします。
感情を整えるには、自分との距離と時間の視点を持つ
1つ目は、「自分を少し引いて見ること」です。感情から少し距離を取る力については、とても興味深い研究があります。
例えば、「私はもういっぱいいっぱいだ」ではなく、「エイミー、あなたは前にもこういう圧倒される気持ちを経験して、それでも大丈夫だったよね」と考える。自分に優しく語りかけることでもありますが、感情と自分を少し切り離すことでもあります。感情とぴったり一体化しないようにする。
「私は前にも難しい会話をしたことがある。そして生き延びた」。そう考える。少しだけでも、その感情から距離を取ることができます。
2つ目は、私がとても気に入っている方法です。つい先日も、大学の寮でルームメイトとのことで悩んでいた10代の娘に使いました。
「このことを、1時間後にはどう感じている?」 「来週には?」 「1年後には?」 おもしろいことに、娘は、 「1年後には、この会話のことなんて覚えていないと思う」 と答えました。そこまで言える冷静さがあったんです。 私は、「そう、そのとおり」と思いました。
私たちは、その瞬間の、「気まずい」「関係が壊れる」「こんなの無理だ」に飲み込まれてしまい、それが会話できない理由だと感じてしまいます。でも少し時間旅行をしてみる。
未来の自分は、この会話をどう感じているだろう? たいていは、大したことじゃなかったと思うか、話してよかったと思うはずです。
見方を変えるだけで、会話に入る感情も変えられる
ギャロ:3つ目は、「感情の見方を変えること」。私たちはたいてい、1つの感情、しかもたいていは不安や恐れのようなネガティブな感情だけを見てしまいます。でも、この会話について自分はほかに何を感じているのか、と考えてみてください。
例えば、不安というのは、「そのことを大切に思っている」「強く感じている」サインでもあります。では、この会話について、自分はほかに何を感じているのか。相手への思いやりはないだろうか。今感じている感情を、別の角度から見られないか。そうすることで、会話にもっと前向きに入っていけるかもしれません。
さっき話した娘が、もっと小さい頃の話です。私たちはロードアイランド州に住んでいて、ある日、高速道路を走っていました。渋滞していたので車はゆっくり進んでいました。すると、2台のバイクがものすごいスピードで横をすり抜けていったんです。車線の間を縫うように、車の間を行ったり来たりしていました。
一時は時速90マイルくらい出ていたと思います。しかも2人ともヘルメットをかぶっていない。私は、バイクに乗ること自体が怖いんですが、ヘルメットなしで乗るなんて、本当に恐ろしい。そこで、「これはいい教育のチャンスだ」と思ったんです。
娘には絶対に、ヘルメットなしでバイクに乗ってほしくない。だから、このことについて話そうと思いました。私はすぐに、彼らを責めるように言い始めました。「ちょっと、信じられる?」「あんなに速いの見た?」「危なすぎる」「もし私たちがぶつかったら、大けがしてたよ」。
娘も乗ってきて、「ママ、私なら絶対にそんなことしない」と言いました。私は心の中で、「よし、親として誇らしい瞬間だ」と思いました。「この愚かな人たちを教材にして、娘に教えることができた」って。
それから少し沈黙があって、娘が言ったんです。「でもママ、あの人たち、ヘルメットを買いに行く途中だったのかもよ」。もちろん、たぶんそんなわけないですよね。でも、あの瞬間に娘がやったことは、私の感情のあり方をまるごと変えることでした。別の見方を示してくれたんです。
それは真実ではなかったかもしれない。今ごろはヘルメットをかぶっているといいんですけどね。でも、そのおかげで、私たちはその状況を違う視点で見られたし、違う感情で受け止められた。
難しい会話の時にみなさんにもやってほしいのは、これです。「これを別の見方で捉えるとしたら、どう見えるだろう?」と考えること。
その見方が本当に正しい必要はありません。でも、それによって、その会話に対して抱いているネガティブな感情から少し離れられるなら、それで十分なんです。