【3行要約】
・商社の面接は、面接官の経験値に基づく鋭い質問が飛び交う「フリースタイルの総合格闘技」であり、コンテンツ・コミュニケーション・印象の3要素で評価されます。
・伊藤忠商事で22年間人事に携わった佐野智弘氏は、多くの就活生が「何を(What)」という実績に固執する一方で、面接官は「なぜ(Why)」「どのように(How)」という思考プロセスと再現性を注視していると語ります。
・優れたエピソードの有無以上に、結論ファーストで語る力や、思わず「飲みに連れて行きたい」と思わせる可愛げ・誠実さが重要だと語ります。
商社の面接はフリースタイルの総合格闘技
入江美寿々氏(以下、入江):みなさんこんにちは。クロスメディアの入江です。この YouTube チャンネルはビジネス書の出版社クロスメディアパブリッシングが運営しています。
今回のゲストは商社ビジネスの著者の佐野智弘さんです。よろしくお願いいたします。
佐野智弘氏(以下、佐野):はい、よろしくお願いします。
入江:今回のテーマですが、佐野さんは伊藤忠商事で 22年間人事に携わっていて、たくさん面接もされてきたということだったので、 「面接ではここを見ている」とか「商社面接で評価される人とされない人」というテーマでいこうと思います。
佐野:お願いします。
入江: 実際、面接はものすごい回数をされてると思うんですけれども、どのようなところを見ていらっしゃるんですか?
佐野:まずお話ししたいのが、商社の面接はフリースタイルの総合格闘技みたいなところが ありまして、どういったところを評価するかって、 面接官に委ねられてる感じが強いんですよね。
ですので面接官もいろんな部下を持ったり仕事の経験があって、こういう社員が活躍するぞっていうのを経験値で理解してると。その経験値と照らし合わせてそれぞれの面接官が自分なりの評価基準を持って評価している。しかもここって決まってるわけじゃなくて、いい角度からいろんな質問をしてくると。そういった特徴があるんですよね。
共通項みたいなものも当然ありまして、商社に限らずですが、コンテンツ、コミュニケーション、 それと印象。 これが評価する時の 3つの大きなポイントになるわけです。商社の場合ですと、その重要度は大体1対1対1ぐらいですね。
どうでしょう? みなさんの体感と同じかどうかわかりませんけども、印象の割合が高いんじゃないかなって思います。
入江:うん。印象大事ですよね。
刺さる「ガクチカ」の作り方
佐野:就活生のみなさんはどうしてもコンテンツに偏りがちで、コンテンツが論理的に矛盾がないかどうかとかですね。矛盾があるとペタペタペタって補強して。論理的に正しく綺麗にしたりとかして。コンテンツを磨くことには力を入れるんですけど、それをどうやって伝えていくかってこととか、言葉以外でどうそれを感じてもらうか。そこが少しおろそかになってる人が多いかなって感じはありますね。
入江:コンテンツというのはいわゆる自己 PR だったり学生時代どんなこと頑張ってきたかという自分で用意していくみたいなそういうエピソードトークですよね。
佐野: はい。そうですね。学生時代に一番力を入れたこと。ガクチカですね。これは商社でももちろん聞かれますね。面接官が求めているポイントと学生のみなさんが話すポイントってすごく乖離してる感じがあるんですよね。
学生のみなさんはどうしてもWhat(何を)を話したいじゃないですか。 Whatというのは目標があって、 それに対して課題があって、策を講じて量的な結果が出ましたと。これがWhatですよね。 そこを綺麗にすることに頭がいきがちです。それはそれでいいと思うんですけど、そのWhatから伝わることってエピソードでしかないじゃないですか。
エピソードは伝わるけど、「じゃあどういう人なのか」というのがなかなか見えにくい。あとは商社に入ってからの再現性という視点でも、絶対同じようなことって起きないじゃないですか。

なので商社の面接官はあんまりWhatには注目していないんですね。話の流れとして知っておかないとその先に進めないよ、というぐらいなので、Whatをいかに完潔にわかりやすく伝えていくかがまず大事かなと。それができていない人はけっこう多いです。 結局そのWhatに対する質問のラリーが始まっちゃって、Whatはわかったけどそれ以上時間の関係で進めませんでした、みたいな人は多いですね。
入江:「その人がどういうところを工夫したか?」とか「どうしてそれをやったのか?」みたいなところがわからないままですよね。
「エピソードの強さ」よりも大事なこと
佐野:WhatはWhatで簡潔に伝えるんですけど、それ以上に大事なのがWhy(なぜ)とHow(どのように)です。「なぜ、それをやったのか?」とか「なぜ、そう考えたのか?」。その「なぜ?」の部分ですね。それと、Howの部分。これは、何かやろうとしても絶対にうまくいかないじゃないですか。特に商社の場合ですと、人間関係で苦労したことを「どうやって乗り越えたか?」。
そのHowの部分が大事なんですね。Whatは簡潔に、WhyとHowの部分を手厚く話をして、自分というのをエピソードを通じて伝えていきます。そうすると「この人はこういう人なんだな」というのが理解できますし、その先の商社に入ったあとの活躍イメージが湧いてきます。その点が学生のみなさんと、面接官の視点が違うのかなという感じがしますね。
入江:大学生の時に知っておきたいことですよね。
佐野:そうですね。
入江:ズレたことをどれだけがんばっても、もったいないことになりますもんね。
佐野:なかなかWhatで差別化って難しいですよね。だいたい同じ話になるじゃないですか。
入江:ものすごいエピソードを持っている人しか受からない感じにもなってしまいますしね。
佐野:実際、商社に受かっている人でもエピソードはそこまで特殊じゃないし、強くもないけど、しっかりとWhyとHowを話すことで自分を理解してもらって、内定を勝ち取った人はけっこう多いですね。
入江:そこまですごくないエピソードというのは、(例えば)どのくらいの……。
佐野:例えばガクチカでいうと「アルバイトを7つやっていました」みたいな。「体育会で全国大会を目指して」みたいな人って強いじゃないですか。
入江:そういう人、多そうですね。
佐野:「アルバイトを7つ一生懸命にがんばっていました」はそれ(体育会のエピソード)に比べると弱いじゃないですか。アルバイト7つを通じて「なぜ、それをやろうとしたのか?」ということと「仕事を通じて、どういうことに苦労して、どう乗り越えて、どう成長できたか?」ですね。そこを語ることで、その人の人となりを伝えて、内定を勝ち取った人はいますね。
入江:ネタだけじゃなく、本当にその人なりの行動したこととか、考えたことが大事なんですね。
「新卒採用」と「中途採用」では見られるポイントが違う
佐野:追加すると、定量的な結果がないと良くないみたいなのがあるじゃないですか。
入江:よく聞きました。
佐野:「20パーセントの売上アップ」みたいなこととか、それって僕はまったくないと思っています。結果って、その時の運もあるし、「その数字にどのぐらいの価値があるのか?」ってわからないじゃないですか。なおかつ、(数字を)盛るじゃないですか。だから定量的な結果よりも「その取り組みを通じてどれだけ成長できたか」をしっかり語ったほうがいいと思うんですよね。
そこもやはり「定量的な結果がないからダメなんでしょうか?」みたいな質問はけっこうあるので、そこは勘違いしている方が多いかな。
入江:結果は、新卒だったらあまり問われないけど、例えば商社にキャリアで入りたいっていう方は、やはり問われるんですか?
佐野:キャリアの方は「仕事を通じて、どれだけ結果を出したか?」というのは、問われると思いますね。なぜなら、それは再現性があるからです。
入江:そうですね。
佐野:そこの違いはありますね。
入江:新卒の大学生となると、定量的な結果だけではなく、それ以上にエピソードのところでの工夫が必要なんですね。
佐野:そうです。成長とかですね。
好印象なのは「可愛げ」や「お茶目さ」がある人
入江:コンテンツ以外だと、印象という話だったんですけど、それはどういうことですか? 話し方とか、明るさとか、表情とかですか?
佐野:そうですね。基本的には、明朗快活な人が好まれる傾向はありますね。もちろんそれには幅があります。ものすごくエネルギーが溢れて、見るからに元気いっぱいの人もいれば、少し落ち着いた感じの人もいますけど、明朗快活な方が多いですね。それがベースとなっていくつかポイントがあるんですけど、1つはやはり「信頼できるかどうか?」ということですね。
もちろんそれは、(面接では)わからないですよ。 でも印象で「この人は信頼できそうか」と、だいたいわかるじゃないですか。そういう「信頼できるか?」というのは1つです。もう1つは人間性の部分ですね。人間性というのは、例えば素直さであったり、誠実さであったり、謙虚さです。そういったものが「にじみ出ているかどうか?」。これもだいたいわかりますよね。
最後は、私はよく言っているんですけど、「可愛げとかお茶目さ」みたいなところです。一緒に働くわけですから「かわいいな」とか「飲みに連れて行ってやりたいな」みたいに思える人のほうがいいじゃないですか。人の懐に入ってくるような可愛げとかお茶目さみたいなのは大事かなと思いますね。
入江:社内でもそうでしょうけど、商社の方だと急に知らない土地に行って、知らないコミュニティに行って、そこで仕事を作らなくてはいけないので、かなり求められそうですね。
佐野:そうですね。
高評価を得る人の話し方
入江:先ほど「3つ」とおっしゃっていたのが、コンテンツとコミュニケーションと印象。
佐野:はい。
入江:コミュニケーションってところは、どうやって見ていらっしゃるんですか?
佐野:「話がわかりやすいかどうか?」。これはすごく大事ですよね。あとは「自分の言葉で話せているかどうか?」ですね。ざっくりと、この2つです。話のわかりやすさっていうのは「質問にちゃんと答えているかどうか?」って大事ですよね。Yes/Noクエスチョンであれば、そういう答えがあるし、5W1Hだったら、その答えがあるし。
それは「面接官の意図をちゃんと汲み取った上で」ということですね。「結論ファースト」ってよく言われます。結論から述べて、そのあとに補足説明をして、抽象と具体を上手に使い分けて話をしていくと、全体像もわかるし、具体的な細かいところも理解できます。なので、結論ファーストを徹底して、抽象と具体を上手に行ったり来たりする。
自分の言葉でちゃんと語るって、ありますよね。就職用語みたいなのありません?
入江:みんなが使う言葉ということですか?
佐野:みんなが使う「教科書に書いてあるようなのをコピペして話しているなぁ」みたいな感じの。
入江:自己PRって自分で考えたほうがもちろんいいですけど、型みたいなのが出回っていたりはしますよね。
佐野:ありますね。自分の言葉でシンプルに伝えていくのが大事なんですね。一方で、商社はメディアとかマスコミではないんです。キャッチーな感じはまったく求めていない感じですかね。むしろ、ふだん使うような自分の言葉で自分のことを語るような人が、高い評価を得ているかなという感じがしますね。
入江:そういう人じゃないと、大きな仕事を任せられないなと思います。「今後、より成長していけそうな人」という可能性も、そこから見ることができますよね。
佐野:そうなんですよね。