【3行要約】
・職場で「不公平だ」と感じる背景には、実は解消可能な「難しい会話」を避けてしまっているという構造的な問題が潜んでいます。
・職場における人間関係の専門家エイミー・ギャロ氏は、85%の人が「言い出すのが怖い」と問題を抱え、その沈黙が組織をむしばむと指摘します。
・沈黙のコストと発言のメリットを再評価し、表面上の「人工的な調和」を打破して心理的安全性を築くための第一歩を踏み出しましょう。
難しい会話は、たった一つのすれ違いから始まる
Amy Gallo(エイミー・ギャロ)氏(以下、ギャロ):みなさん、こんにちは。ブラジルの友人たちには「ボア・タルジ」とごあいさつを。ちゃんとブラジル勢のことも意識していました。来てくださってありがとうございます。
今日は、「難しい会話」についてお話しします。私の活動をご存じの方ならおわかりだと思いますが、私は毎年SXSWで新しいテーマの講演をしています。まずは、この講演がどこから生まれたのかをお話ししたいと思います。
きっかけは、オーストラリアのパースで、たまたま人の会話を聞いてしまった瞬間でした。ここにパース出身の方はいらっしゃいますか? パースの友人であるアレックスは来ていると思いました。
私はオーストラリアのパースにあるレストランで、一人でランチをしていました。私は一人で食事をするのが大好きなんです。だって、その時に私の大好きなことができるから。大好きなこととは、他の人たちの会話に聞き耳を立てることです。
私は近くにいた2人の男性の会話を聞いていました。お昼どきで、そこはビジネス街。昼休みの人たちがたくさんいました。その2人のうち1人はものすごく声が大きくて、聞き耳を立てるのが本当に簡単だったんです。彼の話は全部聞こえてきました。
すると彼が、同僚にこう言い始めたんです。「ああ、あの仕事は取れなかったよ。女に回されたんだ」。私は「これは興味深い」と思って、後ろを振り向きそうになりました。すると同僚は、「それは残念だったね。気の毒に」と言いました。
彼は続けて、「いや、ああするしかなかったんだよ」と言いました。そのやり取りを聞いた時、私が真っ先に思ったのは、「そのマネジャーは、彼がその仕事を得られなかった本当の理由を、実際には伝えていなかったんだな」ということでした。
もちろん、正直に言えば、私はそこで何が起きたのか知りません。その場で誰が不誠実だったのかもわからない。大声で話していた彼が、友人に対して本当のことを言っていなかったのかもしれないし、別の理由を伝えたマネジャーのほうが不誠実だったのかもしれない。あるいは、本当にジェンダー平等を進めるために、その仕事を女性に任せたのかもしれない。それもわかりません。
でも、この出来事で私が気づいたのは、職場には「不公平だ」という受け止め方が本当にたくさんあって、その多くは、実は難しい会話を1つ交わせば解消できるかもしれない、ということでした。
私は(職場環境の問題に関する専門家なので)難しい会話の専門家です。だから思ったんです。「これは新しい使命だ。難しい会話を通じて、偏見だと受け取られてしまう感覚をどう減らしていけるだろう?」今日はそのことを一緒に考えていきます。
言うべきことほど口にしにくい
ギャロ:最初に、みなさんに思い浮かべてほしいことがあります。仕事で「これは話さなきゃいけない」とわかっていたのに、ためらってしまった難しい会話を思い出してください。もしかしたら、結局しなかった会話かもしれません。
そして、その会話をしなかった理由を考えてみてください。何があなたを止めたのでしょうか。何を自分に言い聞かせて、「やめておこう」と思ったのでしょうか。
いくつか、声に出して教えてください。どんな理由がありましたか?
会場:怖かった。
ギャロ:怖さ。ほかには?
会場:不安感。
ギャロ:不安ですね。
会場:相手には伝わらない。
ギャロ:相手には伝わらない。そうですね。ほかには?
会場:相手は変わらない。
ギャロ:そう。だったら、わざわざ言う意味があるのか、と。どれももっともな理由です。
この会場、ライトがとてもきれいで、みなさんの顔があまりよく見えないんですけれど、きっと私たちみんな、難しい会話をしない選択をしたことがあると思います。そういう経験がある方は手を挙げてみてください。
たぶん、ほとんど全員ですね。後ろのほうは見えませんが、でも、あなたは一人じゃないんです。これは、多くの人がしてしまうことです。
私たちはもともと、同僚との関係を円滑に保とうとします。調和やつながりを求めるものです。だからこそ、難しい会話を持ち出すことは、それを壊してしまうように感じるのです
関係を傷つけるかもしれない。物事の進みを遅くするかもしれない。うまくいかないかもしれない。だったら、なぜそんなことをするのか、と思ってしまう。
ある調査では、85パーセントの人が、職場で「言い出すのが怖い」と感じる懸念や問題を抱えていた、という結果が出ています。これは非常に大きな数字で、深刻な問題です。なぜなら、そうした難しい会話をしないまま避け続けると、「不公平だ」という感覚が心の中でどんどん膨らんでしまうからです。
私は、みなさんに「その状態と戦う側」に加わってほしいんです。職場を少しでも公平な場所にしたい。先ほど手を挙げた方は、その時何について話せなかったのか思い出してみてください。どんな問題や懸念があって、それを言い出すのが怖かったのか。あとでそこに戻ってきますので、頭の片隅に置いておいてください。
それはフィードバックでしたか? 公平性に関する懸念でしたか? 機能していないと思った制度でしたか? 「この戦略では失敗する」と思ったことでしたか? 何について話すのが怖かったのでしょうか。