【3行要約】 ・メタ認知は固定された能力ではなく、置かれた環境や向き合う課題によって揺れ動くものだと手嶋氏は説明します。
・手嶋氏は、ミスや不確実な状況に直面した時に「視点を増やせるか」「構造で捉えられるか」が両者の差として表れると語ります。
・また、日常業務で複数の視点を意識し、構造的理解を深める習慣から始めることで、不確実な状況でも行動できる力を身に付けられると提言します。
前回の記事はこちら 成人発達理論はマズローの欲求段階とも重なる
手嶋武久氏:ちなみにこれはマズローの5段階欲求とかなり相関をしていて、具体的思考段階は生理的欲求というかたち。一番ここのベースになるところだったりします。ここの相関は見えにくいんですけど、その上からはかなりわかりやすいかなと思っています。

安全欲求ですね。安全な衣食住とかがちゃんと保てているとか、家やお金がちゃんとあるとか、そういったところが利己的段階ですね。「俺が、俺が!」っていうのは安全欲求とけっこう近しいものかなと思っています。
さらに、社会的欲求が「人に認められたい」とか、「どこかに帰属したい」という気持ちなんですけど、これは他者依存とかなり相関が強いと思います。
自己主導段階は、ちょっと文字がちっちゃいんですけど、これ、自己著述段階という別の言い方があるんですね。何かっていうと、この人たちは自分の意見を言いたいんですよ。
あらためて人の意見を聞いた上で「俺はこう思うよ」と。この「俺がこう思う」というのはけっこう強く言いたいところがあるので、承認欲求の意味でもけっこう相関があるという考え方をしています。
最後の自己変容段階は「自分自身の器自身もどんどん成長していくよ」というところです。自分自身を実現していきたいという意味で自己実現欲求と相関している。こういう見方で、マズローの5段階欲求とかなり相関性があるよという考え方があったりします。
というところで、ちょっとワークをしてみたいなと思います。自分の発達段階はどこだと思いますか。(ステージ)2、3、4、5っていうのがある中で、なんか「3.1だな。3.2とかかな?」みたいな感じで見てもらえるといいかなという感じです。
たぶん、「3」「4」とかってパキパキと出ないと思うので、「自分は、このあたりかな?」というふうに見てもらえればOKです。2分間だけ時間を取れればと思うので、ちょっと考えてみてください。
(※参加者のワークタイム)
発達段階は固定ではなく、環境と課題で揺れ動く
ありがとうございます。ちなみに成人発達理論において、「この発達段階は動く」という考え方をしている人もいます。
カート・フィッシャーという人と、ロバート・キーガンという人がけっこう有名なんですけれど、理論の内容がちょっとずつ違うんですよ。
カート・フィッシャーが言っているのが、ダイナミックスキル理論なんですけど、これは「発達段階は移動するよ」という感じです。これは、(発達段階には)環境依存性と課題依存性の2つがあるんですね。
なので、会社だとバリバリ仕事ができる部長さんが、家に帰ると、「ママ、これやって」みたいなことになるみたいな。そういう、(発達段階が)環境によって変わっちゃうよというところ。
あとは課題によっても、やったことがあるやつはめちゃくちゃ自己主導だけど、初めてのものに関してはめちゃめちゃ他者依存になってしまう人もいるんですよね。これは、どんな課題に取り組むかによって立ち振る舞いがぜんぜん変わることが起きたりすることも、「そういうものなんだな」と思っていただければなと。
ただベースとして、自分がどこにいるかはあるので。「メタ認知とは?」という話をこれからしていきますが、「メタ認知が高いと思う人の特徴って何ですか?」と、あとは「自分との違いには、何がありそうですか?」をちょっと考えてみましょう。
(※参加者のワークタイム)
メタ認知とは「視点を増やす力」
ありがとうございます。このあたりを考えてもらったのは、この後メタ認知の話をちょっと詳しくしていきたいので、そのイメージ作りの感じですね。
メタ認知とは言い方を変えると、視点取得能力というふうに言います。自分の思考や事象を客観的に捉える力で、例えば「見積もりのミスが発覚した」みたいなことがあった時に、「なんでこんなミスをしたんだ……」みたいな(思考になる)人は、メタ認知が低いんですね。
これ、(お客さんや上司に)報告しないといけないじゃないですか。となると、「お客さんに報告したら何て言われるのかな?」「正しい見積もりとの差額っていくらですか? と聞かれそうだぞ」というふうに、お客さんの視点を取得できるのが1つです。
さらに、「上司に言った時に、何を心配するかな?」でいくと、たぶん「それって正式な発注なの?」ということは聞くだろうし、あるいは「これ、最悪の時の影響範囲って10万円とか20万円とか、(あるいは)もっと100万円単位なの?」みたいなところを気にするだろうなと思います。
さらにメタ認知が大きい人でいくと、この仕事が一段落ついた時に、「この見積もりミスから、自分は何を学べるのかな?」というふうに、さらに俯瞰で見ることができる。そういった視点を取得できるというのがメタ認知の1つの捉え方です。
物事を複数の構造で捉える力がメタ認知を鍛える
もう1つが、構造的理解のパターンを持てるっていうふうによく言っています。例えば新卒採用(について)、これをいろんな構造で捉えることができるんですね。
制度として捉えていくとしたら、新卒一括採用がベースにあると思うんですけど、それが今インターンシップとかだったり、採用(活動をする対象学年が)が4年生から3年生に変わったりと、どんどん早期化しているんですね。となった時に、制度として見ると、もはや通年採用みたいに変わってきていると見られますとか。

一方で、マーケット的な構造で見たら、伊藤忠商事のように「もう、誰も入れません」みたいな、めちゃくちゃ超人気企業がある一方で、誰も受けに来ない会社もありますよね。
となってきた時に、そこには需要と供給っていうシンプルなマーケットの原理原則が働いている感じで、新卒採用もマーケットの原理という構造で捉えることができるんですね。
さらに(採用活動における)評価のところでも見ることができます。今まででいくと、たぶん東大法学部みたいな人がめちゃくちゃ重宝されていたところから、ポテンシャル採用みたいなものに変わって、今はどんどん価値観のマッチングに変わっている構造の変化がある。
キャリアで言っても、昔は「(定年するまで)1社で勤め切ります」「死ぬまで働きます」みたいなものだったのが、複数社の転職をすることが一般的になっています。このようなかたちで、どんどん変わってきているということですね。これはキャリアの視点から構造を捉えるという感じです。
構造的理解が深まると人の話を受け止められる
このように、1つの事象でもいろいろな構造として捉えることができる。これがメタ認知がある状態と言うことができます。
この構造的理解を複数パターン持っていることはけっこう重要で、そうすると人の話を受容することができるんですね。
何をしているかというと、自分は新卒採用をマーケット的な構造として見ているとします。ただ、自分の部下はキャリアの構造として捉えている時に、自分のほうが正しいと思っているとか、(事象の捉え方に)複数のパターンがないと思っている人は、人の話を聞いた瞬間に「いやいや。それは違うよ」って遮ってしまう。相手の話を最後まで聞けないんですよね。
でも、ちゃんと「構造的理解って、いっぱい(捉え方が)あるよな」ということを理解していると、「この人は今、どの構造で物事をしゃべっているんだろう」というふうに頭が働くので、人の話を最後まで聞くことができる。「あっ、ここが違うし、ここが一緒だな」というふうに、人との違いをちゃんとわかる人が構造的理解がある人、(つまり)メタ認知が高い人ですね。
つまり、それは言葉を換えると「器がでかい人」なんですよね。「器がでかい人は人の話を聞けるよね」っていうのは、この構造的理解に対しての受容度が高いからと言い換えられるかなと思っています。
メタ認知が高い人は不確実でも手を動かせる
メタ認知の構造で得られるものでいくと、意思決定の質が上がることと、未知なことへの耐久力が上がるという2つ(のメリット)があります。意思決定の質というのはすごくシンプルで、事実と解釈を分けて考えることができるんですね。
例えば、お客さんから「いやいや、御社のサービス、なんだかクソ悪くない?」みたいなことを言われた時。言い方がめちゃくちゃ悪いですよね。「クソ悪いとか言ってんじゃねぇぞ!」って思う自分がいる一方で、「サービスのここが良くないよ」っていう指摘に対しては本質を突いているなと思ったら、それは分けなくちゃいけないんですよね。
言い方が悪いということと、サービスに対しての指摘が正しいことを分ける。自分に取り入れるべきところはちゃんと取り入れていかないと、意思決定の質が上がっていかないので、こういうふうに捉えられるのが、メタ認知ができることの1つの利点になってきます。
“半分わかる”状態でも動ける人は何が違うのか
もう1個が、未知なことへの耐久力が上がる。これ、手嶋がすごく好きな考え方なんですけど、例えばお客さんのことが50パーセントしかわからない時に、メタ認知が低い人に何が起きるかっていうと、「50パーセントしかわからないので、僕は何もできません」って手が止まるんですね。
一方で、メタ認知が高い人は何が起きるかっていうと、「半分はわかっているんだから、今わかっている範囲でできることを準備しますね」って手が動くんですね。
実は、この違いがすごく大きいところです。このゼロ/ヒャク思考になっちゃうのがメタ認知が低い人なんですね。「ここの部分がないからできません」。でも本当は「そんなことないじゃん」っていう話じゃないですか。
50パーセントがわかっていれば何か準備できることもあるし、そうすると、「全部の情報がそろった時に物事が進んでいくよね」っていう考え方もできる。それに、今のこの複雑な世の中の中で100パーセントの情報が手に入ることなんて、ほぼないんですよね。
ということがあった時に、不確実な情報の中で自分の中で腹をくくって決めていく、判断していくスキルセットが必要になっていきます。それはスキルだけではなくて、実はメタ認知が高いか低いかでもかなり変わってくるっていうのがここの捉え方になってきます。