【3行要約】
・大人の成長には専門知識などの「技術」だけでなく、物事を俯瞰するメタ認知力である「器」の拡大が必要であり、パフォーマンスはこの両者の掛け算で決まります。
・成人発達理論では、人の成長を「他者依存」「自己主導」「自己変容」などの段階で捉え、自分軸と他人軸を行き来しながら視点を増やすことで、器(ステージ)が上がると考えます。
・多くの社会人が陥る「他者依存(周囲への迎合)」から、自らの意思を持つ「自己主導」への移行を支援することが、リーダーシップ開発やコーチングの核心となります。
成人発達理論を学ぶ前に押さえたい前提
手嶋武久氏(以下、手嶋):今日は「成長が止まる理由はスキルじゃなくてメタ認知にある」という話です。1年ちょっとぐらいかな、手嶋が勉強している成人発達理論についてまとめてあるので、それをちょっとお話ししようかなと思っています。

研修って講義形式のやつが多くて、これだと定着率がけっこう低いのですが、このワークとか色がついているところ、いわゆるアクティブ・ラーニングと言われる領域をやることによって定着率が上がるので、ちょこちょこ問いかけしながらやろうと思っています。
成人発達理論の注意点を1個だけ。ちょっと、人のことをラベリングするような考え方がけっこう出てくるんですね。「あの人はこういう段階だな」みたいなものをお話しするタイミングがあるんですけど、それって結局は人の成長支援のためだと思ってもらえるといいなと思います。
何を言っているかというと、「あいつ、なんだか成長してねぇな」みたいな話として、人のことをネガに捉えるための物差しになってしまうのが、この考え方の1つの危うさだったりします。「そうなったら良くないよ」というところだけ注意してください。
大人の成長を捉える基本構造
手嶋:じゃあ、成人発達(理論)の基礎というところで、チェックインの「今日、つかみ取りたいこと」。きっと、成人発達理論って初めて聞きましたもんね。
参加者1:あまり聞いたことがなかったです。
手嶋:OKです。じゃあ、さっそく本題のほうに入っていこうかなと。「成人発達理論とは何ぞや?」という話なんですけれども、大人の成長を科学する学問です。ハーバード大学でも30年ぐらい研究されている学問で、かなり体系立ったものになっていたりします。
ロバート・キーガンっていう人が、わりとビジネス書とかも出していて。成人発達理論は、最近は人事界隈とかでけっこうホットワードになっていると感じています。
この話では、大人には2つの成長領域があり、1つが器、もう1つが技術という考え方をしています。
まず器というのが、垂直的成長と言っているんですけど、(いわゆる)メタ認知ですね。物事をどう俯瞰して見るかみたいな力が1つ。もう1つが、技術なので専門知識とかビジネススキルみたいなものになっています。
パフォーマンスは「器×技術」で決まる
手嶋:この器(の話)でいくと、まず人にはパフォーマンスというものがあります。これは、器と技術の掛け算でできるという考え方をしています。
なので、パフォーマンスって技術だけを上げ続けていってもなかなか上がらないところがあります。なんでかというと、この器、メタ認知の力が育っていないから、パフォーマンスに跳ね返ってきにくい状況が生まれるという考え方です。

(例えば)提案資料を作る場合として、よくあるのが、技術がすごくあって、(内容自体は)考えられます。ただ、「この資料をお客さんがどう思うのかな?」とか、「俺の上司はどういうフィードバックをしてくるのかな?」みたいな目線を持てない人って、きれいなゴミみたいなものを作っている状況になってしまいます。
そういうことをなくすために、実はこの器の、メタ認知の感覚がめちゃくちゃ必要ですというところが、この成人発達理論で考えられている内容になっています。
手嶋はエグゼクティブ、いわゆる経営層のコーチングセッションとかをやるんですけど、エグゼクティブのみなさんは技術をいっぱい持っています。コーチングのセッションで手嶋の問いを通して、このメタ認知がポッて上がるんですね。
そうすると、もともと技術を持っている人のメタ認知がちょろっとだけ上がると、そこで一気にパフォーマンスに跳ね返ってくる。なので、「このセッションにいくらお金をかけたといっても、けっこうペイしちゃうよね」みたいなことが起きていると思っています。
大人の成長における4段階のステップ
手嶋:じゃあ、「メタ認知を上げようぜ」っていう話になってくるんですけど、「メタ認知と言われたとて……」という話でもあると思うので、もうちょっと具体のお話しをしようかなと思います。
(スライドを示して)大人の成長段階に関しては4段階あります。子どもには具体的思考段階というのがあって、これはいったん無視でいいんですけど。例えば子どもに「今日、何をしたの?」って聞くと、「カオリちゃんとタケシ君と公園に行って滑り台で遊んだ」みたいなふうに言ってくるんですよね。でも、我々だと「今日、友人と公園で遊んだ」みたいな世界線の言葉に変わりますよね。

という感じで、抽象的思考と具体的思考でいくと、抽象的思考ができないのが子どもっていうイメージが具体的思考段階です。これはいったん、今回の話の本筋じゃないのでこれ以上は触れないんですけど、そんな感じです。
大人だと利己的段階、他者依存段階、自己主導段階、自己変容段階という4つ(の段階)があります。
利己的段階というのは、世の中の10パーセントぐらいの方と言われていて、利己的なので自己中な人ですね。「俺が、俺が!」みたいな感じの人がこの段階にいると。
リーダーの器が育つプロセスは他者依存から自己主導
手嶋:次が、他者依存段階というところで、世の中のほとんどの人、70パーセントぐらいがこの段階だと言われています。何が起きるかというと、ステークホルダーの言うことに迎合するんですね。
お客さんとかとしゃべっていても、何かを言われたら「おっしゃるとおりです」と、全部「OK」と言ってしまう。あるいはお客さんに「なんとかできますか?」って言われた時に、「それ、うちの会社のルールでは無理です」と言ってしまうみたいな。
というのが特徴なので、ゼロ/ヒャクの思考になりやすいんですよね。だからこの折衷案とか、グレーゾーンを許容できないっていうのは、この他者依存段階の1個の特徴でもあります。
自己主導段階は(世の中の人の)20パーセントぐらい。これが他者依存段階と違うのは、人の意見をまず聞く。その上で「僕はこうしたいんですよね」という意見を出せる人は、この自己主導のフェーズにいると考えられています。なので、リーダーとしての器は、この自己主導段階からと言われています。
(次の)自己変容段階が1パーセント未満(と言われています)。「自分がこうしたい」という考え方も、自分の体験にアップデートがかかると変わる。さらに俯瞰して見るみたいな、かなりメタ認知の領域が大きい人だと言われています。
メタ認知が高い人ほどパフォーマンスが上がる理由
手嶋:じゃあ、「このメタ認知ってそんなにパフォーマンスと関係あるの?」という話なんですけど、一応本の中から(引用すると)、実験結果みたいなものがあります。これは利己的段階、他者依存、自己主導、自己変容という感じで、右に行けば行くほど発達段階は上がっていく。そうすると、折れ線グラフのパフォーマンスはどんどん上がっていくよというのがシンプルな見え方で、相関しています。
もう1個が、この棒グラフ。これ、見やすいなと思っていて。CEOなので経営層ですね。この実験だと、経営層は自己主導段階から上にしかいなかったんですね。

でも、マネージャーの人だとけっこう、この色が薄いところ。いろんなところにバラバラにいたりしていて。経営層みたいなちゃんとパフォーマンスをしていないといけない人たちって、周りからの評価としても、ちゃんと高いものを得ているということが表からも読み取れるかなと思っています。
なので、この発達段階が高い人は、ちゃんと周りからも評価されるよねというのがメタ認知(とパフォーマンスの高さ)の相関性として見られるんじゃないかなと思っています。
この発達段階のところは、2つの軸を行き来しながら成長します。自分と他人の軸です。利己的段階なので、自分勝手、「俺が、俺が」っていう(人は)、もちろん自分の軸で生きています。次が他者依存段階、これは帰属意識が強いんですね。八方美人的な言い方もできるかなとは思うんですけど、ステークホルダーに寄っちゃうので、人の軸で生きる状況になります。
発達段階は「自分軸」と「他人軸」を行き来しながら進む
手嶋:さらに自己主導なので、「俺はこうしたい」という話に戻ってくるので、最後はまた自分の軸に帰ってきます。で、最後は他人の軸……他人というか、最後に関して言うと、どちらかというと社会の軸ですね。自己超越とか社会貢献っていう世界線なんですけど、こんなふうにして自分と他人を行き来していく。
この行き来ができるからこそ人の気持ちがわかって、視点取得、視点がいっぱいわかるようになってメタ認知が付く。こういう考え方が、自分軸と他人軸を行き来しながら上がっていくことだったりしています。
僕がコーチングをやっていて多いなと思うのは、会社員をやっていると、ここの他人軸、組織のやり方とかに染まらなくちゃいけない状況の中で、けっこう自分がなくなっていく段階が多いと思うんですよね。
そうすると、この他者依存段階にどっぷりと漬かっている人は、「とはいえ、自分って何をしたいんだろう?」という、自分探しみたいなことをするフェーズが来ます。
そうなった時に、この自己主導に移っていきたいけど、「自分は何者なんだっけ?」ということがわからないからコーチングを受けることはけっこう多いかなって思っています。なので、(ステージ)3から4の橋渡しでコーチングセッションを受ける方はけっこう多い印象です。