【3行要約】・AIの普及により効率性が重視される一方で、人間らしさや創造性の価値が問われています。
・門拓馬氏は、日本の江戸時代の「無駄を楽しむ」文化やアニミズム的感性に注目し、現代のコスパ・タイパ重視の風潮に疑問を投げかけています。
・AI時代に求められるのは認知コストをかけてセンスを磨くことであり、問いを立てる力こそが人間の価値になると提言しています。
前回の記事はこちら 日本の歴史と「無駄を楽しむ」文化、最後は「森に帰れ」
門拓馬氏(以下、門):そうなんですよ。日本人が積み上げてきた歴史からそうなっているのは、まず間違いないなと思うんですよね。脅威が自然とかしかなかったし、元寇は2回来たけど、ラッキーパンチで返しちゃったし。極東の極東だから、本当に来るのが大変で、見つけたとしてもぜんぜん来なかったし。
植民地にしようかな、というタイミングの時には、植民地戦争をする中で周りの西洋諸国が疲弊しまくっていて、「もう戦争とか無理」みたいな状態で日本に来たりしているじゃないですか。
だから、みなさん、ペリー来航ってめっちゃおもしろいんですよ。実はぜんぜん戦おうとしていないですからね。ただの交渉戦なんですよ。ぜひ学んでほしいんですけど。お相撲さんとかを見せて、「おっ、おもしろいね」とやっていたというのが記録としてあるんです。
宇野礼於氏(以下、宇野):そうなんですか(笑)?
門:これはおもしろいですよ。ちょっと(今のAIの話と)関係ないですけど。
でも、江戸時代後期の文化の発展性も、本当にそうだと思うんですね。無駄をめちゃくちゃ楽しめる、みたいな。からくりとか、そうじゃないですか。あんなにすごい技術があるのに、効率性にまったく使っていないじゃないですか。
だって、お茶を運ぶやつを知っていますか? お茶をこうやって置いて、ウィーンって行って、お茶を取って、ウィーンって帰ってくるやつあるじゃないですか。「何これ?」みたいな(笑)。
(会場笑)
「この距離の無駄さは何?」みたいな。絶対、女中にやらせたほうが早いのに、日本人はそういうのを見て、「うぉー!」みたいな(笑)。
(会場笑)
めっちゃ好きじゃないですか。そういうセンスを作るとたぶんいいんだろうなとめっちゃ思っているんです。そことのリンクがすごくて、今、僕は江戸時代後期や江戸時代の文化の発展性にすごく興味があるんですよ。呪術性みたいな部分もすごくあるなと思っています。
宇野:いやぁ、そうですね。文脈が変わってしまいますけど、昨今のいろんな世界情勢を見ていると、江戸時代の260年が、いかにすごく長い平和だったのかと、本当に感じますね。
門:意味がわからないですもん(笑)。だって、中国なんて戦乱の世がマックス500年とか続いていましたよね。秦の始皇帝の前から、ずっと戦っているんですよ。
なので、マジで江戸時代や、アニミズム性のセンスを戻して、AIを使えるようになると、かなりおもしろいことができそう……ぜんぜんスライドを送っていなかった(笑)。
(会場笑)
(スライドを見て)あっ、そう。なので、「みなさま、森に帰ってください」って、めっちゃ僕は思っています(笑)。けっこうマジで「森に帰れば?」みたいに思っているんです。
宇野:結論が出ましたね。
コスパ・タイパの先に「センス」を取り戻す話
門:(笑)。そう。「いったん、帰れば?」みたいな。コスパ・タイパみたいなのがあるじゃないですか。あれについて、宇野さんはどう思われますか?
宇野:私自身は、ビジネスとか仕事を進めていく上では、やはりそこはすごく大切だなと思っている一方で、人生というか生きるという意味では、「何を求めているんだろう?」みたいな気もちょっとしたりします。
門:よかった、仲間だ(笑)。めちゃくちゃわかります。ビジネス文脈だとコスパ・タイパって大事だと思います。ただ、何か指標が2つあって、「これに対してこのぐらいの出力値だから、この出力値を上げて、こっちのコストを下げられたら、すごいコスパいいよね」みたいな言い方をするじゃないですか。
倍速で消費しても「パ」は残らない
門:でも、生き方みたいなところにコスパ・タイパが、入っちゃっていて、僕から言わせると、みんな「パ」がないんですよね。パフォーマンスがない、みたいな。例えばYouTubeを倍速で聴いている中で、内容を覚えていますか? それを何かに使っていますか? それ、「パ」じゃないですよね。
自分でYouTubeをやっていて、こんなことを言うのもなんですが、でも、本当にそう思っているんですよ。
宇野:消費するスピードだけがどんどん速くなっていくけど、何も残っていかないという。
門:そうなんです。認知コストを下げ続ける作業と、何かを得ることが、ぜんぜん交換になっていない。ただ認知コストだけ下げて、考える力を失っていって、得るものがないのはちょっともったいない。
僕は本を読んだほうがぜんぜんいいと思います。論文を読んだりしたほうがぜんぜんワクワクするし、おもしろいんですよね。あるいは、人の話を聴きにいくとかは、本当にすごくいいなと思います。
YouTubeをやっているお前が言うなという感じなんですけど、YouTubeは動画編集でごまかせるんですよ(笑)。本当にそうなんです。
ごまかせないのは、こういう場なんです。今の僕と宇野さんのしゃべりは、何も見ていないので、地のものしかないんですよね。こういう場で話したり、こういう場に来たりして、自分のセンスを磨くと、AIとの壁打ちのやり方がぜんぜん変わると思います。
なので、AIと壁打ちする時は、自分のセンスだけで壁打ちをしてほしいです。問いを自分で立てて、テーマを自分で作って、それに対して30分、AIと話せるかをトライしてみてほしいですね。けっこう大変だと思います。たぶん5分もしゃべれないと思います。ネタが尽きちゃうと思います。
それはやはり、認知コストをかけていないから、そうなるんですよ。認知コストを逆にかけまくって、センスを磨いて、AIを使えるようになると、このようになるんじゃないかなと思っているんですが(笑)。
宇野:(笑)。
AIとの壁打ちは「問いの体力」で決まる
門:なので、センスの時代になると思います、というのが僕の総括なんですけど、センスの時代になりますかね?
宇野:どうなんでしょうかね? でも本当に、この考え方には一理あるなというか。「本当にそうだな」と思う部分は確かにあります。
これまでって、例えば会社であれば、いかに感情を排除して合理性を追求するか、そこだけがひたすら求められていて、人間性を排除していくという流れだったと思うんですけれども。それをAIが勝手にやってくれるとしたら、人間は人間に戻っていける。そういうところがけっこうあるだろうなと思いますね。
門:いやぁ、本当にそうです。
僕はAIに対してけっこう楽観的で、海外の方々みたいに「何もかも奪っていく」みたいな捉え方はしていません。特に今、海外の方のトレンドだと、「電気代が」みたいなことでキレられるので、ちょっと気をつけたほうがいいんですけど(笑)。
でも、そういうのではぜんぜん捉えていません。むしろAIが発展することにより、電気の問題など、諸々早く解決できるようになるんだろうなと思っています。
人間が働かなくなる未来も、本当に来る可能性もあります。というか、今、世界中で換算をするとお金は余っている状態なので、マジで人類は何をしているんだろうなとめっちゃ思います(笑)。
宇野:そうですね。本当に生きるということだけでいったら、今の技術ですべてを賄えるんじゃないかなというのは、本当にありますよね。
門:そうなんですよ。「(人間は)何しているんだろうな?」みたいな(笑)。
宇野:どうなんでしょうね。働かなくてもよくなるのかもしれないですけど、やはり人間って、何かしないと気が済まない。
門:いやぁ、そうなんですよ。だから最終的には、仕事がしたくてたまらない、みたいになるのかなとか。
宇野:そうですね。まったく働かない生活をずっとやっていると、やはりそのうち何かをしたくなるんじゃないかという気がしますね。
働かなくなった時、人は「意味」をどこに置くのか
門:しっかり亡霊化するなって思っているんですよね。今の60代、70代、勤め終わったら寿命が縮む、というデータがけっこうあるんです。これ、何が起こっているかわかりますか?
寿命が縮むというのは、要は本人の生きる意志がなくなるということです。「生きる意志なんてなくなるの?」と思いがちですが、人間は一発でなくなります。今までのサラリーマンは、会社に意味を付けているんですよね。働くことでパフォーマンスを出している自分は、めっちゃ社会貢献できている、みたいに、他者評価におんぶにだっこしています。
今お子さんが、この会場でめっちゃ走り回ってワーッてなっているけど、この感覚なんですよね。この感覚だとめちゃくちゃ思っています。
話者1(※会場にいる子ども):お散歩、どこ行く?
門:ほら、今「お散歩行く?」って言いましたが、直感的にお散歩に行くじゃないですか。こういうのがマジで大事なんですよね。AIにもこういう語りかけができるかが本当にめちゃくちゃ大事だと思うんですよね。今、直感的にこう思ったから、こうしたい、みたいな。
宇野:そうですね。そしてAIがそれに答えてくれるという。
門:いや、そうなんですよ。答えてくれるんですよ。
宇野:逆に人間相手だと、空気を読んで言えなかったり、「ちょっと今はやめておこうかな」みたいなのがあったりするんですけど。
門:そうなんです。僕も、この議題を出すのに1時間、壁打ちをしていたんですけど、普通の人だったら答えてくれないですもんね。「お前、何言ってんの?」って言われて終わり(笑)。
宇野:いやぁ、本当にそうですね(笑)。