【3行要約】
・BtoB営業で成果が出ない原因の一つに、「使う人」と「買う人」を混同してしまうという課題があります。
・約4,000人の営業指導実績を持つ向井俊介氏は、トップ営業は役割の違いを明確に区別し、それぞれ異なる動機に基づいてアプローチしていると指摘します。
・営業担当者は現場の「使う人」を味方につけて火種を置き、購買の意志決定者を見極めたリスク管理が必要です。
前回の記事はこちら 使いたい動機と買いたい動機は全く別物
向井俊介氏:もう1つ申し上げると、使う人が「使いたい」という動機と、買う人が「買いたい」という動機はまったく別です。もちろんそうですよね。だって役割が違うんですから。役割が違うと問題が違うんです。解決すべき問題が違う。言い換えるとゴールが違うんです。
なので、使う人にとっての問題解決は、使うということに対して達成できるゴールを満たすために使いたいという反応をしているだけ。一方、買う人は経済合理性、利益に自分たちの目的をどうしても置いていかないといけないですよね。なぜなら、キャッシュアウトをすることは、こと営利企業においては、間接的であれ利益を出すところにつながらないといけないわけです。
そして時間軸が長くなることであれ、必ず利益を出すところにひもづけないといけない。ひもづけられれば、「あっ、買ってもいいかな。買いたいな」となる。これはもう本当にド正論だと思っています。
現場の「使う人」を巻き込む戦略的アプローチも有効
ただ、営業活動をしていると、目の前の人がすべて買う人だと勘違いしている。みなさんの中にもいらっしゃるんじゃないでしょうか? 両方とも顧客ですが、使う人と買う人は分けていただきたいなと思っていますし、実際にパフォーマンスを出していらっしゃる方は明確に分けてコミュニケーションしています。
具体的には、使う人が一番最初に接するパターンとして多いと思います。なぜなら、組織構造上、人数が多いので。なので、現場にいらっしゃる使う人たちが、「あっ、いいですね、これ。使いたいです」「これ、あったらいいですね。便利です」となった場合。
営業パーソンの取るべき行動は、「じゃあ、見積もりを出すので上申してください」ではなくて、「こちらも使っていただきたいと思っているので、誰に対して提案をしていけばいいのか、そこをぜひ教えていただきながら、私のほうで買う人に向けてのご提案の骨子を考えてくるので、ちょっとレビューしていただいていいですか? アドバイスをください」。
「内部で何が大きい声として今放たれているのか? どんな取り組みが上位役職者から出ているのか? このあたりも少し教えていただきながら骨子を作らせていただいて、私のほうで買う人に対してのアプローチを考えたいと思いますので、ぜひご協力ください」と巻き込んでいく活動が採れるんじゃないかなと思います。
買いたい動機の「火種」を置く
特にエンタープライズみたいに大きな組織で大きな商談を成立させたいと考えている人は、研究の中でこれを「火種を置く」という表現をしていらっしゃったりしました。
使う人たちをどんどん味方にしていって、「あぁ、使いたいな」という状態を常に維持していく。最終的に買う人に対してアプローチをした時に、「買ったらすごく経済効果があることはわかりましたが、現場はどうなんですか?」と必ず言われる。現場には、もうすでに火種が置いてあるという状態を作る。
本当に世界で一番数字をたたき出すような外資の営業パーソンは、こういうことをやっておられると研究の中で得ていますので、このあたりは真似して損はないのかなと思います。
現場担当者の評価制度を理解する
そして、言うまでもなく現場担当者とマネージャーですが、このあたりの方々は、非常にタスクが明確であったり、やるべき業務が明らかだったり、比較的時間軸が短かったりする。

あとは、部門にもよりますが、特に日本企業の場合は、減点評価制度の中で仕事をしている人が相対的にとても多いと思います。みなさんのお客さまはどうでしょうか?
「どうだろう?」と思っている時点でちょっと反省していただきたいと思うんですが。なぜなら、「お客さんが何によって、どう評価されるのかを知らずして、どうやってコミュニケーションするんでしょう?」という話です。
これを知らずして営業活動をしてきたとしたら、もしかするとお相手を人として見ていないのかもしれないですね。口から出てくるお相手の呼称が「御社」となっている人は要注意です。会社として見ていますよね。
なので、現場の方々は自分の目の前のタスク、業務を完遂して、それが滞りなく、ちゃんと失点なく行えれば一定期間を経て昇進・昇格をしていくといったことが日本企業の基本的なステップアップの仕方だと思います。
決裁者とEconomic Buyerの違いを理解する
じゃあ、何がどうなったらちゃんとステップアップするのかということをちゃんと把握しておかないと、その方に向けたコミュニケーションをプランニングできないんですよね。このあたりはぜひ、現場担当者、マネージャーの方々向けのコミュニケーションとして意識していただきたいなと思います。
そして、買う人は意思決定者、決裁者。これは同じ意味ですが非常に重要ですよね。一方で、「Economic Buyer(エコノミックバイヤー)」という存在がいます。これは特に外資ITの中で一部言われている概念ですが、非常に重要なので入れています。

どういうことかというと、購買することを決断したり判断したりする人を決裁者と言います。これは日本語の意味です。しかし、それを決定したこと、判断したことをひっくり返せる人がいるんですね。それを、とても重要なのでEconomic Buyer、通称「EB」と表現しています。つまり、決めたことを覆せる人がいるので、重要度としてはEconomic Buyerのほうが上です。
数字を守ることはリスク管理とイコール
そしてその方は、すべての会社に存在しています。例えば資金調達をしたスタートアップ企業。意思決定者はファウンダーCEOですね、EBは誰でしょうか? 株主です。そうです、ベンチャーキャピタルや投資家です。
この方々は株主なので拒否権を持っているんです。「もっとこうしたほうがいいんじゃないか?」「こっちの企業のベンダーさんのほうがいいよ」と言われたら、ファウンダーCEOは立場上、「NO」とは言えないんですよ。検討するという方向に進むでしょう。その時に売り手側は何が起きているのかは知り得ないんです。
ですが、そういうことが存在としてあり得るということを知識として持っておくと、必ずしも社長がOKしたからといって決まると思わないので、リスクマネジメントという観点で「誰が拒否権を持っているんだろう?」という営業活動が継続されるんですね。ちゃんと数字を達成してくる営業は漏れなく、こういう拒否権を持つような存在をちゃんと押さえにいっています。
そして、難易度が高いところで言うと、役員会議みたいな会議体もEconomic Buyerになり得るんですね。特に投資金額が大きい、もしくは上場企業とかになってくると会議体がEconomic Buyerになる。

会議体がEconomic Buyerになると、営業の難易度が非常に上がるので、実質的にこの会議体に参加する全員に事前に根回しをすることは現実的ではないわけです。そうなると、数字をちゃんと達成し続けるためには、会議体がEBだとわかった時点で、他の案件を進めておかないと穴が空くんですね。
なので、数字を守ることはリスク管理をすることと、もうイコールだと思っていただくといいと思いますし、漏れなく数字を達成する優秀な営業は、こういったリスク管理を冷静に行えている。「取れる!」と、すべてをバラ色で捉えないというところはすごく重要な点かなと思います。