【3行要約】・説得や交渉でうまくいかない経験は多くのビジネスパーソンが抱える悩みですが、コミュニケーションを「実験」と捉える新しいアプローチが注目されています。
・AI技術の急速な発展により価値観が多様化する中、たくま氏は従来の説得型から「パス」を出すコミュニケーションスタイルへの転換が必要だと指摘。
・読者は論破ではなく打率3割のヒット量産を目指し、相手を「日本語が通じる宇宙人」として捉えることで、より効果的な関係構築ができるようになります。
前回の記事はこちら コミュニケーションは実験だと思う
たくま氏(以下、たくま):次のページをお願いします。ということで、僕がさっき言ったとおり、「パス」を出すイメージですね。
ビジネス上のコミュニケーションを「説得」や「交渉」と言う方が大変いると思うんですけど、僕の中では(それは)ディベート感があるんですよね。「ディベート」ってわかりますか? 1つのテーマに対して勝った・負けたを競う、みたいな(ことです)。
ディベートするとよろしくないんですよね。やはり勝った・負けたの判定基準がつくので、上司に任せても、だいぶいいことがないんですね。「変な人」みたいに思われたりもします。なので、ディベートとか交渉とか、説得も違うなと思います。1回意識から吹っ飛ばしたほうがいいと思います。
「試しにボールを投げてみる」みたいな感じですね。「パス」みたいな感じです。(相手が)そのボールをスルーするんだったら、「あ、そのボールは受け取られないんだ」みたいに思っておく。
技術革新に対する拒否はだいたい「秩序が乱れる」という理由
たくま:基本的にコミュニケーションは実験です。価値観が多様化している世の中で、AIなど、技術発展・技術革新がものすごい勢いで起こっています。今は「第◯次技術革新」と言われていますね。
インターネットが出てきた時も、このような状況はありました。時間があるので、もう1つ、技術革新のちょっとおもしろい話をすると、新しい技術が出てきた時に、人が出す反応にはどんなものがあると思いますか?
「新しい技術が出てきました。インターネットが出てきました。スマホが出てきました。クレジットカードが出てきました」みたいなタイミングで、世の中がどんなリアクションをしたかを、ちょっと思い出してほしいです。どんなリアクションをしたか、覚えていらっしゃいますか? クレジットカードが出てきた時、みなさんはどうでした? すぐに使おうと思いましたか? Google検索ができるようになった時、どういう言論が飛び交ったか、覚えていますか?
新しい技術発展が始まった時に人がするリアクションは、2つあります。「めっちゃいいじゃん」という人と、死ぬほど拒絶する人です。その拒絶の仕方がおもしろいので、覚えておいてください。これ、めちゃくちゃおもしろいです。
「規範が乱れる」「秩序が乱れるでしょう?」と、みんな絶対に言います。これは歴史的なパターンなので、100パーセント言います。人類最初の技術は火だと言われていますが、火が出てきた時も、「火は危ないからやめろよ」「怖いし」と言った人が、たぶんいると思うんですよね。
でも、それが便利だとわかってしまったら、基本的には技術革新って止まらないんですね。今、AIが出てきていますね。AIが出てきて、なんて言われていますか? 「バカになるやつが多いんじゃないか」とか「AIを使うのズルじゃない?」とか、すごく言われていると思います。
ズルだと思ってもいいし、別にバカだと思ってもいい。好きなように思っててもいいんですけど、覚えておいてほしいのは、基本的にそういう大きな技術革新は、始まったら戻らないということです。絶対に戻らない。100パーセント戻らないです。
だから、AIも戻りません。今日は、AIのことも絡めながら話をしていこうかなと思うんですけど……覚えておいてください。100パーセント戻らないし、だいたいそういう技術を拒否する人は、「秩序が乱れる」と言います(笑)。「秩序が乱れるでしょう? 今までこうしてやってきたのに、それがなくなっちゃったら、みんなの統率が取れなくなるでしょう?」とか言います。
逆に言うと、それ以外の説得方法がないんですよ。本当にないんです。これ、おもしろいですよね。めちゃくちゃおもしろいんですよ。
ルールは「実態の後」についてくる
たくま:最近だと、ようやく選挙でもSNSが使われるようになりましたね。「もっと早く使われるようになればよかったな」と思っているんですけど、すごく使われるようになってきました。
それに対して、「オールドメディア」と呼ばれる媒体の方々は、なんて言っているかというと……「嘘の情報が飛びまくって大変だ」「今までの選挙の選択性が、人気者が取っていくような構図になっていると危ないんじゃないか」と言っています。「いやいや、タレント議員とか、めっちゃ使ってたやん」って思うんです。「それと何が違うの?」みたいなのがあるんですけど(笑)。
つまり、新しい技術や新しいルールが出てきた時に、人はだいたい「秩序が乱れます」「だから嫌です」みたいなリアクションをします。「嫌」の中で、そういうルールが出てきますが、基本的には止まりません。
ちなみに、世の中では実態が伴ってからルール化されるんです。今もそうですよね。選挙も、SNS選挙のルールは十分ではないので、実態が先に進んで、そのあとにルールが整っていく、ということがものすごく多いです。
これは組織でも同じです。「新人くんがグレーゾーンなことを始めたぞ。でもこれ、悪くはない。賛否両論がすごくあるけど、いけているからこのままやろう」といってやった時に、上司の耳に入って、「それは1回ルール化したほうがいいんじゃない?」みたいに、実態に対してルールがあとから来ます。
というふうに、技術革新とともにコミュニケーションやルールは変遷していきます。なので、技術のスケール、進化のスケールに合わせながら、「どのようなコミュニケーションスタイルに変わっていくだろうな」と想像する。今後2年ぐらいはこれを意識しながらやっていくと、とてもいいんじゃないかなと思います。
ホームランを狙わない、打率3割の「パス」を増やす
たくま:話を戻すと、説得ではなく、基本的に「パス」を出すイメージがいいと思います。説得はすごく難しいんですね。「100パーセントこっちが正しい」みたいな構図はなかなか存在しません。
ゼロヒャク(0-100)はないので、基本的にはホームランを狙わない。みなさんイチローさんになったほうがいいですね。打率3割のヒット量産メーカーになったほうが、優秀だと思います。そっちのほうが人から喜ばれることが多いですね。
なので、基本的に論破は良くありません。SNS上では論破しようとしてくる人がたくさんいるんですけど、あまりSNSに向いていないんじゃないかなって、けっこう思います(笑)。
だから、本当にいろんな種類のボール、提案を、宇宙人の方が取れるようにしてあげてください。指が3本しかないんだったら、指3本で取れるボールにしてあげてください。
感情と事実を分けるのは訓練
たくま:ということで、次のページをお願いします。これも大事です。「感情と事実を分けましょうね」「解釈と事実は分けましょうね」という話がよくありますよね。
それは本当にそのとおりです。自分の感情や相手の感情をいったんスルーして、「この人は何を言わんとしているのかな?」という、事実だけをきちんと正確に把握しにいくのがすごく大事です。自分の感情も含めてノイズになるので、きちんと事実だけをきれいに正確に把握しにいくようにしましょう。

ただ、事実を正確に把握するのも、実はけっこうトレーニングが必要です。例えば今日、僕はパソコンを接続するってわかっていたのに、変換のアダプターを忘れたんですよ。僕は玄関に変換のアダプターを忘れました。これは事実ですか?
これは解釈なんですね。忘れたのは僕なんですよ。僕でしょう? これは主観なんですよ。僕の主観で「忘れた」と言っているんです。そうじゃなくて、「玄関にアダプターが置いてあった」「置きっぱなしになった」が事実なんですよ。事実と解釈を分けるのって、めっちゃ難しいんです。