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基調講演(全3記事)

人間関係は「重力・大気・通貨」で読み解ける 相手の“取説”をつくる観察フレーム [2/2]

ポケットの中身を増やす

たくま:次です。「最終的に、何をあげるとその人は喜ぶのかな?」ということです。「渡せる信頼」みたいな「通貨」を自分のポケットの中に入れているイメージを持っていてほしいんですよね。いろんな種類の通貨をこの中に入れていて、「この人はこれがいいんだ」みたいな渡し方をするイメージです。

個人的には、コミュニケーションってイメージがすごく大事だと思っています。だから僕は、「感謝の言葉を先に伝えたほうが喜ばれるんだなぁ」とか「いやいや、成果を持って行ったほうが喜ばれるんだなぁ」とか「感謝よりも成果だろう」とか考えます。

ちなみに会社員の時に、「感謝はいいから、さっさと成果を出せ」と言われたこともちゃんとあります(笑)。15人ぐらい上司が変わった中で、本当にいろんな上司がいました。逆に、上司の不安を聞いて「僕と話をしているとすごく安心するよ」と言われたこともあります。そういう安心感が通貨になったこともあります。

なので、その「〇〇星人」は何を使って生きているのかな、というのがこの通貨のポイントです。喜びポイントですね。このポケットの中に持っていると思ってください。常に渡せるものはあります。この種類を増やす、という感じですね。

「感謝の言葉を伝えても、なんかいまいちだな」となったら別の方法論を出す。いろいろパターンはあると思うのですが、基本はさっきの3点ですね。


覚えるより「思い出して使う」

たくま:ちなみに、さっきの3点を覚えていますか(笑)? 短期記憶だと速攻で忘れるので、思い出すという作業がけっこう大事なんです。では、どうぞ。

参加者2:「重力」と「大気」と「通貨」です。

たくま:すごい。天才です。これを一発で覚えようとしなくてもいいんですけど、人と話をする時や、これから交流するとなった時に、「そういう視点もあったな」と思い出す。その作業がすごく大事です。

スキルセットするにはやはり時間がかかります。みなさんはたぶん自転車に乗る時に、「こうやってバランスをとって自転車に乗っている」みたいに思うことはないと思うんですよ。「あそこに行きたいから、自転車に乗る」みたいな感じだと思います。

コミュニケーションも一緒なんですよね。この人と何かを話したいから話す。だから、無意識領域で、どのような土台があって、どのような空気感で、周りの人とどんな環境の中で生きてきいて、何をしてあげると喜ぶのか、というのをちょっとずつ観察してスキャンする。

そういうところまでコミュニケーションの訓練ができると、勝手にいい人が集まってきます。直感的に「この人はなんか微妙かもな」と思って距離を調整することも、できるようになります。
なので、今この場で一発で全部覚えるというよりかは、何回も思い出しながら使ってもらえるといいんじゃないかなと思います。

今日お話しする人には、通貨が一番いいポイントかもしれません。「何をしたら喜ぶのか」を考えながら、ぜひ会話を繰り広げてみてください。きっとおもしろいと思います。

「決めてくれない上司」は増えている

たくま:次にケーススタディです。最近、「なかなか決めてくれない上司」が多い気もするんですけど、みなさんどうですか。「なんか決めてくれない」みたいな(上司)、けっこういません?(笑)。じんわり深くうなずいている方がたくさんいるので、マジでそうなんだろうなと思っているんですけど、決めてくれない上司は意外と多いのかもしれません。

なぜかという理由を、軽く説明します。80年代や90年代までは、とりあえず働けばベースアップするし、お給料も上がるし、勝手に経験値がある人が偉くなる、みたいな構図だったんですよ。
日本は島国で、お米をたくさん作る必要があります。お米を作るのにはたくさん人が必要なんですね。すごく大変な作業で、その大変な作業を取りまとめる人はどういう人がいいかというと、やはり経験がある人なんですよね。

「すごく面倒くさい人だけど、米を作る経験則がめちゃくちゃあるから、あの人に従ったら早いだろう」みたいな、効率性・合理性の下で、日本は組織形成をしてきました。

日本には(西洋的な意味での)組織という概念がないので、どちらかというと世間形成をしてきました。その流れが80年代、90年代ぐらいまでは、けっこうヌルっと残っていました。実は、ただ会社に長くいるだけなんだけど、「長くいる」という時間軸で評価されがち、というのはすごくあるんですね。

「みんなで決めよう」は地獄

たくま:ちなみに世間って4つポイントがあって、1つは時間軸性です。時間軸性で勝手に評価されて、上にビョンって上がっちゃった人がいます。

本人は「そんなに上がりたくなかったんだよな」とか、「そもそも、上に立てるような能力はなかったんだよな」とか、自覚していることも多いです。これは年功序列的なもので、「ちょっと合わないな」という人が上司になってしまったパターンに多いですね。そういう上司は、自分で決めきれずに「それはみんなで決めようか」と言いがちです。

ちなみに、「みんなで決めよう」ってけっこう地獄です(笑)。良さげに聞こえて、民主主義的な感じに聞こえるんですけど、「みんなで決めよう」は基本的に地獄です。

やはり、ちゃんと上の人が決めて指針を作らないと、誰もついてこられなくなるんですね。「この仕事はどこに向かっているんだろう」となるので、手が止まるし、何もやりたくなくなります。
僕も過去、何もやりたくなくなった時期があります。「この上司は何を考えているのかわからないし、何を出せば正解なのかもわからない。これは何の仕事をしているんだろう?」みたいな、給料泥棒みたいな感じになった時はありますね。

優柔不断ではなく「決め方を知らない」

たくま:そういう、決めてくれない系の上司です。なので、さっきのような視点や構造で上司を見るのがすごく大事なんですよ。その人が優柔不断だから決められない、というわけではないんです。

10年前、20年前の社会の規範・慣習が残っていて、それがそのまま今、上司に適用されてしまっている。その上司は、その慣習のまま上がってきただけ。今の価値観を捉えているわけではないので、「じゃあ、みんなで決めないとなぁ」みたいな気持ちにしかならないんです。

これもポイントなんですけど、自分で決めるのができないんじゃなくて、やり方を知らないんですよ。上司としても、「けっこう必死にやっているんだよね」というところがあると思います。そこをちょっと汲んであげると、上司も思っていることを言ってくれたりします。

「いや、実は俺、こうやって決めたりするの、本当に向いていないんだよね」みたいな相談を、僕も上司からされたことがあります。「それでも決めなきゃいけないんじゃないですか? 1人で決められない場合は、僕が相談に乗るのはどうですか?」と言ったら、「それはすごく助かる」みたいになって、その上司には、1週間に1回、金曜日の夕方に「僕とマンツー(マンツーマン)で話す」時間を作ってもらったんですよ。それで死ぬほど評価を勝ち取った、というのがあります(笑)。

日本はそういう構造なので、上司は何に苦しんでいるのか(を考えてみる)。僕の場合は「一緒に話す」という通貨を渡したら、すごく喜ばれたということです。

だから、「何かが重くて大変そうだな。あの方は何を抱えていらっしゃるのかな?」みたいに(して)、性格で捉えない。個別的な内面で捉えない。これはけっこう、人間関係上のコツだと思います。

資質や気質など、内面は最後の部分です。基本的には何かきっかけがあって、そのように振る舞っているのが人なので、そのあたりの歴史を学んだりすると大変おもしろいです。なので、「その上司は、自分1人での決め方がわからないから悩んでいるだけかもしれない」という考え方をしてみてください。

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