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AIではなく"人"が武器になる営業力とは? 〜キーエンス流×生成AIで育てる営業の本質〜(全4記事)

キーエンスの営業はなぜ属人化しないのか 勝ちパターンを標準化する「キーエンス流」の仕組み [1/2]

【3行要約】
・営業の難易度が上がるAI時代において、キーエンスは顧客データの 徹底活用と「型」の標準化で高い成果を上げ続けています。
・元キーエンスの森賢弘氏は「キーエンスでは30年分の詳細な顧客データと日々の外報を通じてデータの解釈方法や提案の型を組織全体に浸透させている」と語ります。
・これからの営業には顧客の深い理解と伴走が不可欠であり、企業はデータ蓄積の仕組みと型の徹底を図る必要があります。

前回の記事はこちら

キーエンスの強みは難易度上昇を「標準化」で超えること

森賢弘氏(以下、森):ここまでで、AI時代における営業を定義させていただいたんですが、結論、翻訳者や理解者として伴走していくことが営業に求められるところかなと思っているので、これを実際にどう鍛えているのかとか、キーエンスはどういう観点でそういうところをやっているのか、という話をさせていただければと思います。

キーエンスって、たぶんここ3〜4年ぐらい、営業の中ではやっているかなと思っていて、出身者もいろいろ輩出している中で、キーエンスの何がすごかったかというと、みなさんが言っているとおり、仕組み化や標準化みたいな、当たり前の基準がすごく高い会社だったなと個人的には思っています。

さっき言ったとおり、AIの時代が進んでいくことによって、お客さんのリテラシーが上がっていくことも目に見えているので、営業の難易度はかなり上がってきます。

だからこそ、単にサービスを紹介したり、売り込みに走ったり、とりわけ顧客理解がないまま、機能や特徴だけを並べ立てる、いわゆる「PRマシーン」的なやり方では、もう売れません。実際、すでに売れにくくなっており、難易度は上がっています。顧客の文脈を踏まえた提案ができるかどうかが、これからの分かれ目になります。

ただ、全員が全員、売れるという世界線を作るのは非常に難しい。なんでかというと、だんだん難易度がアップしている中で、ヒアリング能力や、お客さんの背景を読み取る力は、けっこう属人化されがちだと思っているので、そこが今の日系企業だと難しいところなのかな、と思っています。

この「難易度が上がって属人化している」というのが、けっこう限界値に来ている中で、仕組みによって標準化しているところが、キーエンスの強みなのかなと考えています。

 

担当者・事業・業界をデータで押さえる

森:じゃあ、もう少し細分化して、キーエンスの仕組みを落とし込んでいくと、僕は圧倒的に顧客を理解していることと、その理解した顧客に対して価値のある提案をしている、ということが、キーエンスの営業の強みなのかなと思っています。

(スライドを示して)この資料に書いてあるとおり、顧客理解は、データですね。顧客理解が何かというと、担当者や、商談先のお客さまを理解しているというところです。

あとは、事業そのものです。たとえばキーエンスは製造業向けに販売していたので、スズキスズキ株式会社の子会社でカーシートを作っている会社を担当するとしたら、そのシートの製造工程がどこから始まり、最終的な出荷までにどんな設備が並ぶのか、そのレベルまで、ビジネスモデルや事業構造を理解しているかどうかが問われます。

あとは業界全体ですね。製造業なら製造業ですし、たとえば通信や、いまのAIのような領域について、どれだけ知見を深く持っているか、そうした理解も重要だと思います。キーエンスの場合は、この3つをデータで下支えしていたのかな、と感じています。


いつ誰が何をして何が起きたかまで追える

澤田隼氏(以下、澤田):データという言葉と、この3つの項目だけだと、正直、どこの会社でもできそうな感じに見えると思うんですよ。

でも、話を聞いていて思ったのは、これって「ニーズや課題は話せばわかるし、ビジネスモデルは調べればわかるし、市場動向も調べればわかる」という話ではない、ということです。

「情報」ではなく「データ」だというのは、キーエンスの社内に、昔から積み上げられてきたものが分析され、構造化された形で蓄積されている、ということですよね。いわば、現場がすぐ参照できる状態で整っていて、末端の営業でもそれを見た上で営業に行ける。さらに、そのデータを使う前提の教育もなされている。そういうイメージなんですかね?

森:まさにおっしゃるとおりで、ざっくりしたイメージで言うと、データはもう30年弱くらい前から蓄積されていると思います。1990年代のものも、たぶん入っている感覚ですね。そうした当時のデータも含めて、すべて閲覧できます。

例えば僕が2020年に新卒で入社した時点で、「20年前の4月5日に、誰がどの企業の誰を訪問し、どんな話をして、どの商品をPRし、その結果どんな商談が生まれたのか」まで追えるくらい、精度の高いデータが整備されていました。

澤田:それって個別で追うんじゃなくて、統計的に「こういう業界やこういう会社はこうだよね」みたいなのも、要約されていたり、形になっているイメージなんですか?

森:そこは、実はめっちゃ人力です。

澤田:あっ、そうなんだ。

森:はい。次は、AIの話もしていくと思うので、そういうところはAIは得意なのかなと思いつつ、僕が入った当時は、まだAIが入ってくる前だったので。

澤田:そうですよね。

森:社内のAI化が特別進んでいるというわけではありません。いわゆるCRMのような仕組みはありますが、基本的にはデータベース的なもので、1行ごとにデータが入っているイメージですね。
「活動」という項目に「訪問・日付」が入り、「時間」があり、「コメント」や「結果」がある、といった程度の管理でした。

データを「解釈する」訓練

澤田:へぇ。でも、新卒でもそこまで追えるとなると、追う人は成果が出るし、追わない人はやはり成果が出ない。教育として「追わせる」とか、「統計的にこう見るんだ」といったことも、先輩がきちんと指導してくれるイメージなんですか? 壁打ちも含めて。

森:まさにおっしゃるとおりですね。右に書いてある「徹底が『提案』を支える」みたいなところにつながるかもしれませんが、結局、データって要は情報に近いじゃないですか。処理されていない、そのままの生のものだと思っていて。

それを解釈して、どう伝えるかが、営業職の次の価値になると思っています。なので、1つは仮説構築のために、事前準備を徹底すること。

もう1つは、澤田さんがおっしゃっていただいたとおり、先輩に見てもらう、いわゆるOJTみたいなかたちになるのかなと思います。

社内では外報って呼んでいたんですけど、1日の終わりに、「明日、何しに行くんだっけ?」「そもそもどういう目的でアポを取ったんだっけ?」みたいに、その日の商談全件と次の日の商談全件の結果の振り返り、フィードバックみたいなところを毎日、上司とやるんですよね。

「そのお客さんって、過去どういうのが売れているんだっけ?」「キーエンスの商品、売れているんだっけ?」「どういう経緯で売れたんだっけ?」「その時、どんな課題があったんだっけ?」みたいなものを上司と毎日話すことで、「溜まっているデータはこうやって見るんだな」みたいに解釈の仕方がわかるようになる。それで、そのデータを使って次の提案に行くという、そんな感じの流れですね。

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