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成人発達理論を応用した人材育成のカギは「思考の抽象化と複雑性の向上」 ~本質的な成長を促す「深く考える力」を育む経験学習のヒント~(全3記事)

人が同時に扱える情報は4つ前後しかない 仕事の差を生む「思考の質」を高める学習プロセス

【3行要約】
・研修で学んだことを実践に活かせない悩みは多くのビジネスパーソンが抱える課題であり、「抽象と具体の往復」能力の差が成長の差につながっています。
・ビジネスリーダーの思考には「抽象度の高さ」と「視点の複雑性」という認知構造の違いが存在し、これが成功の鍵となっています。
・認知構造は長い時間をかけて発達するものであり、失敗や葛藤の経験を深く省察する経験学習を通じて高次元の思考力を育むことができます。

前回の記事はこちら 

知識を行動に活かすために必要な能力とは

島森俊央氏:次に、役割認識になります。「知識やスキルをどの役割や立場に紐づけて発揮できるのか?」というところです。

「マインドセットが変わることで判断基準や信念が変化する」とあります。同じコンピテンシーや能力でも、一般社員のコミュニケーションと、マネージャーとしての役割意識を理解した時のコミュニケーションで発揮の仕方が変わるということで、1個深いところになっています。

認知構造が一番深いところになります。「認知できる・扱うことができる複雑性の軸の数」という表現をしています。先ほどは「5年とか10年」と言いましたけども、非常に長い年月をかけて緩やかに変化するものです。

レクティカという会社がありまして、ここが認知の中核構造について、「思考・行動の背後にある共通項として、抽象度の高さと視点の複雑性がとても大切だよ」と述べています。ここを少し解説していきたいなと思っています。

まずレクティカ社についてなんですけども、セオ・ドーソン博士らが設立した教育・評価機関です。成人発達理論とダイナミックスキル理論を使った評価ツールを開発しています。先ほど触れた思考の複雑性・抽象性を測定し、学習者やリーダーの(思考の)発達段階を可視化し、そして成長を支援しています。

「思考の複雑性と抽象性」が質の高い思考につながる

私も受験したんですけど、(スライドを示して)こういうかたちでスコアリングされます。それと同時に、「SET、SEEK、APPLY、REFLECTを、こんなかたちで学んでください」と、成長支援もしていただけるレポートが出てきます。

レクティカが最初に開発したのが「LAS(Lectical Assessment System)」という測定のアセスメントツールです。LASの測定領域について説明するため、(スライドに示した)3層構造について少し触れていきたいと思っています。

一番外側が「概念的内容」です。アセスメントを受ける側の文章や発言の内容について触れていると考えてもらえればいいのかなと思います。(次に)「表象構造」です。ここは、「ドメイン固有」とありますけれども、発達理論ごとに測定をしている領域になります。

「いろんな発達理論があるんだけれども、共通項ってないの?」とレクティカさんがいろいろ分析をした結果、「思考の複雑性と抽象性が共通なんじゃないの?」と(結論づけました)。ここを「core structures」と表現し、(この領域からLASの)測定をスタートしています。

経営者と若手の差は「扱える抽象度のレベル」にある

では、「思考の複雑性や抽象性って何?」というところで、まず、抽象度の高さから触れていきたいと思います。実は経営者と若手社員の頭のメモリは一緒だと言われています。それにもかかわらず経営者のほうが多くのことを同時に考えているように見えるのはなぜでしょうか? その理由は、個々の出来事を抽象度を高めて処理しているからです。

(グレアム・)ハルフォードさんのチャンク理論によると、人が同時に処理・統合できる情報の単位はおよそ4つ前後だと言われています。若手の方の頭の中でいうと商品知識や顧客ニーズ、経営者の頭の中は、営業戦略や競合との差別化など、扱っている抽象度(が高く)概念が大きいという違いがあります。抽象度が増すほどいろんなことが考えられます。

あとは、複雑性とは視点が増えることを言っているんですけれども、視点が多い人は、「頭がいい人」ではなく、「頭の中で多くのシミュレーションをしている人」なんです。

視点の数や時間軸、抽象度が増していく

例えば1on1の場面で、今期の売上目標と自分の持論だけを話すマネージャー。それに対して、部下の成長やチーム全体のこと、部下の立場・心情まで考えられる人もいます。さらには、会社方針や社会貢献。こういう軸が増えるほど、話す内容がより成熟した内容になってくるのはわかるかなと思います。

(スライドを示して)これは、「発達段階が上がるとこんなイメージですよ」というのを一覧表でまとめたものです。下から、「比較的シンプルな思考」「調整・工夫ができる思考」「構造を扱う思考」「多視点・統合的な思考」というかたちで発達段階が上がっていきます。

視点でいうと、1人称視点、(次が)2人称視点です。3人称視点になると個人・チーム・組織を同時に捉えられる。4人称視点になると、他者・組織・社会など、多層の視点を同時に捉えることができるようになってくると言われています。

因果関係の捉え方や、長期的な目線で考える力が身に付く

あとは「関連づけ(の複雑さが増す)」についてなんですけども、「AといえばB」というところから、「A+BがCになる」みたいな多因子の段階になります。

次に、因果関係が循環して(いることを理解し、)フィードバックループができるようになって、「もしかすると部下が成長しないのは自分のせいかも」みたいなものが見えてきます。最後は「複雑な相互作用が見えてくる」ということでシステム思考ができるようになる。

あとは「時間の長さが増す」というところです。今日・今月を意識した段取り(が組める段階)から、数ヶ月先を見てPDCAサイクルを回せるようになったり、あとは方針が描けるようになったりします。さらに、時間の概念を超えていろんなことを考えられるようになってきます。

「思考の抽象度が増す」についてです。(まずは)まだまだ内省が弱く、体験や経験から共通項を見いだすのが難しい段階です。(そこから)「持論化できる段階」「構造化できる」「原理化できる」というふうに段階が上がっていき、思考の抽象度が増していく。

もしくは「コミュニケーション(の質が高まる)」に関しても、最初は状況説明や事実共有だけなんです。けれども、「背景や意図がわかる」「相手の難易度に合わせて説明ができる」「対話を通じて、新しい理解や意味づけができる」みたいなかたちで徐々に段階が変わっていきます。

抽象度と複雑性の向上は人材育成における課題

ここを捉えていくと、ロジカルシンキングやPDCAサイクル、プレゼンテーションも思考の複雑性や抽象度に大きく影響します。なので、こういう(思考の)型を学ぶことも大切なんですけども、複雑性や抽象度を上げていくこともけっこう大事だなと思っています。

つまり、「思考を高める観点で、抽象度の高さ・視点の複雑性を高めることが最重要課題ですよ」ということです。

おさらいになりますが、抽象度とは個別の出来事に共通する意味や概念を構築していく力のことです。複雑性とは複数の視点や要因を同時に関連づけて考える力のことを指しています。

思考の質を高める4つのプロセス

ここからは、「じゃあ、どうしていったらいいの?」ということで、経験学習について少しお伝えをしていきたいと思っています。みなさんご存じの方が多いと思いますけど、経験学習には「具体的経験」「省察(的観察)」「抽象的概念化」「積極的実験」(という4つのプロセス)があります。今回、コルブさんの論文を読んで、僕にとって意味合いが少し変わった部分があるので説明をしていきたいと思います。

コルブさんが言っている経験学習とは、こんなイメージです。「具体的な経験に直面し、とりわけ環境や状況との調和が崩れた時」……これは、失敗や批判を受けたり、葛藤・揺らぎなどがあったりした時に、「人は感情として『何かおかしい』という違和感を意識する」と表現しています。

ということは、この具体的な経験の中で感情や内省とかもこの中に入ってくるので、やはりその体験を、感情を通して味わい切るのはけっこう大事だなと思っています。

「この不調和や違和感は、環境・状況との調和を取り戻したいという欲求を生み出し、その欲求を起点として省察が始まる。省察を通じて、調和が崩れた出来事は捉え直され、意味づけがなされ、やがて抽象的な概念や理解へと整理されていく」とあります。

例えば「部下の育成を進めないといけない。でも、部下の育成に手を出すと業績的には悪くなったり、納期が遅くなったりする。この葛藤をどうしていこうか?」というところを観察するとします。そうすると両方を実現できる抽象的な概念が身についていき、発達段階が上がっていくと考えていただければなと思っています。

その結果、新たな目的や解釈が立ち上がって「次の行動をしてみたい」という積極的な実験へつながっていくというのがコルブさんの思いになります。

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