【3行要約】 ・無意識の差別的言動「マイクロアグレッション」が職場の心理的安全性を脅かしています。
・企業のDEI推進をサポートするクオリア代表の荒金雅子氏は、傍観者の沈黙が行為者への加担になると指摘し、支援者への転換を提案します。
・マイクロアグレッションに対抗する「マイクロアファメーション」を実践し、多様性を尊重する言動を心がけることで、健全な対立も成長の糧にできる組織が実現できます。
前回の記事はこちら 傍観者から脱することの難しさ
荒金雅子氏:ここに、マイクロアグレッションに関わる登場人物がいます。私は加害者、被害者という言い方はあまり適切ではないかなと(思います)。
もちろん現実にはそういうところに発展していくわけですけれども、まずはマイクロアグレッションを行った、その言動を発した行為者の人たちがいます。そして、それを受けてストレスを感じたり傷ついたり悩んだりする当事者という人がいます。そして、そこには行為者・当事者以外にも大事な人たちがいます。これが傍観者という、そばで見ている、傍らにいる人ということです。
この関係性は決して固定されているものではなく、時としてその関係が入れ替わることもあります。例えば先ほどの動画で、部長さんは若いミホさんに、無意識に言葉を発していましたけれども、別の場面では若手の人たちがその部長に対してからかうような発言をしているところもありました。
少なくとも、私たちはこの傍観者である立場をどう捉えるか。ここが非常に重要なポイントになってきます。傍観者は、「バイスタンダー」という言葉がありますけれども、そこにいる人たちがそこに介入して関わることはなかなか難しいわけです。これは後でちょっと詳しくお伝えします。
今日からできる小さなアクション
何もしないで、そこにただいるだけになると……(傍観者は)よく空港にある、動く歩道のような例えをされることがあります。何もせずにただ見ているだけ。見て見ぬふりをする。そのことが傍観者の人たちを自動的に支持者の側に送り込んでしまうことがあるということです。
沈黙を守っていると、それを受けた当事者にしてみると、行為者の人と同じような側に立っている人と見えてしまう。笑ったり同調するような発言をするのは言わずもがなですね。その行為をする人の側に立ってしまう、支持者になる。
では、私たちはどういう行動をすればいいのか。当事者の側に立って共感を示したり、肯定的なメッセージを伝えたり、あるいは擁護したり、支援者の側に行く必要があるわけです。
一方で、なかなか(支援者の側へ)行けないところもあります。そこには傍観者のジレンマというものがあるわけです。だからこそ今日は、何ができるかということをしっかりご理解いただいて、単にそこにいる傍観者、バイスタンダーから、アクティブなバイスタンダー、「行動する傍観者へ」という道筋を職場の中で作っていただくといいのかなと感じています。
行為者にならないためにどうすればよいのか。無意識なので、やはりここを意識するのがすごく重要になってきます。私はよく「気づきのアンテナを立てる」と言いますけれども。気づかない、無意識・無自覚だとどうなってしまうのか。
「同じ行動を繰り返してしまう」ですね。悪影響がわからないので、自分の思考、行動、言動を修正できない。そして、「謝らない、謝れない」。言い訳をしてしまうとか。ともするとその行為に加担してしまったり、どんどんエスカレートしていくことが起こります。よく「そんなつもりはなかった」と言いますけれども、残念ながらその言葉は通用しないということです。
知らず知らずに支持者の側に流されていく
では意識すると、気づくとどうなるのか。気づくので、それを繰り返さない。長年染みついてきたものをすぐに180度変えることはどうしても難しい。でも、それに気づくと、修正することができます。
自分の言動について素直に謝り、その行為を抑止することもできる。そして、それを今度は対処する、支援する側にもなれる。指摘されたら素直に受け止め、次に活かしていくことが大切になってきます。
傍観者は、その傍らに立つ人ですね。先ほど言いました。介入するのが一番いいんですけれども、それがなかなかできない。そこにはさまざまなジレンマがあります。
介入することによって、行為する人からの反発があるとか、そこに力関係があればなおのこと、それに基づく報復への懸念があるとか。あるいは介入によって場の緊張感が高まっていく。せっかく自分が勇気を振り絞ってやっても、誰も味方になってくれなくて孤立感を感じてしまう。
また本当にマイクロアグレッションなのかどうか。(傍観者)自身に正しい知識、情報がないので確信ができず、一瞬にしてそれが過ぎ去ってしまって、そこに関わることができない。適切にどう対応していいか自信がないので消極的になってしまうこともある。また、そういったものが起こった時にどうすればよいか、制度や仕組みが十分整っていないので、うまく対応できないというところがあります。
傍観者のままで居続けると、私たちは知らず知らずに支持者の側に流されていくことになる。ここをしっかりと意識しながら、少なくとも私たちにできる小さなところからスタートすることが大事かなと思います。