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“何気ない一言”が職場の分断を生む?!~マイクロアグレッションへの対処 小さなトゲが大きな問題になる前に~(全3記事)

職場の心理的安全性を下げる“自覚なき差別的発言” 同僚との会話で気をつけたい3つのNGパターン [2/2]

「差別はないよ」と言い切ってしまう危うさ

そして、マイクロインバリデーションですね。この3つの中でも、このマイクロインバリデーションが一番重要で、問題の多いものだと言われています。

相手の経験や感情を無効化するような言動。差別や困難を訴える人の経験や感情を否定・軽視するものです。無意識であることが多いわけですけれども、結果として相手の感じていることは存在していないかのように受け取らせてしまうところがあります。

マイクロインバリデーションにはいくつかのパターンがありますが、1つは、現実の否定。「差別を受けた」とか「傷ついた」、そういった事実や感覚を軽視する、否定するような言動です。「それは考え過ぎじゃないか? 気にし過ぎではないか?」とか、「大したことではない」と軽く扱うような言動です。

また、違いを否定する関わりもあります。「外国人でも日本語ができれば問題ない」と。日本語の問題に帰結してしまっていて、その人の抱える文化であったり背景であったり、そういったところはまったく気にしていないところがあります。

「うちの会社はDEIを推進しているから差別はないよ」と。残念ながら、時々こういう役員の方にお目にかかることがあります。一生懸命やっておられるのはすばらしいんですけれども、「差別はない」と言い切ってしまうところに少し危うさを感じたりしています。

心身の健康への悪影響も

そして、相手をよそ者扱いする。見た目や名前で、「あなたは本当に日本人ですか?」というようなメッセージを送る。私は関西に住んでいますけれども、いろんなところで講演・研修をさせていただくと、「関西出身なのに標準語がうまいですね」なんてことを言われたりします。実はもともと九州の生まれなんですけれども、こういうふうに言われると、うれしいのか何なのかと微妙にモヤっとするところがあります。

能力(主義)の信仰も非常にあるかなと思います。「女性だから不利なんていうことはないよ」「実力次第だよ。努力すれば誰でも正当に評価される」とよく言われますが、本当にそうでしょうか?

いくら努力をしてもスタート地点が違うとなかなか評価されづらかったり、女性と男性を比べた時に、女性のほうが無意識に不利益を被るようなことはいろいろなところで見聞きされます。こういったマイクロインバリデーションに対しては、よりしっかりと対処していく必要があるかなと思います。

日常の中にある、こういったマイクロアグレッションを放置していくとどんなことが起こるか。個人を見ると、心身の健康への悪影響があるかなと思います。常に適応を求められるので、何か違うサイズの洋服を着て無理をしてがんばっているような、がんばり過ぎて燃え尽き症候群になってしまうとかですね。

常に不安や葛藤、ストレスにさらされて精神的な苦痛が大きくなっていく。あるいは、「あなたと自分たちは違う」というような、見えない線を引かれているような。もう孤立感や疎外感とか、「自分に問題があるのではないか?」と、自己否定や自己嫌悪に陥ってしまう等、こういったことが起こる。

キャリアに関しても、自分がキャリアを上がっていこうとした時に、それを阻害するような要因があるかなと。

本来の業務以外に頼られ続けるモヤモヤ

ある外国人が、マーケティングがしたくて専門的スキル・知識を身に付けたいと日本で就職してせっかく配属されたのに、外国語の通訳の仕事であったり、本来の仕事でないことばかりを言われて、「ここでは自分のキャリアは上がっていかないのではないか?」と。

外国語要員として採用されたわけではないのに、本来の業務以外のところ……まぁ、相手は困っているから頼んでくるので断るのも申し訳ないけれども、そういう仕事ばかりが増えていくような気がして、キャリアの意欲が減退しているという話をされた方もいらっしゃいました。

こういった個人の影響を見過ごしていると、職場においてはコミュニケーションの低下であったり、チームの信頼関係の悪化であったり。なんといっても、今みなさんの職場で一番大事にされていると思う心理的安全性ですね。失敗やミスを恐れずに、リスクを恐れずに本音で率直に自分の弱さを出して語れる、そういった雰囲気は失われていってしまうのではないかとも思います。

また、役員や上の人たちがこういったマイクロアグレッションに無自覚であると、ちょっとした一言、対応が大きく信用を損ねたり、企業価値の毀損にまでつながってしまう危険性も含んでいるわけです。決して放置していいものではないということをご理解いただけたかなと思います。

「自分とは違う」という曖昧さを許容する

では、どのように対処していけばよいのか。その対処法ですが、このマイクロアグレッションは、1人の人がやるわけではなく、誰でもそうなる可能性はあるわけです。

一方で、行為者になる方たちの特徴を見ていくと、例えば違いとか異質性に対して、差別の構造や自分の意識を合理化する理由にしてしまっている。例えば、「違いがあるのは面倒だ」「相手が自分たちに合わせるべきで、マジョリティ側のルールに合わせない相手に問題がある」というような考え方。

あるいは私たちは異質な存在、自分たちの知らないこと・知らない人に対しては、不安や恐れ、偏見を持ちやすいという特性があります。そういったところが高じて、ちょっとした事件があったり問題が起こるとその人たちのカテゴリー(のせい)にしてしまって、差別や偏見の目を持ってしまうことが起きやすい。

そして、曖昧さの許容度が低いというのもマイクロアグレッションにつながる1つのポイントかなと思います。異質なものへの寛容さが低くなるということです。心の狭さとか、かたくなさ。「良い・悪い」「正しい・正しくない」とか。

「MUST思考」という言葉があります。「こうあるべき」「こうでなければ」「これが正しい」「こうだ」という、そういった意識が強くあると、このマイクロアグレッションも発生しやすくなるのかなと思っています。

そして、何か問題がうまくいかない時、自分の心理的葛藤を避けるために、誰か他の人、他のことに責任転嫁をしたり、「自分には問題がない。相手に問題がある」と他責化しようとすることも起こります。他人の欠点・失敗を批判すること、攻撃することで、自分の心のバランスを取ろうとする、そういったところも曖昧さの許容度が低いことで表れるかと思います。

自己肯定感の低さが他者への攻撃に転じる可能性

そして、意外なことに自己肯定感の低さが、他者への攻撃に転じることがあるということもわかっています。自尊感情が低い人は、この人権問題に対する意識・関心も低い傾向にある。

(スライドを示して)攻撃的な行動を取る要因として、自分の中にある恐怖心やコンプレックス、劣等感などが転じて相手に対する攻撃性につながることもあるようです。自分自身の自己肯定感を高めていくのも、1つ、ポイントになるかなと感じます。

アンコンシャス・バイアスは、誰もが持っているものではありますけれども、やはり職場の中で力を持っている優位な立場にあるマジョリティの人たちは、よりそれを自覚していただく必要があるかなと思います。

管理職、役員のみなさんは、その組織においてポジションパワーを持っています。その制度において地位・肩書がある。報酬、評価、仕事をアサインする権利といったものがある。

そして、特権というのは、ある集団において労なく得ることができる優位性。この日本という国において日本国籍を持っている日本人であるというのは、私たちが望んだわけではなく、生まれた時から日本人なわけですが、この国で暮らす外国人にとってみると非常に大きな優位性があるわけです。こういったことに気づかないままに放った一言、行動が、相手を傷つけることにもなってしまう。

自分の言動の影響力に気づかない危険性

そして、ランクの力というのは、その文化やコミュニティによって支持される、あるいは個人の資質などによってもたらされるもの。高い専門性、経験、そういった個人の資質や力を持っているわけです。

力を持っている人は、自分の持つ力を自覚していないので、なぜ非難されるのかわからないんですね。「それぐらいのこと? 何が問題なんだ?」「どうして気にするの?」「言えばいいじゃないか」と言います。

でも、マイノリティの方たち、自分は力がないと思っている人は、そのマジョリティの人の言葉に恐れや不安を抱いたり、なにげない態度や言葉に敏感に反応する。その根底には、「1人の人間として尊重されたい、対等に扱ってほしい」「わかってもらえない」「軽く扱われている」といったことにストレスを感じていたりするわけです。

誰もが持っているマイクロアグレッションではありますけれども、マジョリティ側にいる人たちは、このことについてよりしっかりと正しい知識と理解を持って臨む必要があるかなと考えています。

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