【3行要約】 ・競合との差別化が重要とされるビジネスの世界で、多くの企業が見落としている「3種類の競合」という視点があります。
・木下勝寿氏によれば、Web時代では同カテゴリー商品だけでなく、消費者心理や別の解決手段まで含めた複合的な競合環境が形成されています。
・この新しい競合環境で勝つには、ユーザーの思考回路を理解する「憑依」レベルの洞察と、USP(独自の売り)を体系的に構築する戦略的アプローチが求められます。
前回の記事はこちら マーケティングにおける3種類の競合
木下勝寿氏:ここからは、具体的にどのように効果的なWebマーケティングを行っていけばいいかを、北の達人の独自のフォーマットの説明をしたいと思います。まず、「競合との戦いを避けましょう」と言ったんですけども、競合というものが3種類あることを、ぜひ知ってほしいなと思います。

Webマーケティングが登場する以前は1種類だったんですけど、今は3種類になっています。まず、「プロダクト競合」。そして、「インサイト競合」と、「メソッド競合」という3つがあります。それぞれ説明しますね。
まず、プロダクト競合というのは、同じ土俵で戦うライバル。同じカテゴリーの商品同士で競い合う競合を指します。例えば育毛剤を販売しているなら、他社の育毛剤がプロダクト競合になります。
例えばリアルのドラッグストアの店舗などで、棚の自分のところの商品の横に、競合の商品がひしめき合っています。これがいわゆるプロダクト競合ですね。多くの人がイメージする競合というのは、たぶんこのプロダクト競合だと思います。古いマーケティングでいくと、競合=プロダクト競合のことだったと思います。

次は、インサイト競合ですね。これは消費者の心理的な要因による競合です。例えば育毛剤だと、育毛剤を買おうかどうか迷っている消費者が、「髪を増やしたいけど、手間を掛けるのは面倒だな」「高額なお金は出せないな」「使っていることがバレると恥ずかしいな」とか、もしくは「お金をかけずになんとかならないかな」と思っている。こういう心理的な要素ですね。
心理的に購入しない部分の競合のことをインサイト競合と言います。これは以前からある競合ではあるんですけども、Webマーケティングにおいて、インサイト競合はかなり強くなっていますね。なので、消費者の心の中にある競合はインサイト競合です。
異なる商品カテゴリでも競合関係にある
そして、3つ目がメソッド競合ですね。これは同じ目的を持つ別の手段のことです。例えば育毛剤の目的は、髪を増やし育てること、もしくは髪がある状態になることですが、その目的を達成するためには育毛剤以外の方法もあります。
例えばウィッグ(かつら)とか、植毛もありますよね。もしくは育毛サロンとか、自分でやる育毛マッサージもあります。同じ目的を持つ別の方法は、メソッド競合になります。
現在でも多くの大企業は、競合分析をする際にプロダクト競合しか意識できていないこともあります。だけれども、プロダクト競合だけを意識して差別化戦略を図っても、Webマーケティングの中ではけっこう無意味なんですね。なぜかというと、Webという市場においては、常にプロダクト競合・インサイト競合・メソッド競合という3つの選択肢に挟まれた状態になっています。

例えばリアルな店舗で、育毛剤の隣にウィッグが並んでいることって基本的にはないですよね。でもWebマーケティングだと、「育毛」と検索すると、育毛剤だけじゃなくて、ウィッグとか植毛とか育毛サロンとかの広告がばっと出てきます。一度、育毛剤の広告を見た後に、そういう広告がどんどん出てきたりもします。
もしくは、「育毛」という言葉で検索すると、お金を使わなくても自宅でできる育毛マッサージの情報も出てきます。なので、プロダクト競合以外のものがたくさん出てくるというところなんですね。
なので、競合との戦いを避けるためには、この3つの敵を全部見ていく必要があり、それぞれに対する戦略を練ることが不可欠になってきます。その全部を見比べた上で、真の差別化を考えていく必要があります。
顧客の思考回路をハックする3ステップ
じゃあ次ですね。「ユーザー理解」についてのお話をしたいと思います。ユーザー理解というのは3段階あります。私は第1段階を「観察」、第2段階を「置き換え」、第3段階を「憑依」というふうに言っているんですけども。
第1段階の「観察」は、ターゲットの方が何を好んで、何を好んでいないかという結果を知ることですね。第2段階が「置き換え」で、これは自分がターゲット層の人だったとすると、どうするかを想像することです。そして第3段階の「憑依」は、ターゲット層の思考回路に基づいて判断ができるようになることです。
理解するべきなのは、ユーザーの趣味・嗜好・立場とかではなく思考回路です。まず、第1段階の観察段階で、ターゲットの方を観察しています。この人を観察していると、朝にコーヒーではなくて紅茶を飲んでいました。この結果だけを見ると、「このユーザーの方は紅茶が好きなんだな」と思います。これは趣味・嗜好しかわかっていない状態ですね。
次に第2段階で、置き換えというのをやっています。「自分がこの人だったらどうだろう?」ということで、朝に紅茶を飲む時に、「一緒にスコーンとかあるといいよな」と思います。でも、これってあくまでも自分の価値判断の基準で考えているので、本当に顧客のことを理解しているとは言えないですね。