発想の転換でビジネスチャンスを見つける
——このやるべきことって、大概が面倒くさくて、地味で、やりたくないことですよね。
木下:これは発想の転換で、僕自身は「そこさえやっていたら、めちゃくちゃ儲かるな」と思っているんですよ。ほとんどの人がやりたいことで、やれることしかやらないので。やるべきことだけをやっていれば、やりたいこととやれることでぶっちぎる人って、山ほどいます。逆に言うと、そっちのほうが楽だなと思っていて。

例えば、タレントの世界で考えてほしいんですけど。タレントさんでも基本的に多くの人は、やりたいことと得意なことをバーッとやってますよね。一番儲かるのは、タレント事務所の社長さんなんですよ。やりたいことと、やれることでぶっちぎりの人間を集める。でも、この人たちは自分たちだけでは成り立たないんですよ。
コンサートをやるための段取りもできないし、歌を出していって何かやっていくということもできない。「じゃあ、俺はもう裏方になるわ」と言って、こういう人たちをたくさん抱えて、ビジネスの部分だけを全部つかんでいくと、めちゃくちゃ儲かるわけですね。
そしたら、ご本人がそういうのをやりたいかどうかは別として、「ぜんぜんいけるよね」ってなると、やるべきことをやっている人って、選ぶ側になってくる。そこにおいてやりたいこと、やれることだけで勝負していくというのは、ミュージシャンとかを目指すのと同じなので。それでね、「うまくいかなかったとしても、後悔ないんです」という人が、たぶんミュージシャンを目指しているから。
僕は、その人生もそれはそれでありなんですけど。ただ、ミュージシャンを本気で目指していて売れない人とか、芸人を目指して売れない人っていると思うんだけど。その人と単純に苦手なことが嫌だから避けている人と同じにしてはダメだよ。これは失礼だよっていう話だと思います。
面倒くさいと感じたらチャンス
——社会の仕組み自体が、そうなっているんですね。木下社長は、どっちのタイプなんですか?
木下:僕は「やるべきことだけをやっていたら、楽にいけるな」と思ったので(笑)。もちろん、やりたいこと、やれることで、けっこうがんばろうとしていたんだけれども。「これだけでは、ダメだな」ということで、やるべきことをちゃんとやるようになったんですね。そこから3つの車輪が劇的なスピードで回り始めてやっていったんだけど。
だんだん世の中の大半の人が、やるべきことをやらないということがわかってきて。「ここをやるようになるだけで、飛び抜けられるんだな」と思って。そうなってくると、やりたいこと、やれることが他人より飛び抜けている必要はぜんぜんないなと思います。もう自分自身が「何かで飛び抜けようとする必要性がない」と、考えられたんです。なので、やるべきことさえ、きっちりやっていればいいかなと。
——「面倒くさいなぁ」って思ったら、けっこうそれはチャンスなのかもしれないですね。
木下:めちゃくちゃチャンスですね。
古い・新しいに惑わされないほうがいい
——今日は格言をたくさん聞いてきましたけど。木下社長なら「そんな格言、もう古いよ」って言ってくださるかなと思ったんですけど(笑)。ぜんぜん逆でビックリしました。
木下:(笑)。基本的に若い方は、古い・新しいで物事を考えると思うんですけども。古い・新しいで消えるようなものが、あなたの耳に届いていることはあまりないですよという話です。僕も60年近く生きていますけれども、古い・新しいと言っているのって、マスコミが商売のために言っているだけであって。
「これからは〇〇だ!」と言っているのって、もう60年経っている人間からすると、ちゃんちゃらおかしい話。もう「誤差でしかないですよ」という話なんですね。なので、あまり古い・新しいに惑わされないようにしたほうがいいかなと思っています。

——古いものって、錆びれたものとか。「どんどんアップデートしていかなきゃいけないんだ」という、ある意味で焦燥感に駆られていたのかなと思いました。
木下:逆に、若い人に会って思うのが、物事が古い・新しいで変わっていくことによって、本当はニーズがあるのに、ほっぽり出しになっているニーズというものがあって。今の20代の子たちが、ここを今攻めているなという感じがするんですよ。
例えば、今はどんどんネットで反響型営業みたいなかたちになっているので、電話でアポイントを取って営業するって、なくなっているじゃないですか。一方で、世の中の会社には、あまり電話のセールス営業がかかってこないので、電話するとものすごい確率でアポが取れるんですって。
——えー!?
北の達人がトレンド商品を作らない理由
木下:これを今、20代の経営者とかがバンバン攻めているんですよ。アポ取り代行のビジネスがめちゃくちゃ伸びているのは、実はここのマーケットがむき出しになっていて。「古い」って言って、みんなが変わっていったことによって、「そうは言っても、実はニーズあるよね」というところが、むき出しで残っている。
今、ここを攻めているという感じになっています。「新しいものに移っていく」というのは、単なるトレンドと捉えていたら絶対にダメで。新しいものに移っていくということは、もともとあったニーズを放り出してしまう可能性があるということ。
——やはり、ついつい「新商品」とか「新発売」とか、すごくキャッチーで目を引くから。どうしてもそっちのほうに意識がいきがちでしたけど、それはすごくビックリでした。
木下:だから、うちの会社がトレンド商品を絶対に出さないのは、それなんですよ。もう基本的にうちの商品は、5年、6年前に出したものをロングセラー化していくんですけれども。結局そこが一番効率がいいんですね。
今日は「古臭いと思われがちな精神論は、実は合理的に理解すれば、とてもタイパがいい」という話をしました。少しでも気づきやヒントがあったという方は、ぜひコメントで教えてください。また「僕はこういう格言を、こういうふうに受け取っています」みたいなものもあればね、ぜひみなさんにシェアしてほしいなと思います。
格言を見直したきっかけは『ドラえもん』?
(アフタートーク)
木下:感想、どうでした?
——意外でした。木下社長は、けっこう精神論とかはお嫌いなんじゃないかなと(思っていました)。
木下:(笑)。
——ロジックとか、合理的というところを突き詰めていくと、意外でしたね。
木下:結局、精神論というのは、ちょっと表現が丁寧じゃないよね。例えば「若いうちの苦労は買ってでもしろ」って、「若いうちに苦労を乗り越えるスキルを身につけよう」なんですよね。僕が初めて「若いうちの苦労は買ってでもせよ」という格言を知ったのは、たぶん『ドラえもん』の何巻かだったんですよね(笑)。
のび太のお父さんが言っていたんですよ。その時は子どもだったから、よくわからなかったんだけど。これがわかるようになったのは30歳前ぐらいの時でした。確か『ドラえもん』の道具であったんじゃないかな?
——そんな道具があるんですか? 調べてみよう。「くろうみそ」。
木下:それ!
格言の価値を見直すことの意義
——「どうにも勉強に身が入らずに、楽なほうにいくのび太くんを見かねて、パパは『苦労はたくましい精神を育む』と、お説教しました。そこで珍しく、お説教が身に沁みたのび太が、苦労に見舞われる秘密道具をドラえもんにお願いして出してもらいました」と。これ?
木下:これ! 「くろうみそ」という、わざわざ苦労するための味噌があって。その時に「若いうちの苦労は買ってでもせよ」(という格言)があって。それがわかるのに、読んでから二十数年経っているわけですね。もしその時にわかっていたら、俺の人格がもっと形成されていたかもしれないと思うので(笑)。
——(笑)。先ほど木下社長がおっしゃったとおり、言い方が不親切というか。
木下:そうですね。
——「買ってでもしろ」って、「いや、買いたくないわ!」って思いますよね(笑)。
木下:現代語訳の格言があったらいいかもしれないですね。
——いいですね!
木下:源氏物語の現代語訳版とか、ライトノベル風の源氏物語みたいな感じで。昔の格言を今風の言葉に説明する本があるといいかもしれないね。
——木下社長が……。
木下:書こうか(笑)。ちょっと検討してみます。
——はい! よろしくお願いします!