小さな「情け」の積み重ねが信頼を育む
——確かにお金をもらう場面であれば「相手の方に役立とう」って思えるんですけど。例えば、エレベーターで開くボタンを押して他の方を先に通してあげるとか。道端で、お年寄りの方の荷物を持ってあげるとか。そういう、お金が発生しない場面でも、やはり情けってかけたほうがいいのでしょうか?
木下:これはね、複数の要素があって。まず1つは、最初に話したような(こと)。例えばエレベーターでボタンを押すようなことでいくと、それに対して不快に感じる人って、いないですよね。1回見て、みんなが「うわ! この人すごい! ファンになる!」。これは、ないです。でも、ずっとやっているうちに、例えば2回目を見た時に「あの人って、いつもああだよね」と、味方になってくれたりしますよね。
別にエレベーターのボタンを押すのは、そんなに大したことじゃないから。日常的にやっていると、その人たちが味方になってくれる。味方になってくれることによって、成功に近づいていく。これはもう別に「情けは人のためならず」ですね。
これも、直接見た人もそうだったりもするし。例えば、すごく有名な芸能人がエレベーターに乗った時に「一緒に乗った!」って思った時に、その人が出る時にパッとボタンを押してくれたら「うわ! すごい!」って思うじゃないですか。言うやん! これ。
——言いますね。
木下:これは、めちゃくちゃ広がるやんか。ボタンを1回押しただけでどれだけ(メリットがある)かという話で。ちょっと話が逸れるんだけども、タクシーに乗った時に、運転手さんが「芸能人をよく乗せるんだ」という話をしていて、「どんな人を乗せましたか?」って聞いていたんですけども。その時に「一番印象がいい芸能人は誰ですか?」って言ったら、即答で「坂下千里子さん」って、言ったんですよ。
——えー!?
やらない決断は実はストレスになってしまう
木下:「なんでですか?」って言うと、坂下千里子さんが乗ってきて、ちょっと話していたら「運転手さんのお仕事って、すごい大変ですよね。道が混んでいる時もあるし、大変ですよね」「本当にありがとうございます。タクシーに乗ることで、私たちは楽に移動できます」って言って。これはもう仕事中ではなくて、プライベートでご主人と一緒に乗っている時にそんな感じで。
最後に「がんばってください」みたいな感じで降りたという話なんだよね。たぶん、この運転手さんは乗る客、乗る客にその話をしているし。それを聞いた俺も、めちゃくちゃしゃべっている。
——ついにYouTubeでも。
木下:「YouTubeでも言ってますよね」みたいな。という感じでいくと、好感度がめちゃくちゃ上がりますよね。もちろん好感度を上げようと思ってやっているわけではないと思うんですけど。そういう部分があるということですね。
あとは、人が困っている時に助ける、助けない。これも心持ちによると思うんですけど、けっこうあるのが「今忙しいから」とか。
「今ちょっと急いでいるから」と見過ごしていくとするじゃないですか。こういうのは、絶対に引っかかっているんですよ。まず「今忙しいから」とか「今〇〇だから」って、自分で自分に言い訳をしているよね。言い訳しているということは「本当は、やったほうがいいんじゃないかな?」って思っているけれども、言い訳してやらないのが心に引っかかる。これが、ストレスになるわけです。
ここで、やらなくていい理由(を探す)、どんどん自分を正当化すること自体が、非常にストレスがかかっていく。というところでいくと「やったほうがいいことは、もうやろう」と。ここで「やったほうがいい」と、思わない人は別にいいと思います(笑)。それは別に、まだそのように思わない人なので、かまわないと思います。
思ったことを理由を付けてやらないというのは、実は精神的にストレスをかけているので。そこは迷わずにやったほうが絶対に自分のためになりますよという感じですね。
——そう考えると「情けは人のためならず」って、めちゃくちゃ自分本位の言葉なんですね。
木下:自分本位を突き詰めると「情けは人のためならず」になる。
若いうちから経験値を積み続けることの意義
——「石の上にも3年」って、本当ですか? 苦手なことや、納得できないことに時間を使うのは、もったいなくないですか?
木下:「納得できないことに時間を使うのはもったいない」って、理解力が高い人にだけ言えることなんですよ。納得しないと動けない人とか、動かない人って、完全に社会に置いていかれるんですよね。これは社会人になった時にわかると思うんですけども。

社会人になった時に、いろいろと仕事を教えられます。その時に研修があったり「こんなことをやりましょう」となった時に、「なんでこれをやる必要があるんですか?」と聞く人っているじゃないですか。それで一応、上司の人とかが説明します。そこで理解・納得できないと「納得できないからやらないです」という人と、「理解・納得できないけどやります」という人って、まず経験値にまったく差が出ますよね。
「人って経験から成長しますよね」となってくると、理解したことしかやらない人って、圧倒的に経験値が減っていきますよね。単純にイメージでわかると思うんですけど、動かない人って屁理屈ばかり言っているじゃないですか。
その人たちは「自分の理解力は完璧」という前提で生きているんですけども。世の中にはやってみないとわからないことって、たくさんあるよねということを、若いうちに経験しているか・していないかでは、けっこう大きいですね。たぶんスポーツとか、運動とかをやっている人だったら、1回や2回は絶対に経験していると思うんですよ。
自分の理解力を過信すると成長が止まる
木下:例えば、僕自身の経験でいうと、僕は運動がぜんぜん苦手なタイプなんです。中学生の時に陸上部に入っていたんですね。顧問の先生が体育の先生でもないので、ぜんぜん来なくて。生徒の自主性に任せていたんです。ただ2年生の時に他の学校から、陸上のプロフェッショナルみたいな先生が来たんですよ。
この人が顧問になった瞬間に、ものすごく練習をさせられるようになったんです。当時の僕らがいた陸上部って、一生懸命にやりたくないような、ちょっと不良の巣窟みたいな部だったので。その先生がマジで練習をさせるようになった時に、蜘蛛の子を散らすようにみんな辞めていったんですよ。僕も1ヶ月とか2ヶ月ぐらいで辞めたんですけど。
その時の練習がすごく大変で。一番大変だったのが、ハードルを並べて。通常のハードルって距離があるのに全部を詰めて、スキップしながら跳ぶみたいな練習をさせられました。めちゃくちゃしんどくて。怖い先生なので「なんでこれをやる必要があるんだ?」とか、これに何の意味があるのかも聞けない。聞けないんだけどずっとやっていて。でも1ヶ月ぐらいで辞めたんだけど、辞めたあとにめちゃくちゃ足が速くなって。
——えー!
木下:クラスでもともとビリぐらいだったのが、1番とか2番とかになるぐらい。1、2ヶ月間やるだけで足が速くなったんですね。「あれ? すごいな!」と思って。あれを「理解・納得しないとやらない」みたいな感じでやっていると、絶対に足が速くなってないんですよね。今の教育って、たぶんそういうふうに説明して、理解した場合しかやらないみたいな感じが多いと思うんですけども。
そういうやり方でいくと、自分の理解力が高くないと成長しないことになってきます。そう考えると、そもそもが格言を信じるか・信じないかって「理解できないから意味がない」と言っている部分で。理解できなくても、その通りにやってみると成功できるよという話なんですね。
そうすると、例えば「石の上にも3年」というのは、3年経験すればわかることがあるよと、何百年前から言われていますよね。なのに「今のあなたが突然、それを打ち破るような、すごい理屈を出せるんですか?」というと、まぁまぁ難しいよね。3年ぐらいやると、絶対にそれを越えるものって得られるねって思います。