【3行要約】
・合理主義と精神論は対立するものではなく、むしろ合理的思考を突き詰めると精神論に行き着くという逆説が存在します。
・株式会社北の達人コーポレーション 代表取締役社長・木下勝寿氏は「何百年も残る教訓を否定するのは非合理的」と指摘し、格言に学ぶことは多いと提言します。
・木下氏は「成功とは味方を作ること」と指摘し、謙虚さや礼儀正しさが成功確率を高める合理的戦略だと語ります。
木下勝寿社長が「古くさい精神論」の意義を語る
——木下社長!
木下勝寿氏(以下、木下):はい。
——「若いうちの苦労は買ってでもしろ」とか「情けは人のためならず」という、ちょっと古臭い精神論ってあると思うんですけど。私「正直、今の時代に合ってないな」と思っていて。木下社長って、超合理主義者でいらっしゃるから「精神論とかってけっこう嫌いなんじゃないかな?」って思っているんですけど、どう思われますか?
木下:実はですね、合理主義を突き詰めていくと、最終的には精神論にたどり着くんですね。
——え!?
木下:なので、僕自身は比較的、精神論とかは信じるタイプなんです。一方で、基本的には自分の中で全部合理的に理解をした上で取り組んでいますね。
——そうなんですね。けっこう意外でした。
精神論が残り続ける理由は圧倒的なタイパの良さ
木下:まず精神論。特に今言っていたような「若いうちの苦労は買ってでもしろ」とか「情けは人のためならず」とかの格言と言われているものですね。これって、ものすごくタイパがいい考え方なんですよ。どういうことかというと、そもそも精神論というのは、昔からたくさん生まれては消え、生まれては消えを繰り返しているんですね。
たぶん、みなさん自身も生きている中で子どもの頃は「これが真実だ!」と思っていたけど、経験を積んだら「これは違うな」みたいな感じで、考え方ってけっこう変わりますよね。それと同じように、昔からの精神論みたいなものは生まれては廃れ、生まれては廃れていくんですけど、その中で「やはり、これは廃れないよね」というものしか現代まで残っていないんですよ。
100年前、200年前に言われていたこと。その時代にしか合わないことは、やはり廃れていきます。ところが廃れずに「やはり、これって真実だよね」って何世代も通じて言われていることは、どれだけ状況が変わっても「これだけは変わらない」というものしか残っていないんですね。
その何百年、何十年をかけて、ずっと残ってきた真実みたいなものを、たかだか何十年しか生きていない自分が「いや、俺の言っていることが正しい」ということのほうが、非常に非合理的な判断なんですね。ということなので、何百年もの間、時代が変わろうと関係なく「正しい」と言われているものを信じるのは、圧倒的にタイパがいいことなんですよ。
自分自身が理解できていなくても、実行すれば成果が出るやり方を時代を通じて教えられているので。格言というのは、非常にタイパがいいものなんですね。
礼儀正しさで味方を増やす「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
——私が浅はかでした……。じゃあ、「精神論はタイパがいい」ということなので、今日は世の中で、まことしやかに言われている精神論について、木下社長はどうお考えになるのか。一つひとつ教えていってもらってもいいですか?
木下:はい。お願いします。
——では、1つ目いきますね。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」って、本当ですか? SNSでは声が大きい人が目立って得しているように見えるんですけど、謙虚さって有利になるのでしょうか?
木下:「なぜ、礼儀正しいほうがいいのか?」というところなんですけれども。成功に近づけば近づくほど、だんだんわかってくるのは「成否を決めるのは、どれだけ味方を作るか」なんですよね。敵だらけで成功するって、かなり難しいんですよ。
自分が何かをやろうとした時に「じゃあ、僕が手伝いますよ」「あなたのためにやりますよ」っていうふうに言ってくれたりとか。もしくは、お客さん自身が「あなたの味方ですよ」と、買ってくれるようになっていくことそのものが、成功ですよね。
そもそも成功とは、味方を作っていくことと、ほぼイコールに考えてもいいと思うんです。じゃあ成功していくために、味方を作るのにおいて、態度が偉そうな人と礼儀正しい人のどちらが味方を作りやすいでしょうか?
ものすごいカリスマ性を持っている人は、態度が悪かったりとか偉そうだったりして、それが魅力的に感じて味方や応援者ができてくる。これは現実問題としてあります。一方で大半の人は、たぶんそこまでのカリスマ性を持っていない。というところでいうと「ちゃんと頭を下げる」とか「礼儀正しくする」としたほうが、圧倒的に味方を作りやすいんですよね。
成功すればするほど頭を下げる価値は上がっていく
木下:なので多くの人は、イチかバチかのカリスマ性に賭けて傍若無人に振る舞って味方を作るより、きっちりと周りの人に施しをしていくとか、周りの人を愛するほうが、絶対に確率論的に味方を作りやすい。味方が作れるほうが成功しやすいということがわかってくるんですよ。
そして、ある段階までそうやって成功していきます。ここからある時に回転が変わる段階があるんですね。これは別の動画で第二次成功の話をしている部分があるので、また見てほしいんですけども。ある程度成功してきた時に、例えば成功していない人が礼儀正しい場合と、成功している人が礼儀正しい場合、相手に対する印象って、ぜんぜん違うんですね。
「あの人は成功している立派な人なんだ」と思いつつも、礼儀正しく、例えば道を「どうぞ」と言って譲ってくれたりすると、受け取る好感度はぜんぜん違いますよね。普通の人が「どうぞ」と言うのと、成功している人が「どうぞ」と言うのはぜんぜん違うよねってなってくると、成功すればするほど、頭を下げる価値が比例的に上がっていくんですよ。
成功していない人が「ありがとうございます」と言うのと、成功している人が「ありがとうございます」と言うのとでは、価値がぜんぜん変わってくるんですね。
となると、最後には「頭を下げないほうが損だ」になってくるんですよ。礼儀正しくするだけで、みんなが「すごい」「すごい」って言ってくれたら、喜んで頭を下げますよね?
ということで、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」というのが、わかってくる感じですね。
逆張りで味方を作る方法のリスク
——カリスマ性を磨くよりも、お辞儀をするほうが圧倒的に簡単ですもんね。
木下:圧倒的に楽なんですよ。なので今、第一次成功・第二次成功というところで、まず礼儀正しくして味方を作っていって、第一次成功を迎えます。そして次の段階で頭を下げることで、より効果を上げていく。第一次成功の時に、例えばひろゆきさん(西村博之さん)とか、ホリエモンさん(堀江貴文さん)みたいに逆張りで味方を作る方法があるんですね。

あれは「礼儀正しくない」とは別に思わないですけど。比較的、周りの人をディスる感じでやっていますけども。あれはあれで、確実に成功確率がめちゃくちゃ低いんですよ。彼らは彼らですごく成功しているんだと思うんですけども、成功するというのは、味方を作るということです。味方を作る部分において、1つ有効なものがあって。
有名になるというのは、味方を作りやすいんですよね。なので、例えば世間とはぜんぜん違うことを言いながら、有名になっていく。最初はバッシングされても、有名になることで味方が増えてくる。これは「悪名は無名に勝る」という言い方をしますけども。有名になることで、味方を作って成功していくというものがあります。
成功確率を考えると謙虚さが有利
木下:ただこれは、すごくリスクが高いです。もっと確実にやっていこうとすると「実るほど頭が垂れる稲穂かな」というのが、確率論としては高いですよということで格言としてあるので。わざわざ裏をかく必要はないかなと思いますね。
——おっしゃったように、世の中をディスったり目立ったりするほうが一見、煌びやかで派手に見えてしまいます。「頭を下げないほうがいいんじゃないか?」と、思っていたんですけど、そうなんですね。
木下:それで成功する人は、ごく一握りですし、逆に言うと、それをやっている人は、一方で恨まれたり嫌われたりもしています。まぁ、その成功の定義にもよりますけれども、不安定でもありますよね。
——カメラには映ってないですけれども。木下社長は、いつも撮影する会議室に来られる時も、すごくお辞儀をして入ってきてくださったり(笑)。
木下:あまり意識してなかったです(笑)。
——撮影が終わったあとも「ありがとうございました」と言って帰って行かれるので。視聴者のみなさん、本当に木下社長はいつもこれを体現していらっしゃるんですよ。
木下:これはもう絶対にカットせずに流してくださいね(笑)。
——本当に木下社長は、これをやられていますもんね。私も頭を下げていこうと思います。