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“よりよく考える“ための方法論 ― 良いアイディアを生み出す「筋の良さ」と「ユニークさ」を両立するには ―(全2記事)

アイデアは出るのに、話すと“で、何が言いたいの?”になる理由 解像度高く考えられる人が備える“3つの要素” [1/2]

【3行要約】
・「解像度高く考える」という表現が浸透する一方、その具体的な実践方法が曖昧で悩むビジネスパーソンが増えています。
・光村圭一郎氏はベンチャー支援の経験から、ありきたりなアイデアでは解決できない課題が急増していると指摘。
・深さ/広さ/構造化の3つの視点を組み合わせ、自分のアイデアが「なるほど」と思わせるレベルに達しているかを常に確認すべきです。

より良い仕事にするために「筋良く」「ユニークに」考える

光村圭一郎氏:「outsight」(大企業の人材がベンチャー企業の経営課題に対して解決策を議論するオンラインの越境試合プログラム)の中で大切にしていただきたいことが2つあります。

ここまで考えることについて触れてきましたが、この「考える」という行為に付随して意識してほしいポイントがあります。

1つ目は筋良く考えることです。ある種ロジカルであることや、緻密に考え抜くという筋の良さがなければ、課題に対して箸にも棒にもかからないという状況になります。ですので、まずは筋良く考えることを押さえていただきたいと思います。

ただ、もう1つ同じくらい大事なことがあります。それはユニークに考えることです。特にoutsightでは、ベンチャー企業が取り組んでいるさまざまな課題が扱われますので、パッと思いつくようなありきたりなアイデアでは歯が立たない場面が多くあります。いかにユニークに、そして斬新に考えていけるのかが問われます。

このユニークに考えることと、先ほど申し上げた筋良く考えること。この2つを組み合わせることで、outsightの中で評価されるアイデアが生まれてくると感じています。

これはoutsightというプログラムの中だけで重要なのではなく、日々の仕事の中でも役立つスキルだと私たちはいつもお伝えしています。今の仕事では、従来とは異なる発想で新しいことに取り組むことが、どの会社でも、そして会社員に求められています。

その意味で、筋良く考えることとユニークに考えることを両立することで、より良い仕事ができるようになると考えています。この2つのスキルが、outsightを通じて培われていくのではないかというのが、私たちの捉え方です。

解像度高く考えられる人が備える3つの要素

ここからは、筋良く考えることとユニークに考えることの具体的な方法論。どのように取り組んでいけばいいのかというヒントをお話しします。まず筋良く考えるという点ですが、ここで意識していただきたいキーワードが「解像度」です。

最近はいろんな場面で「解像度が粗い」「解像度が細かい」といった言葉が使われ、思考や行動においても問われるようになってきています。バズワード的に扱われることもありますが、筋良く考えるということは、この解像度を高く考えることと極めて近い意味合いなのかなと思っています。

ただ「解像度高く考える」という表現そのものが、実は解像度の粗い言い方でもあります。「具体的にどういうことを指しているのか?」という点が曖昧なまま使われてしまうからです。

では「解像度高く考える」とは何を示すのか。私なりに整理すると、その下にある3つの要素がそろっている状態だと捉えています。

1つ目は「深く考えること」、2つ目は「広く考えること」、そして3つ目は「構造的に考えること」です。出てきたさまざまな要素を構造として捉えて整理することを含め、この3つがそろうことで、はじめて解像度の高い思考になるのだと思います。

トヨタも行っている「なぜ」を繰り返す分析

ここからは、これらをもう少し具体的にお話しします。まず「深く考えるとはどういうことか?」という点です。

深いという言葉の反対は、浅い、表面的、表層的といった状態なので、表層的ではないところまで踏み込むのが「深い」状態と言えます。

これをさらに具体的に言うと、「なぜ?」「それをどうやって?」という問いを重ねて掘り下げていくことによって到達できるものだと考えています。よくトヨタ自動車で「なぜなぜ分析」と言われますが、「なんで? なんで?」と問いを繰り返すことで、より深く掘り下げていくことができるという考え方があります。それと近い感覚かなと思っています。

少し例を挙げて、このあたりをもう少し具体的に捉えていただけるよう説明したいと思います。

これは以前outsightで、実際にベンチャー企業から提示されたお題でした。その企業が開発・販売している商品のリピート率を改善したいというテーマで、「単発では売れているが、やはりリピートしてもらってこそ価値がある。どうすればリピート率を改善できるのか?」という相談をいただいたものです。

この問題を深く考えるにあたって、「そもそもなぜリピート率が悪いのか?」という問いを掘り下げていくことでアイデアが出てくるのではないかと考えました。そこで、このリピート率が悪いという問題を深く深く考える、いわゆる深掘りのプロセスを踏んだというわけです。

下に示しているように、「なぜリピート率が悪いのか?」という問いに対して、例えば「商品の品質が悪いからリピート率が低いのではないか」といった答えが挙がってきます。もちろん一見するともっともらしいのですが、ここで止まってしまうと、いわゆる表面的・表層的な答えで終わってしまいます。

「深く考える」ことの本質

商品の品質とひと言で言っても、その内訳にはさまざまな要素が含まれます。そこでさらに「品質のどの部分に問題があるのか?」と分解していく必要があるわけです。

品質を構成する1つの要素として「性能」があります。その商品のスペックや効能を指す部分です。「性能が悪いからリピートされない」と仮に整理したとしても、「では、どのような意味で性能が悪いのか?」と、もう一段深掘りできます。

例えば、顧客が求めている結果が出ないという単純な性能不足のケースもありますし、一度の使用では効能が出るものの、耐久性が低いために長持ちしないという理由で「これでは使い続けられない」と判断され、リピートされないこともあり得ます。

このように、品質という大きな概念を性能に狭め、さらに「結果が出ないのか」「耐久性の問題なのか」などと掘り下げていくと、点のように具体的な論点が見えてきます。これこそが深掘りの結果だと感じています。

一方で、性能以外の要因も当然あります。性能に問題はなくても、例えば価格が高くてコスパが悪いと感じられてしまう場合は、そこで嫌われてリピートされない可能性もあります。また、商品を購入するまでのプロセスが複雑で手間がかかるという理由で離脱されることもあります。品質という言葉1つ取っても、構成要素はいくつもあり、その要素ごとに深く掘っていくことで、さまざまな論点が見えてくると考えています。

こうして出てきた多様な要素の中から、本当に向き合うべき問題や課題を特定し、そのポイントに対して必死に考えを進め、具体的なアイデアを生み出していくこと。これが「深く考える」ということの本質だと思っています。

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