広げて考えると意外な発想が見えてくる
続いて「広く考える」です。

深く考えることだけでは不十分で、広く考えることも同じくらい重要だと感じています。
先ほどと同じくリピート率改善のお題で考えてみると、品質に着目することは1つの方法ですが、「本当に品質を改善すれば解決するのか」「それ以外の観点でできることはないのか」と、視野を広げていくこともできます。
例えば、ビジネスモデルそのものを工夫するというアプローチがあります。サブスク型のモデルにすることで離脱を防ぎ、結果としてリピートにつながる可能性もあります。あるいは、長期利用のお客さまに割引やポイントを付与し、特別な顧客として丁寧に扱うといったロイヤルティ施策を導入することで、離脱を防ぐ方法もあります。
また、別の要素としてはブランドを上げるということがあります。みんながその商品を買い続けるようなブランド面への投資もあり得ますし、最近はやりのコミュニティマーケティングのように、ファン化を促進してファンの方々が自ら口コミの宣伝大使になって商品を広げていくというケースもあります。
そうなると、その人自身は購入をやめませんから、結果的にリピート率が改善されるということも考えられます。
なので、商品のリピート率を改善するというお題に対して「すなわち品質だ」と視野を狭めるのではなく、品質以外のことでもこれだけいろいろ考えることができるということです。こうして挙がったものを、先ほど申し上げた「深く」という観点で掘り下げていくことで、まったく別のものが見えてくることもあるのかなと思います。
さらに下の図に示しているように、品質から広がった外周のところにさまざまな要素がありますが、まったく別領域のものを広く考えて組み合わせるという発想もあります。
例えば、ある商品と直接関係のないゲームという世界の知恵を持ち出すことです。ゲームの要素を商品と組み合わせて、ゲーミフィケーションのようにゲーム的な要素からお客さんをハマらせる、沼らせてずっと買い続けてもらうという考え方もあります。
これは「ゲーム」というまったく違う領域まで広く考えることで、ゲームの要素を商品の売り方や作り方に反映するという、さらに広く考えた結果として導かれるものです。本当に無限に広く考えることができるので、どこまで広く考えられるのかということが問われる場面でもあると思います。
広げて考えることで、考えるべき領域や意外な発想が見えてくるというところだと思っています。
アイデアは出るのに、話すと“で、何が言いたいの?”になる理由
続いて「構造的に考える」という点です。

深く、広く考えると、いろんな要素が頭の中に次々と浮かんできますが、それがゴチャゴチャとあるだけでは、なかなか考えがまとまらないね、という話になります。
これらを1つのアイデアに収斂させていくためには、構造や関係性を意識しながら、頭の中で仕分けて分ける作業を行い、すっきりした状態で考えを進めていくことが必要になります。
例えば、関係性にはどんなものがあるでしょうか。相関性であれば、これとこれが連動して動き続けるので、ここをいじればこう変わるというかたちでAとBを結びつけて考えることができます。
相反性であれば、これがこうなると逆にあちらはこうなるので、これは遠くに離しておきましょうと整理できます。それ以外にも因果、推論、循環、補完など、関係性につながる熟語はいろいろあります。
こうした関係性を丁寧に把握していくことで「これとこれは同じグループだよね」「これは違うグループだよね」「違うグループだけれど、ここにはこういう関係があるよね」というように頭の中が整理されていきます。
結果として、大量に考え出した要素をうまく処理し、料理していくことができます。その中で、問題の核心や「中心をどこに置くのか」という点が見えてくるのだと思います。
今お話しした「深く」「広く」「構造的に」という、解像度を高めるための3つの要素は、outsightの中で2つの場面で問われます。

1つ目は、「事業紹介Day」です。1週目のこちらの場では、ベンチャー企業のプレゼンを聞き、お題を受けて、みなさんが次々と質問を投げかけていきます。この質問を重ねるプロセスそのものが、事業や課題をより解像度高く理解するための時間になり、理解が深まることでアウトプットの質も上がっていく。その経験自体がトレーニングになるという位置づけです。
もう1つは、実際にアイデアを考える場面です。ここでは解像度高く考えることが求められ、細かい前提を把握しながら筋の良いアイデアへとつなげていく必要があります。outsightは、こうした実践的なアクションの中で“解像度”という考え方を扱えるように設計されています。
解像度の高低を見極める方法
さらに、解像度の高低を見極める方法があります。

ある種のリトマス試験紙のようなもので、解像度の低い話はつかみどころがなく、「はぁ、そうですか」という反応が出やすくなります。
もっと典型的なのは「で、何が言いたいんですか?」という反応で、そうした受け止め方が生まれる時は、多くの場合、話の具体性が不足していて、情報が粗い状態だと捉えられます。この違和感が、解像度の低さを判断する1つの手がかりになります。
その話を聞いていても、つかみどころがないために「はぁ、そうですか」という反応になったり、もっと言えば「で、何が言いたいんですか?」という受け止め方になることが非常に多いと思います。
一方で、解像度の高い話を聞いた時には、典型的に「なるほど」と言わざるを得ない瞬間があります。こうした反応の違いが、解像度の高低を見極める1つの手がかりになります。
例えば、ご自身がアイデアを考えた時に誰かに話してみて、「なんでそう考えたのですか?」という経緯やプロセスを説明し、「なるほど」と返ってくれば、それなりに解像度があると判断できます。逆に「はぁ」とか「で?」といった反応が返ってくる場合は、まだ練り込みが粗いのだと気づけるはずです。
これは自問自答でも同じで、自分が聞いた時に「なるほど」と思いたくなるレベルに達しているかを確認することができます。outsightでも、日々の仕事や会話でも、この感覚が1つの物差しになると思います。