「話を聞く」に徹することで場は持つ
豊間根:俺の感覚だと、アドリブ力って場数であり、語彙もけっこう大事だと思っているんだけど、インプットは何かあるの?
岩本:ない。
豊間根:ないのかよ。
岩本:あんまりないですね。
豊間根:なるほど?
岩本:でも確かに、共通のお話みたいなのをする時に、その話を知っているとかのシンプルなインプットは確かに重要かもしれないですけど、別にそれがなくても「話を聞く」に徹することで、別に場は持つと私は思っています。
豊間根:完全に人からインプットするタイプだ。新しい人に会う機会は仕事の中でけっこうあるの?
岩本:営業なのでめちゃくちゃあります。
豊間根:ほぅ、なるほど。じゃあ新規もけっこうあるってこと?
岩本:はい。
豊間根:そうなんだ。
岩本:新規のほうが多いかも。
豊間根:なるほどね。だからそこの深掘りだよねぇ。
岩本:話しやすいものとしては、定番ですけど天気とか、あと立地、場所。「私はここにオフィスがあって、ここはあまりおいしいご飯屋さんがないんです」「ここはいいですね」みたいなところで、向こうが話しやすい話題を提供するとか。エレベータートークみたいなのはよくありますけど、そういうのはあると思います。
豊間根:なるほど。
間が空いてしまう時は自分の話を勝手にする
豊間根:話している間に、間が空いちゃう時間とかはないですか?
岩本:ありますね。
豊間根:ああいう時はどうしている?
岩本:基本は逆にけっこう自分の話を勝手にする。
豊間根:あー、いったん? なるほどね。
岩本:相手の方にもよるんですけど、相手が「話したいけど話しづらいな」(みたいな方)だったら向こうの話を聞くに徹するんですけど、「あまりしゃべりたくない」みたいな方もいらっしゃるじゃないですか。特に営業だと、私が営業に行っている側なので、お客さまが自分のことをベラベラ話してくれるという方も少ないじゃないですか。そういう時は私がめっちゃしゃべります。
豊間根:なるほど。いったん話術で見せると。
岩本:はい。とりあえずしゃべる。
豊間根:俺の話を聞けと。
岩本:「こいつめっちゃしゃべるな」「すごくおしゃべりな子が来たな」みたいな感じにする。
豊間根:なるほどね。確かに、それはヒロカのキャラ設定もあるんだろうなぁ。
岩本:でもそうすると、「あ、しゃべってもいいんだ」みたいな。自己開示すると、向こうも自己開示してくれたりとか、そういうところで心理的ハードルを下げるみたいな。
豊間根:なるほど。「まずは相手のことを傾聴する」みたいなのがけっこう常套手段ではあるけど、ヒロカのお客さんって、あんまりグイグイいける人がいなさそうだものね。
岩本:そうですね。
豊間根:どっちかというと理系っぽいお客さんですよね。
岩本:はい。自分からいっぱいしゃべる方は少ないかなと。
豊間根:なるほど。それはだからキャラもあるんだろうな。
岩本:うん。あと、相手にもよりますね。
ゲーム性を持たせて話を引き出す
豊間根:ちなみに僕は飲み会とかでシーンってなったら……。
岩本:なんかやばい、変なことをしそう(笑)。
豊間根:だいたいゲームを始めるよね。
岩本:ゲーム? どういう?
豊間根:「じゃあ、ヒロカの高校時代の部活を当てるゲームをやります?」と。
岩本:やば(笑)。
豊間根:ゲーム、クイズを始めがちですね。
岩本:でも見たことあるかも、その豊間根さん。
豊間根:あれ、いいんだよ。シーンってなっているということは、基本的にまだチームビルディングできていないというか、お互いのことをあまりわかっていない時にけっこうなるじゃないですか。
突然「○○さんの高校時代の部活クイズ」とか、好きな食べ物を当てるクイズみたいなのをやり始めると、「いや、なんやそれ」となるんだけど、意外とそこからやりとりが生まれて、「焼きビーフン好きなんだ」みたいなパーソナリティもわかるし、「岡山のおばあちゃんなんですけど」「僕も岡山ですよ」みたいな、意外とそういうのも出たりするから。
岩本:確かに。
豊間根:何らかのゲーム性を持たせて(話を)出してもらうというのはけっこうやるけれども。
岩本:あー、いいかも。
豊間根:それはアドリブというよりかは、ファシリテーションっぽい話だね。
岩本:うん(笑)。
相手とその相手の話に興味を持つ
豊間根:まとめると、ヒロカ流のアドリブのコツは何ですか?
岩本:まず1つ目が、「相手とその相手の話に興味を持つこと」。これがまとめというか、一番重要。
豊間根:これがムズいんだけどねぇ。
岩本:興味は持ったほうがいいですよ。
豊間根:そりゃそうだよ。
岩本:「持てなくても持て」って、私は思っています。
豊間根:なるほどね。
岩本:特に営業だったら持てって思う。
豊間根:どうやったら持てますか?
岩本:人に対して「もっと仲良くなりたい」という気持ちが私は基本あるんですよ。
豊間根:ない人はどうする?
岩本:えぇ~!? それはやはり豊間根さんがよく言っている「目的志向」になるんじゃないですか? 「なぜこの人と仲良くなったほうがいいんだろうか?」という。私はそこまで落とし込んではいないですけど。
豊間根:いや、俺は今、上司目線なの。
岩本:上司目線なの?
豊間根:そうそう。人に興味がない部下に「どう興味を持ってもらおうかな」という意味で。
岩本:お客さんでも同僚だとしても、仕事って基本的に仲が良いほうが良くないですか? 仲良くなったほうが、コトはお互いにとって良く進むんです。 だから私は、それが一番いいと思っている。
豊間根:なるほど。だから言い換えかもしれないね。「興味を持つ」「興味を持て」じゃなくて、「なるべくお客さんの仕事とは関係ないパーソナリティ情報を引き出せ。1回の商談で5個引き出せ。そうすると成果が出しやすくなるから引き出せ」みたいにKPI化するといいかもしれないね。
岩本:それ、けっこう難しいですけどね(笑)。
豊間根:え~? でもたぶんそういうことだと思う。
岩本:まぁまぁ、そうなのか。
豊間根:意味づけと、行動に落とし込むということなんだろうな。なるほど。
自分がやられたらうれしいことはちゃんとやる
豊間根:というのが前提の話で、他には。
岩本:あとは、今後のために覚えておきたいことは記憶しましょうというところですね。自分の引き出しにもなるし、私も逆の立場だったら、覚えてくれていたらうれしいと思うので。そういったところで、「自分がやられたらうれしいよね」ということは、ちゃんとやりましょうというところですね。
豊間根:これははじめましての人じゃなくて、一定関係を構築した人のやりとりのアドリブの話だね。
岩本:そうです。
相手の話を自分ごと化して、共感ポイントを探す
岩本:あとは相手の話を自分ごと化して、共感ポイントを探す。
豊間根:なるほど。
岩本:これは撮影においても、たぶん営業においても大事かなとは思っています。
豊間根:「興味を持つ」「覚えておく」「共感ポイントを探す」というのが、ヒロカなりのプロフェッショナルの流儀ということで。
岩本:プロフェッショナルの流儀(笑)。
アドリブの実演の設定
豊間根:ヒロカさんにちょっとアドリブを実演していただこうかなということで。
岩本:できるかな。アドリブの実演(笑)。
豊間根:初対面の人とアイスブレイクをする、打ち解けることを目的にしたアドリブを、先ほどの3つも意識しながらやってもらおうかなと思っております。
ヒロカは、とあるWebサービスの導入を提案する営業です。とある「伊藤先輩」という先輩がいまして。
岩本:なんか名前を聞いたことがあるな。
豊間根:その知り合いの豊間根社長に、初回商談で初めて顔を合わせます。伊藤先輩は「基本的に俺が話すけど、オブザーブ的に一緒に入っておいて」と言われて入った商談です。私はうねり株式会社という会社の社長で、伊藤先輩とは同じ高校の先輩に当たる。だから伊藤さんとは仲が良いと。
岩本:なるほど。
豊間根:ある時間からヒロカさん・伊藤先輩・豊間根さんの3人でオンラインミーティングをする予定だったんだけども、伊藤さんの前の予定が長引いて、開始時間を2分過ぎてもなかなか来ない。
岩本:伊藤さん!
豊間根:なので、なんとなくヒロカがその場を乗り切らないといけない感じになっているという状態を、どう乗り切るか。
岩本:オンラインミーティングなんですね。
豊間根:オンラインミーティングですね。
岩本:画面でね。
豊間根:ちょっとじゃあカメラを見てやってみましょうか。
気まずいオンラインミーティングをアドリブで乗り切れ
豊間根:じゃあ、気まずいオンラインミーティングをアドリブで乗り切れ。スタート。
岩本:お世話になっております。
豊間根:お世話になっています。
岩本:時間になったんですけど伊藤がまだ来ないので、もう少しお待ちいただくことになります。ちなみに今日は会社にご出勤をされているかたちですか? それともお家でですかね?
豊間根:今はオフィスですね。
岩本:オフィスなんですね。すごく背景がおしゃれで。
豊間根:そうなんですよ。
岩本:私は今お家なんですけど、私の会社はけっこうリモートワークが多くて。今日みたいに、会社の中でけっこう会議が詰まっていると、伊藤みたいに時間が押してしまったりとかがあったりするんですけど、みなさんはどうですか? リモートワークとかされていますか?
豊間根:うちはけっこう出勤多めですね。
岩本:そうなんですね。それは会社の方針というか、何かあったりするんですか?
豊間根:そうですね。やはり対面のほうがコミュニケーションしやすいからっていう感じですね。
岩本:いやぁ、そうですよね。ちなみに伊藤から聞いたんですけれども、お二人は高校が同じと。
豊間根:そうですね、後輩ですね。
岩本:そうなんですね。よくお二人で会ったり、ご飯へ行ったりとかはされているんですか?
豊間根:そうですね。年1、2ぐらいですかね。
岩本:へぇ、なんとなんと。みたいな。
豊間根:なるほどね。今1分ぐらい持った?
岩本:1分ぐらい持ちました?
実演で意識していたこと
豊間根:ちなみに今はどういうことを意識して。
岩本:知っている情報でとりあえず聞いてみるというところと、一応Webサービスでしたっけ? というところだったので、リモートワークとか働き方みたいなところは聞いておくと、今後の商談に良さそうだなと思って、ちょっと聞いてみました。
豊間根:いいですね。聞かれている側からすると、こういう時って、質問の意図が気になるんですよ。だからこの人は、本当にただ雑談として何も意味なく聞いているのか、それともこういう意図があって聞いているのかによって、答え方も変わってくるから。
岩本:確かに。
豊間根:そんなことを気にするのは俺くらいかもしれないけど。
岩本:(笑)。意図は「今後の商談に役立ちそうなことをちょっと聞いておこうかな」ですね。
豊間根:そうだね。意味のない質問でただ場を持たせるんじゃなくて、この後の話につながるような質問みたいなのを、いくつかストックを持っておくといいのかもしれないですね。
岩本:確かに。けっこう私は背景いじりを使いますね。
豊間根:働き方の話にもつなげやすいものね。
岩本:そうですね。
豊間根:特に営業の人とかは、詰まった時に使える、かつその後の話にもつながりやすい定番質問というか、ネタみたいなのを持っておくといいのかもしれないですね。
岩本:そうですね。あと伊藤さんとどれぐらいの頻度で会っているかを聞いたのは、「今度は私も一緒にそこへ行きたいな」と、終わってから言いたかったからです。
豊間根:なるほど。ちゃんとその後の展開も考えながら話を持たせていると。
岩本:というのはけっこう意識していました。
豊間根:なるほど。それも先ほどの「まず相手に興味を持つ」ということとか、「覚えておく」というところがポイントなんですかね。
岩本:そうですね。
豊間根:共感ポイントはそんなになかったかな?
岩本:そうですね。共感ポイントはちょっと難しかった。
豊間根:そもそも話していなかったからね。
岩本:(笑)。
豊間根:ということでちょっとした実演もありましたが、ヒロカのアドリブはこんな感じでやっていますということで、ヒロカの頭、大解剖の回でございました。
岩本:役に立ったか心配なんですけど。
豊間根:役に立たせていただきましょう。みなさんもぜひ、ヒロカ流の3つの流儀でアドリブをしてみてください。