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クリティカルシンキング超入門-AI時代のサバイバルガイド:テクノロジーと共生するための思考術-(全3記事)

クリティカルシンキングを身に付ける4つのポイント 正解がわからないVUCA時代に「納得解」を出すための思考法

【3行要約】
・クリティカルシンキングは正解を当てるのではなく納得解を探る思考法ですが、多くのビジネスパーソンはその実践に苦戦しています。
・堀口智之氏は「現在は超VUCA時代で、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性が高まり、絶対的な正解を見つけることが困難になっている」と指摘します。
・クリティカルシンキングを身につけるには、知識の習得、批判的な情報評価、データによる事実と解釈の分離、そして継続的な実践と振り返りが重要です。

前回の記事はこちら

イタリアンレストランの売上低下ケースで考える

堀口智之氏:具体的な演習問題を見ていきたいと思います。(スライドを示して)こちら。3店舗運営しているイタリアンレストランのオーナーから相談を受けました。「最近、売上が下がっていて困っているんです。どうしたらいいですか? どのような施策を実施するべきですか?」という相談を受けたとしたら、みなさんだったらどうしますか?

いろいろなアイデアがありますね。例えば「新商品を作ったらどうですか?」とか、「TikTokをやったほうがいいですよ」「広告を出したらどうですか?」ちょっと元も子もないですけど「そもそもおいしくないんじゃないですか?」「んっ? 今は不況で経営、厳しいですよ」とか、意見なんてたくさんあるじゃないですか。そう、あるんですよ。



じゃあ、どれが正解でどれが間違っていますかね? これ、判断するの、めちゃくちゃ難しくないですか? そう、今は超VUCA時代と言われています。

VUCA時代には「1つの正解」を当てること自体が難しい

これは何かというと、それぞれの頭文字を取っているんですが、変動性があって、不確実で、複雑で、曖昧になっています。2020年以降、新型感染症が登場して、我々の生活は一変しました。そして2022年にChatGPTが登場して、AIが本当に多くの仕事を変えてしまったわけです。



じゃあ、今後、5年、10年先はどうなっていきますか? 予想はあると思いますが、絶対に合っているかはわからないじゃないですか。2015年ぐらいの段階で「今の生成AIが出てくるよ」と予想した人はおそらく1人もいなかったと思います。

むしろ生成AIは、知識に意味と経験が伴っていない、シンボルグラウンディング問題というのもあって絶対無理と断言していたAI研究者までいました。

そういった中で、今後5年、10年で絶対にどうなるかなんて誰も予測はできないじゃないですか。新しいツールが出てきて、すべて世界を変えてしまうかもしれません。それはわかりません。

誰も知らない「正解」のもとで納得解を探るのがクリティカルシンキング

つまり必要なのは、絶対的な答えではないんです。網羅的に可能性を考えませんか? 先ほどのアドバイスも、何が合っていて何が間違っているか、絶対の正解ってないじゃないですか。だからいろいろやらなきゃいけないんですよ。いろいろ考えなきゃいけないんですよ。

これが必要なわけです。そう、クリティカルシンキングの神髄はこちら。求めるのは正解ではありません。というか正解は誰にもわかりません。「いや、あの人なら知っている」と、ふと思ってしまうかもしれませんが、いや、完璧には誰も知らないですよ。「絶対にそれで合っていますか?」と言われたら保証はできません。正解かどうかわからない中でさまざまな要素を網羅的に考えて、みんなが最大限納得できる結論を出すこと。これが重要なのではないでしょうか。


クリティカルシンキングを身に付けるためのポイント

じゃあ、どうすればクリティカルシンキングが身に付くのか。まずは知識を学び続けることが必要だと思います。今日もいろいろな質問をさせていただきました。凶悪犯罪は増えていますか? 減っていますか? 離婚は増えていますか? 減っていますか? なかなか当たらないじゃないですか。

我々は正しいデータを調べようとすらしません。さまざまなバイアスがかかった情報の中で判断しているんです。

そう、必要なのは蟻の目線ではなく鳥の目線です。高い目線で世の中を見ること。これが重要です。知識が必要です。そして情報・データを批判的に評価しましょう。

批判というのは、決してネガティブなものではありません。「本当にそうなの? 本当にそれ、信じていいの?」という批判的な姿勢って超重要だと思います。何が正しいのかわからない時代。だからこそ情報・データが入ってきた時にちゃんと批判的に評価できるかどうか。可能性を考えられるかどうか。そういった姿勢が重要だと思います。

そしてデータで物事を見る癖を付けませんか? 事実と解釈の分離です。「あなた、間違っているよ」と言われると、なんか嫌な感じがするじゃないですか。でも、別に事実と解釈は別なんですよ。

だから、「間違っているよ」というのはあくまで「事実ベースで間違っているよ」なんです。人によっては、ちょっとネガティブに解釈してしまうかもしれませんが、データで見ましょう。

そして最後に、実践・振り返りが必要です。常に、本当にこれでよかったかどうか。実践を行って、その振り返り。そういった中でサイクルを回していくことが重要だと感じます。


なぜクリティカルシンキングは身に付きにくいのか

「じゃあ、明日から気をつけよう」とか思うんですけど、「いつ身に付きそうですか?」と質問されると、これまたなかなか答えるのは難しいと思います。

なんでクリティカルシンキングが現状で身に付いていないのか。仮に身に付いていなかったとして、なんで身に付いていないのかを考えていくと、義務教育ではやらないからです。

クリティカルシンキングを真剣にやろうとすると何が起こるかというと、「先生、このテストの問題自体がおかしいと思います」になるわけです。そんな小学生、嫌ですよね。そんな中学生、高校生、誰も好きにならないですね。そう、これは義務教育ではやらないんですよ。

先生が出す答え、先生が出す問題を批判しちゃいけないんです。だから義務教育では基本やりません。一部やる部分もありますが、基本はやらないですよね。やってしまうと、先生方も統制が取れないですよね。

あとは、批判=ネガティブになりがちです。批判されると、ちょっと嫌だとか、けっこう日本人にありがちだと思います。私もそうなんですけど、ショックを受けるみたいな。でも、事実ベースの批判は当然あると思うんですけどね、ただ、(批判された時に)気持ちも動いてしまうと。

あと、実践しないと身に付かないというところもかなりポイントになってきます。「実際ロジカルシンキング系の本とかを読んだことはありますか?」と聞かれた時に、読んだことがある方は多いと思うんですけど、「じゃあ、身に付いていますか?」という質問をすると、「あれ?」ってなってしまう。

もちろん、天才的なセンスをお持ちの方はすぐに実践して、使いこなしているんだと思いますが、多くの方にとってはなかなか難しいんじゃないですかね。


研修現場で見える「理解」と「実践」のギャップ

実際、私自身も多くの会社で研修をさせていただいているんですけど、「今回、問題提起から仮説立てを行うことを学んだ。内容は理解したつもりでいたが、自分で思考しようと思うとなかなか思いつくまで時間がかかった」という意見をいただきます。

あとは、「問題提起と詳細確認の区別が難しい」。ロジカルシンキングやクリティカルシンキングの研修の時に、こういった詳細もやっていくんですけど、なかなか難しいと。

ほかにも、「堀口さんの解説を聞くと、フレームの使い方や分解方法はなるほどと思うけど、実際自分でやってみるとけっこう途切れてしまう」。あとは、「正解のわからない問題に対して仮説を一度立てるというのは、ふだんの業務や日常生活に有効だとは思ったけど、実践してみようと思うと、なかなか大変」というご意見もたくさんいただきます。



ということで、これからは意識するだけではなく、日々実践をする。そこからのサイクルを回していくというかたちで、これからはクリティカルシンキングを学び続けていただけたら幸いかなと思っております。

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