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クリティカルシンキング超入門-AI時代のサバイバルガイド:テクノロジーと共生するための思考術-(全3記事)

クリティカルシンキング=「批判」ではない 嘘の情報があふれるSNSと生成AIの時代に問われる“考える力” [1/2]

【3行要約】
・多様な価値観が認められる時代に正しい方向性を決める難しさが、多くの組織やビジネスパーソンの課題となっています。
・堀口智之氏は、SNSの偽情報やAI生成コンテンツが溢れる現代において、正しい情報を見極める思考力がより重要になっていると指摘。
・情報取得から行動決定まで全プロセスで批判的思考を働かせ、正解より正解に至るプロセスを重視すべきだと語ります。

前回の記事はこちら

クリティカルシンキングの定義と「批判的思考」という言葉の誤解

堀口智之氏:クリティカルシンキングの定義はこんなふうに言われています。「何を信じ、何を実行するかを決断することに焦点を置いた、論理的、かつ思慮深い思考」ですね。一応日本語訳だと、批判的思考と言われております。

批判的思考。なんかちょっと嫌な言葉じゃないですか? 「批判するんですか?」みたいな感じなんですが、それはちょっと違います。批判ではなくて、いわゆる「物事を冷静に捉えていこう。本当にそれって正しいんですか?」という態度を示すことだったり、情報の正しさをきちんと吟味する姿勢のこと、あるいは考え方のことを言っています。


なぜ今クリティカルシンキングが重要なのか

なぜこの考え方が今注目されているのか。みなさんもおわかりのとおり、今SNSを開いてみればたくさんの嘘の情報であふれていますね。AIが作り出した訳のわからない情報もたくさん流れています。AIが作った動画なんですかね? 人間が作った動画なんですかね? よくわからない動画が本当にあふれています(笑)。

そして今、多様な価値観が認められるようになりました。そういった中で、やはりより正しいものが求められていますよね。じゃあ、より正しいものとは何ですかね? みんなで方向性を決めて動いていかなきゃいけない時って、「みんなが正しいです」では進まないじゃないですか。どれか1つ正しいものを決めて、それに向かってみんなで動いていくタイミングが必要です。

そして3つ目。記憶・知識ではなく、やはり思考力が求められる時代になったなと思います。もう少しクリティカルシンキングの構成要素をちょっと眺めていきたいと思います。


情報取得から行動決定までを支える「クリティカルシンキングの要素」

(スライドを示して)こちらです。これは京都大学の楠見先生(楠見孝氏)がうまくまとめていただいています。簡単にご紹介すると、情報を得て、その情報を明確化します。「それってどこから取り出したデータですか?」とか、「網羅的ですか?」とか、明確化をします。

それに対して推論の土台の検討をします。情報の分析・評価を実施します。実際、推論を実施して、最後、行動決定に至っていくわけです。

非常に抽象的でちょっとわかりにくい部分もありますね。ただ、これがクリティカルシンキングの要素です。すなわち情報を得てから行動決定までのすべてのプロセスに必要な要素のことをクリティカルシンキングだよと言っているわけです。


「給料5パーセントアップ」の問いをクリティカルに考えてみる

じゃあ、そういった中で、この明確化の部分を一緒に眺めていきたいと思います。例えばこんな質問です。「給料を5パーセントアップすると、生産性は5パーセントアップすると思いますか?」。

ちなみにみなさんはどう思いますか? 賃金の引き上げをどんどん行うということで、東京も最低賃金1,200円とか、どんどんどんどん上がっていっています。これから、1,300円、1,400円、1,500円になっていくでしょう。

そういった中で、給料が上がるということは生産性も上がりませんか? みなさんはどう思いますか? これにはいろいろな考え方がありますよね。よかったら、ぜひチャットで送っていただければと思います。

これね、あるセミナーでも聞いたんですよ。そうしたら、なんと見事真っ二つに意見が割れました。賛成4人と反対4人だったんです。「生産性5パーセントアップします」と言う人と、「いやいやいや、アップするわけないよ」と言う人たちにちょうど真っ二つに分かれたんです。これはおもしろいなと、私は思いました。



「なぜそう思いましたか?」と質問をしたら、まず反対の方から「私は人事の立場で給料5パーセントアップするところをよく見てきました。でも、それが生産性につながった場面なんてないですよ」とおっしゃったんです。

「私は増えると思います」と言う方に聞いたところ、「従業員の立場として、もし5パーセントアップしていただけるのであれば、生産性5パーセントアップしようとか、そういう意欲にもつながりますし、モチベーションも上がります」と。「あとはその企業を途中で辞めて、別のところで就職しようというよりは、きちんとその会社に勤め上げようという思いになると思います」とおっしゃっていました。

これはどっちが正しいですかね? すなわち、「その理由で他の人を納得、説得することってできますかね?」とみなさんに問いかけたところ、そこで議論が止まっちゃったんですよ。

「いや、でも私は人事の立場です」「いや、私だって働いてきましたよ。あなたは、何年働いていますか? 5年ですか。足りないです。私は20年働いています」ってなったら。「あれ? なんか納得させられないかもね」と(なってしまいました)。けっこう難しくないですか。

でも、いろいろな意見が出ました。(スライドを示して)例えばこちら。「モチベーションは上がるんじゃないですか?」「いや、満足度は上がるでしょう。だって5パーセントアップしているんだから」「いや、生産性ってそもそも何ですか?」という意見もありました。あとは「仕事によるんじゃないですか?」「実際に上がっていますか?」とか、そんな意見がいろいろ出てきました。

でも、これもなかなか難しいんです。いろいろな論点があります。例えば、「モチベーションが上がるんじゃないですか?」と言った人に対して、1,000万円希望の人が300万円から315万円になったらどう思います? むしろ「それしか上がらなかったんだ」と思いません? モチベーションって下がりませんか? もちろんこれは特例的なことかもしれません。でも、そういう人もいますよね。

「じゃあ、満足度は上がるんじゃないですか?」に対しては、「他社が10パーセント上がったよという状況だったらどうですか?」「(自社は)5パーセントしか上がらなかったじゃないですか」と。「むしろ下がりませんか?」と。

あと、生産性ってそもそも何ですかね? 売上が上がればいいんですかね。働く時間を5パーセント削減すればいいんですかね。「仕事によるんじゃないですか?」という方は、どんな仕事だったら上がりそうか、あるいは下がりそうか(わかりますか?)。どうですか? 実際に上がっているかどうか。これはデータ分析の必要がありますね、というかたちで、いろいろな論点が見えてきたわけです。


正解そのものではなく「正解に到達するプロセス」を重視する

つまり、これらの情報をいろいろ整理していく中でやはり大切だなと思うのは、正解ではないんですよ。正解じゃなくて正解にたどり着くためのプロセスのほうが重要なのではないかと思います。

もちろんきちんとデータがあるのであれば、それで正解を示すことはできるかもしれません。でも、「じゃあ、本当に絶対的な正解ですか?」と言われたらわからないじゃないですか。わからないながらもいろいろな検討の余地があって、いろいろな角度からの意見があって、それらを網羅的に見ていって、検討して、批判的に思考していくこと。これが重要なのではないかなと個人的には思っています。

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