【3行要約】 ・
『新 問いかけの作法』出版を記念して、著者の安斎勇樹氏によるウェビナーが開催されました。
・安斎氏はAI活用とファシリテーションには共通点があり、AIを使いこなすためには段階的な問いかけが重要だと指摘します。
・さらに、AIが普及した社会においてはファシリテーションが重要になると提言し、その理由を解説します。
前回の記事はこちら モチベーションがないAIに、問いかけの技術が活きる
安斎勇樹氏:というわけで、改訂した理由と、どんな本なのかという話をしたんですけども。最後に、すでに
『問いかけの作法』の旧版を読んでいただいた方にも読み返していただきたい理由って何なんだろうなと。そして、自分なりに言語化した「この本で問いかけの技術を磨く意義ってどこにあるんだろうか?」ということを語ってみたいなと思います。
まず、表面的なところからいくと、これは生成AIの活用にもけっこう使えます。やはり、冒頭で「何の問いかけでお悩みですか?」と聞かせてもらったところ、「AI活用」と答えている方がけっこういらっしゃいましたよね。これはね、マジで使えます。けっこう取材が増えていて、「AI時代における問いかけとは」とか「問いのデザインとは」と、質問されることが多いです。
違うところはもちろんあります。一番違うのは、AIにはモチベーションがないところですね。AIに内発的動機がなかったりとか、どんなに無茶振りや嫌な質問をしても、がんばって答えてくれる。それを除くと、けっこう変わらないなと思うんですよね。
やはりファシリテーションがうまい人って、生成AIへの問いかけ、壁打ちがすごくうまいなと思いますし、逆に下手くそだと、生成AIのプロンプトがめちゃくちゃ雑です。出てきたものに対して「AIはいまいちだな」と言うんだけど、「それは質問が悪いよ」ということがけっこう多いなと思うんですよ。
それこそ、先ほどの話もそうですよね。やはりファシリテーションが下手な方は、いきなり本題を言っちゃうんですよ。アジェンダをいきなり示して、「さ、自由に意見をどうぞ」みたいな。
「今日は2時間かけて『シチズンの100年後のビジョンを考える』という話し合いをしたいと思います。どなたか意見はないですか? いかがですか?」と言って、「誰もいないなぁ」みたいになるわけですよ。「いきなりメインディッシュを聞いたら出ないよ」という話を先ほどしましたよね。
ファシリテーションでAIをコントロールする
これ、ChatGPTの壁打ちもそうなんですよ。企画案を考える時に、「○○の企画案で、イノベーティブなアイデアを5案出してください」みたいな。ショボいのしか返ってこないから、「イマイチだなぁ」ってなるわけですよ。
そうじゃなくて、やはりAI活用や壁打ちって段階が必要じゃないですか。どういう意図なのか、頭出しをする。いきなりアイデアを出させないことがけっこう重要なんですよね。僕もよく「まだ出すな」「まだここに留めたい」と言っているんです。
けっこうAIってお節介なんですよ。すぐ何かやろうとしてくるし、出そうとしてくる。僕も本の企画とかを相談すると、「目次を作りましょうか?」みたいな(笑)。「まだ目次は作らないでください」とわざわざ言うわけです。
だから、けっこう段階を踏んで、「こうしてこうして、満を持して最終的に出したいものをやる」とやらないと出ないですよね。この質問のプロセス設計みたいなものって、(ファシリテーションと)めちゃくちゃ似ていると思います。
AIが普及した社会で質問の技術が活きる
あとはけっこう、『問いかけの作法』の第5章に、質問が出てこなかった時のアフターフォローの話を書いているんですね。
意見が出ない場合とか、意見が出るんだけど「うーん、なんだか微妙だなぁ」という時に、どうやってアフターフォローをすればいいのかということを、『問いかけの作法』の第5章に書いていたりするんですよね。今日は細かくは説明しないんですけれども。
例えば生成AIとの壁打ちで、「うーん、ちょっといまいちだなぁ」という時に問いをブレイクダウンしたりとか、「(AIが)最初の前提を忘れているな」と思ったらリマインドするとか、使える部分がたくさんあります。生成AI活用に使えるというのは、2021年当時には思っていなかったポイントですね。なので、ぜひ問いかけを生成AI活用に使っていただければなと思います。
どちらかというと、本題はAI活用の文脈じゃなくて、このAI時代において、「問いかけ」というものの意味合いがめちゃくちゃ重要になってくるだろうなということです。もっと言うと、ファシリテーションというものは、AIに対する質問だけじゃなくて、これからのAIが普及した社会において、めちゃくちゃ重要性が上がっていくと予想しているんですよ。