【3行要約】 ・2025年11月21日の
『新 問いかけの作法』出版を記念して、著者の安斎勇樹氏によるウェビナーが開催されました。
・安斎氏は、資生堂やシチズンでの成功事例から「揺さぶり」と「深掘り」の2つの質問モードを使い分ける重要性を説きます。
・上記の事例から、当事者意識を促す問いかけや、過去から未来へと視点を移動させる質問の軌道設計など、ファシリテーションの具体的なテクニックを紹介します。
前回の記事はこちら 大手企業のバリュー浸透プロジェクトに参画
安斎勇樹氏:私はその後、こういった問いかけの力を使って、いろいろな企業のご支援や、プロジェクトに応用させていただいています。
例えば、いろいろなところでお話しさせていただいている事例だと、2018年に資生堂さんの理念浸透を担当させていただきました。当時、資生堂さんは2020年のビジョンの実現に向けた行動理念として「TRUST8」というバリューを掲げていました。「これをどうやって、世界中で働いている4万6,000人の従業員に浸透させるのか?」というご相談をいただきました。

私が思いついた問いかけは「8つのめちゃくちゃいい理念が並んでいて、ビジュアルもすごくかっこいいんだけど、多くないですか?」と(笑)。
人事や経営層の方にそっと投げかけさせていただいたところ、「まぁ、そうだよね」「それはちょっと思っていた」みたいな。
職場によっては「これは、もうできている」というものもあれば「職種上、優先順位的にはこっちのほうが大事だな」っていうのが、いろいろあるよねと。
一番いらないものを選ぶとしたら?
思いきって、一つひとつの組織で、職場の方々に「8つの中で、一番いらないものを1個選ぶとしたら、どれですか? それを好きなものに差し替えるとしたら、何にしますか?」という質問を引っさげて、各部門でワークショップやらせていただいたんです。
これがすごく盛り上がったんですよ。経営陣が作った8つの理念を1個消していいって、なんだかテンションが上がるみたいなんです。「じゃあ、これを消していいですか?」「こっちのほうがいいんじゃないかな?」「いやいや。それをなくしたら、うちのチームは困るよ」みたいな。
気づいたらみんなが、この理念が自分たちにとってどんな意味があるのかを議論している。その結果、ものすごく理念が浸透したんです。そういうプロジェクトを2018年にやらせていただきました。
「不可能を可能にしたワークショップデザインとは?」ということで、資生堂の人事の方とインタビューさせていただいたのが、今でも
MIMIGURIの実績として掲載されています。
価値観を深掘る質問と、揺さぶる質問がある
実はこの時はいろいろと頭を悩ませて問いを編み出したんですが、その後に『問いかけの作法』の中で言語化しました。そこでは、質問にはフカボリモードとユサブリモードがあると。
これをごちゃごちゃにしないで使い分けていくことがファシリテーターの肝なんです。そうした時に、この「1個、いらないとしたら何ですかね?」というのは、完全に揺さぶりをかけにいっているんですよね。
相手の価値観とか本音を深掘っていくのがいいのか。膠着しているから揺さぶったほうがいいのか。これが問いを投げかける上で重要な視点です。これは
『問いかけの作法』『新 問いかけの作法』の中でも、引き続き紹介していて、第4章で出てきます。

いくつかパターン化している中で、パラフレーズ(があります)。よく使われているものを別のものに置き換えてもらうパターンとか、「もし〇〇だったら、どうしますかね?」とか。そういった質問って、いろいろなところで揺さぶりをかけられるわけです。
2018年当時は揺さぶり、深掘りという言語化はできていなかったんですが、この「トップが定めたやつを1個だけ差し替えるとしたら、どれですかね?」という揺さぶりの質問をやっていたんですね。
こういったことを振り返りながら『問いかけの作法』の中で、あらためて体系化しています。
(チャットを見て)ご質問で「理念が浸透したかどうかは評価できるのか気になります」。これはね、評価方法はいろいろあると思います。資生堂さんの場合は独自のサーベイをお持ちだったので、全リージョンでの浸透を評価した結果、このワークショップの事後に浸透していたことが評価されたので、成功したプロジェクトだったんです。
まぁ「理念浸透をどう評価するか?」って、それだけでセミナーになっちゃうのでまた別の機会にやりましょう。これはなかなか奥深いですね。僕は確実に評価できると思うんですが、実はいろいろなやり方があります。ご相談があれば、ぜひMIMIGURIにご連絡をいただければと思います。