【3行要約】
・「モノ売り」から「コト売り」へのシフトが叫ばれる中、多くの営業現場では提案の本質が理解されず、単なる商品スペックの羅列に終始しています。
・シリョサク(※動画公開当時)の豊間根氏は「見えないものを見える化する」ことが提案の本質であり、市場成熟と競争激化の時代には顧客ニーズを引き出す営業が重要だと指摘。
・組織に提案力を定着させるには、優れた資料という「ハード面」と、それを使いこなすプロセスという「ソフト面」の両方を整備し、営業チーム全体の底上げを図ることが不可欠です。
市場成熟と競争激化 「モノ売りからコト売りへ」
豊間根青地氏(以下、豊間根):どうも! シリョサク(※動画公開当時)のトヨマネです。みなさん提案していますか? 我々は提案資料や営業資料という領域でいろいろなクライアントさまをご支援させていただくことがけっこう多いのですが、提案に悩んでいる方はけっこう多いです。
なので、今日は営業組織における提案をどう改善していくかというところを私からあらためてお話をしたいなと思っております。

あらためてこの提案が大事になってきている理由ですが、もちろん、業界や商材によって違いはあるのですが、大きく言うとやはり市場が成熟してきているというのと、競合環境が激化してきている。
これは近しいですが、商品がコモディティ化してきていて、今まではお客さんに「こういうもの欲しいです」「はい、わかりました。どうぞ」とか「こういうものを作ってください」「わかりました。はい、どうぞ」というふうに必要なものを作って売るとか。
「顧客数」より「顧客単価」LTV発想の拡がり
あるいはとにかく数をこなして数をいっぱい取るという売り方をしてきた会社が、お客さんが本当に欲しがっているニーズを引き出すとか、すでにお付き合いがあるお客さんとの取引をより大きくすることによってLTVを増やしていくという、プロダクトベースからニーズベースの営業活動に変わってきているんですね。
あるいは顧客数よりも顧客単価にフォーカスした事業方針を持っている会社さんがすごく増えてきています。その結果、営業の現場で「いやいや、モノ売りじゃなくて、コト売りだ。ソリューション営業だ」ということに、あらためて、シフトすることが必要になってきているとことがすごくよくあるわけです。
これは何十年も前から言われている話なんですが、なかなか、パンっと変わることはできないし、会社によってフェーズがやはり変わってくるので、そういう悩みを持っているお客さんはすごく多いです。
桃太郎で考える「あるべき提案」
これはね、本当にあらためての話ではあるんですけど、提案って、難しいんですよ。かつ、この提案という言葉を、けっこう曲解しているというか。提案という言葉って、人によって捉えているものがぜんぜん違うんですよね。
めっちゃ抽象化すると、我々の考えている提案というのは、桃太郎で言ったら(スライドを示して)こういうものなんですよね。「あなたはお腹が空いているんですね。それならこのきび団子を食べませんか。お腹が満たされて幸せな気持ちになりますよ。うちのおばあさんが丹精込めて作った自信作です。その代わり、鬼退治を手伝ってくださいね」と。
「成功すれば、あなたも村人みんなもハッピーです」……というふうに、相手の持つ課題が解決されたすてきな未来を提示すると。この未来、いいですよね、すてきじゃないですか。だからここから一緒に行きましょうよと、すてきな未来を提示して、そこに一緒に行こうぜというのが本来あるべき提案なんです。
スペック羅列は提案ではない
一方で、どうなっちゃうかというと、こうなっちゃうんですね。
「私たちはきび団子を配布しています。うちのおばあさんは1日100個の団子を製造します。秘伝の団子のレシピは特許申請中です。カロリーは1個62キロカロリーですが、少し誤差もあります。岡山県で栽培した有機キビを使用しています。受領には鬼退治への参加が必須条件となります」みたいに、求められてもいない単なる自己紹介やスペックの羅列を延々としてしまう。こういうものを、提案だと思ってしまっていることが、けっこう多いんですよね。言われても(相手は)「知らんがな」っちゅう話なんですよ。
「いやいや、あなたの会社のスペックはわかったけれど、それが私にとってどうなんですか」というのがわからない。これを提案だと思ってやってしまっている人が、けっこう多いです。
“見えないもの”を見えるようにする仕事
なんでこれが難しいかというと、めっちゃ端的に言うと、見えないものを見るのが難しいからなんですよね。パンフレットを見せて、「この中から選んでください」って言う場合、それって見えるじゃないですか。「こういうものを作ってください」って言われる。あ、言われた。条件が決まった。よし、じゃあそれに合うものを持ってこよう。今ある商品だから持ってこようみたいな。
その見えるもの、自分目線や、現状すでに解決策が存在する世界観から、相手の目線や、今存在しないものを見えるようにしていく。具現化していくことが必要だから、提案って難しいんですよね。だからやはりなかなか簡単にはできないし、トレーニングが必要なわけです。
我々は「提案資料に困っています」とか「営業資料に困っています」とご相談いただくことが多いのですが、これ、本質的には結局一緒なんですね。見えないものを見るのが難しいってことなんです。
資料づくりは“全体の一部”
単純に資料に起こす、PowerPointをうまく操作して色やフォントをきれいにするということではなくて、ゴールを決めてそもそも何のためにやるのか。論点を設定して、それに必要な情報を集めてお客さんからニーズを引き出して、それを分析して示唆を出して、こういう世界を作りましょうよというストーリーを作った上で、それを目に見える資料というアウトプットに落とした上で、プレゼンして納得してもらってプロジェクトを前に進めていく。
これが我々が考える資料作成の全体像なんですよね。その資料作りって、もうごく一部分に過ぎません。この目に見えないものを見える世界に引き込んでくるという行動こそが本質なんだけれども、それが難しくて、なかなかできないからみんなが困っているということなんですね。
組織に落とす「ハード×ソフト」2つのレバー
我々がそれに対してどうアプローチしていくかというと、大きく二軸あって、ハードとソフトの掛け合わせが必要だと考えています。ハードがなにかというと、要するに資料です。
でも大前提、多くの「ちゃんと提案しなきゃ」で困っている組織の方って、そもそも「じゃあ提案って何」というのがずれていることがけっこう多いです。
結局「提案だ」「提案だ」と言っているんだけど、その旗振っている偉い人も、とにかく数をこなしてお客さんにプレゼンすることが提案だと思っているみたいな。あるべき姿を描いてそこに連れていく、そこに納得してもらうことが提案だという認識をまず持っていないということがけっこう多いんですよね。
なので、まずは、そもそもこういうセールスプロセス、こういう全体像でこういう世界を描くというのがいい提案だよねという一種のベストプラクティスをきちんと作るということなんですね。これが我々がハードと言っているものです。
そこではバチバチにいいものを作って、「プロが作るといいっすね。でも我々はそんなことできないですから……」となっちゃってもよくないので、プロセス分解して、1個1個確実にやりきってもらう。そこは研修やOJTを通して組織に落とし込んでいく。
そこで成功体験を生んで、モメンタム、盛り上がり、熱量を作っていく。お、なんかできんじゃん、変わんじゃん、やれんじゃんという雰囲気を作っていくという、この二軸が重要だと我々は思っています。
資料は“最強の営業職”
このセールスプロセスにおいて、資料ってめっちゃ大事なんですよね。ダウンロード用資料、サービス説明資料、提案資料など、作り手の元を離れて意思決定を支援する最強の営業職だと我々は定義しています。
資料がなければその場で話しただけで終わっちゃいますけど、資料はドキュメントとしてメールで送ったり、対面の担当者さんだけではなくて、その先にいる人に届けることができます。あるいはトップセールスのパフォーマンスのいい人だけの属人的なノウハウではなくて、100パーセントではなくても、その人のやり方を真似て、今まで30パーセント・50パーセントだった人が80パーセント・90パーセントまでは真似することができる。そのための道具として資料はめちゃくちゃ大事なんですよね。
AI時代でも変わらない“使いこなす道具”の重要性
AIやいろいろなツールが発達している中ではありますが、やはり営業活動において資料というものの重要性はめちゃくちゃ高いです。現場のメンバーが使いこなせる、自分事化できる道具をきちんと整備することがめっちゃ大事だというのが我々の勧めです。
シリョサクではいろいろなサービスのかたちをご支援しています。まずは提案資料・営業資料を1本、ちょっといいものを作りましょうよと。場合によっては実際にコンペや案件に入り込んで、制作の支援をする、(コンペを)取りにいくということもご支援します。
“見えない未来”を可視化し、運用で定着させる
要するにまとめると提案がやっぱり必要です。だいぶ前から言われているけども、やっぱり難しいです。なんで難しいかというと、見えない世界を見なきゃいけないからです。我々人間は見える世界の生き物だから、見える世界に気を取られちゃう。
だけど、提案というのは未来や相手の考え方みたいな、見えないものを見なきゃいけない。それをどう見るかといったら、まず見えるようにする。資料という、我々がまずこういうかたちで作ったらめっちゃええやないですかというものを具現化・言語化して「確かに」と思ってもらう。
ただそれだけだと使いこなせないから、それをプロセス分解してきちんと回して運用してやりきって、KPI化して組織の当たり前のレベル感を上げていくというかたちでご支援させていただいております。

資料という、やっぱり組織の米ともいうべきコミュニケーションの道具を変えにいってきちんとやりきる、使いきるということが、やはり成果を出すためにはめちゃくちゃ大事だと思っています。