【3行要約】 ・ビジネス戦略立案においては、数字を見るだけでなく構造を理解する「因数分解の思考法」が重要です。
・マーケターの仕事である「売れる仕組み作り」には、売上高を構成要素に分解し、変えられる要素を見極める視点が不可欠です。
・ビジネス数学の専門家である深沢真太郎氏は、効果的な因数分解には「構造の明確化」「変数と定数の区別」 「具体的アクションの決定」という3ステップで取り組むべきだと提言します。
前回の記事はこちら パンダは「かわいい×かわいい」でできている?
深沢真太郎氏:だから私は、この因数分解のテーマで企業の研修や、ビジネスセミナーをやる時は、いきなり「はい、じゃあ、あなたの仕事で使っている数字の因数分解をしてください」っていう指導はしません。しないんですよ。どういうテーマで因数分解を指導しているかというと、例えばこんな感じです。
みなさん、パンダを因数分解してください。「ちょっと何言っているかわからない」っていう感じかもしれませんけれども(笑)。でも私、大まじめにやるんです。なぜかというと、先ほどの「構造化することなんだよ」っていうことがわかっていないと、「意味がわからない」という反応になるからです。
でも先ほどの構造って話が理解できていると、パンダを因数分解できるんですよ。例えばですけども(スライドを切り替えて)……みたいな感じ。もちろん、正解はありません。柔軟な発想でいろいろな分解ができる。これが因数分解なんですね。これは実際の企業の研修の時に、参加者の方々が答えてくれた内容です。どうですか。どれも間違っていないですよね。

ある女性の方が、おっしゃいました。「パンダなんて、かわいいの極地じゃないですか! パンダはかわいいでできているんです! だからもう、パンダの因数分解は、これ(かわいい×かわいい)なんです!」みたいな。いや、「そのとおりだなぁ」と、思いましたもん。パンダは「かわいい」でできているんですね。なるほど。
「片付けを因数分解してください」
今日も時間があれば実際にみなさんに考えてみてもらいたいところですが。こんなものもエクササイズとして非常におもしろいですね。「片付けを因数分解してください」。みなさん、もし実際にこれをエクササイズとしてやる立場だとしたら、どのような因数分解をなさいますか?
もちろん、正解なんかないよね。いろんな答えがあると思います。例えば片付けっていうのは、どういう要素で成り立っているか。シンプルですね。私は「捨てると残す」にしました。確かにそうですよね。片付けをしている時って「これは捨てます」「これは残します」って分けている気がします。
だから片付けっていうのは、捨てると残すに分ける。その足し算でできていますね。極めて当たり前なことかもしれません。これで終わっちゃうと「当たり前じゃないか!」って、つまらないと思います。なので、もう少しだけ因数分解をしてみました。「残すって、何と何でできているんだろうな?」と考えてみたんです。
もちろん、みなさんと私は答えが違うと思います。違ってもかまわないんです。私の場合は「整理という概念と、収納という概念の2つの組み合わせかな?」と、いったん考えてみました。やはり整理をしないと、残すものを決められないですからね。収納するところ、収めるところがないと残せないからね。もっと言ってしまうと、残すものが決まらないと、捨てるものも決まらないかなというふうに思ったり。
因数分解によって成功の道筋をさぐる
だから整理することによって、捨てるものが決まる。収納することによって、捨てるものが決まる。私はこう捉えてみました。もしかしたら、人によっては「この矢印は逆」という認識を持つかもしれません。もちろん、それでもかまわないんです。あくまでも私の考え方です。ということは、この片付けにおける本質。
もっとも重要なものは何かっていうと、私は「捨てる」という言葉じゃなくて「整理と収納」。この2つがもっとも重要な言葉であろうと理解をします。まぁだから実際に本屋さんにいくと「整理術」とか「収納法」みたいなコンテンツがたくさんあるわけですよね。みなさんは、これをどのように感じられるでしょうか? もちろんこれは人それぞれなんですね。
お伝えしたいのは、片付けを因数分解するというのは、こういうこと。こんな考え方をすることによって「片付けに必要なものは何?」「何がどうなれば、片付けはうまくいく? うまくいかない?」。こういったことを見つけていくことができるんですね。
構造化が「何をどうすべきか」の第一歩
今、私は「何がどうなったら、うまくいきますか?」「何をどうしたら、うまくいかないんですかね?」っていう話をしていますよね。みなさんにはもう伝わっていると思いますが。どうでしょう? ものを考える時、マーケティングをする時、絶対に必要なことかなと思うんですよね。だから理央さんは私のことを呼んだのかなと勝手に思っています(笑)。
さぁ、今「マーケティング」という言葉をちょっと使いました。ここまでの内容は、私の専門のビジネス数学、数学的な思考というもののご紹介で、「マーケティングの話だったね」とはならないかなと思います。理央さんのセミナーですから、少しだけマーケティングの文脈に移して終了したいと思います。
マーケターという文脈で因数分解をどういう時に使うかっていうと、やはりデータ活用、数字を見る時に使うことになると思います。もうここはみなさん、異論はないんじゃないでしょうか。おそらく、全員そういう認識でこの場に参加されていると思います。
まさか、パンダを因数分解するとは思いませんよね(笑)。ということは、我々はデータから示唆を導くことになりますよね。