数字から何を読み解くのか
顧客満足度90パーセントという数字を見た時に「あぁ、90パーセントなんだ」で終わるわけにはいかないわけですね。その90パーセントという数字から示唆を導く、メッセージを読み解くわけですよね。それがマーケターの仕事。ということはですね、そのデータ、ここでは「数字」と表現しましょうか。数字の構造や増える・減る、増減のメカニズムを把握しないといけないですよね。

はい、もう前半の内容とつながったと思います。なぜ私が前半で「構造」なんて言葉を使ったのか。だから、マーケターにとって因数分解はとても重要なこと、必要なことなんだということになると思います。
あと5分ぐらいで終わりになると思います。みなさん、もうちょっとだけご辛抱くださいね。理央さんはよく「売れる仕組み」っていう言葉を使うんですね。ふだんからおしゃべりをするので、私は理央さんの言葉をたくさん耳にしてきました。私ね、専門家の方のしゃべっている言葉をちゃんと聞いているんですよね(笑)。
なんでかっていうと、その専門家の方がたくさん使う言葉は、それが本質だからなんですよ。少なくとも私はそう思っています。だから今まで理央さんとお話してきたことがありますけれども、理央さんは、どういう言葉、フレーズをたくさんしゃべっているかなって、すごく気にしてお話を聞くんですね。
「売れるって何?」
実際、今回このセミナーの告知のランディングページの中にも「売れる仕組み」っていう言葉が入っていました。だから、それを見た時に「あぁ、やはりね」って思いました(笑)。でもそうですよね。マーケティングですからね。「売れる仕組みを作ることがマーケターの仕事だよ」っておっしゃりたいんだと思います。
さぁ、売れる仕組みを作ることがマーケティングの仕事。ということは、 「売れる」っていう言葉が大事よね。売れるって何? 売上ということなのかな? 売上って何? まぁ当然、数字よね。「どうやったら増えるの?」「どうやったら減るの?」「何をしたら増えるの?」「何をしたら減るの?」
「売上という数字の増減の仕組みを明らかにできない人は、マーケティングができないよね」っていうことになりませんか? 理央さんはそういうことをおっしゃりたいんじゃないかなと。「わかってほしい」と思っているんじゃないかなと思います。違ったらごめんなさい(笑)。
売上高を因数分解してみる
さぁ、最後に少しだけ、それっぽいものをみなさんにお見せして、共通認識を持っておしまいにしましょう。先ほど売上という言葉を使ったので、私たちにとって一番わかりやすいマーケティングに必要な数字を事例にしたいと思います。これは誰でもよく理解できることだと思いますが。売上高というものを因数分解すると、こんな感じですよね。
あくまでも一例です。企業によって、業界によって、この分解の仕方というものは、さまざまだと思います。まぁ、あくまでも一例。ターゲットの数に対して接触率、商談率、受注率、単価みたいな。こういうふうに分けてみました。
これがみなさんの認識している因数分解だと思われます。もう1歩だけ踏み込みましょう。せっかく因数分解をしたんだったら、必ず定数と変数に分けることまでしてください。私も現場でこういうテーマの指導をしていますけど「そこにいかない方がけっこう多いな」という感触です。
因数分解って聞くと「この何×何×何×何までが因数分解ですよね」って終わっちゃうんですよね。そのあとの、この変数・定数という視点が欠けている方、知らない方が多いと思います。
分析には変数・定数の視点が不可欠
例えば今回のケース。完全なる定数を単価だとしましょう。「いやぁ、もううちの会社は社長が単価を決めているんで変えられないんです」みたいなこともあると思うんですよね(笑)。だとすれば、どんなにがんばっても変えられないので、これが定数です。そこは考えてもしょうがない。
さぁ、「定数と変数に分けなさい」と申し上げました。ということは、残りが変数になります。ここで少しだけ現実的な視点を持ち込みます。変数、つまり変えられるっちゃ変えられるんだけども、実際のところはほぼ変えられないものもあると思うんです。
変数だけど、事実上は変えられない。これを「変数だけど事実上の定数」と表現しています。量と質に分けたのは、私は「量を増やして、なおかつ同時に質も上げることは不可能だ」という価値観を持っているので、分けています。ここはみなさんと考えが違うかもしれません。
今回のこのケースでは、量はターゲット数、対象者数。100人、300人、300社、1,000社みたいな感じですね。
注力すべき要素を見つけることができる
〇〇率というのは、私はクオリティを表す数字だと認識しているので、質と表現しました。営業利益は量ですけれども、営業利益率は質です。まぁ、そんなイメージ。変数なんだけれども、事実上は定数なのであれば、あまりこのBとかCって、勝負しても意味がないわけですね。
だとすると、どこが勝負なのかというと「完全なる変数は商談率しかないよね」となるかと思います。だから商談率アップが唯一の改善策なら、マーケターはどうやって商談率を上げていきましょうか。「商談率が落ちているよね」というところを問題視して、施策を考えていくことになろうかと思います。

極めて、極めてシンプルな例。誰でもわかる内容だと思うんですけれども。これが、因数分解をしていくことだと私は思います。みなさんは、どのように思われたでしょうか?
因数分解に不可欠な3つのポイント
最後になりますけれども。このような内容を私は企業の研修で、具体的な3つのステップで指導しています。もし、今日の内容を職場で、部下とか、新人さんとかに指導する立場の方で、実践してほしいなって思っている方がいたら、次の3つのステップ、3つの質問を指導してあげてください。
因数分解をするには、本質的には3つの行為が必要。まず1番目は、その数字の構造を明らかにすること。多くの人は、この1番目だけで認識が止まっています。そうじゃなくて、2番目までちゃんと進むこと。その構造において、変数と定数は何? ここまでやってください。
そして最後。「それで何が結論なの?」「具体的に何するの?」ってことね。ちょっとわかりにくかったら、先ほどの、この「商談率アップが唯一の改善策です」という、この話に戻っていただければ言っていることはおわかりいただけるかと思います。最終的に何をするのかっていうところが、明確になったよね。これを実践する、徹底するということが、マーケターに必要な因数分解の思考であろうと思います。

そろそろお時間でございますので、理央さんにお返ししようと思うのですが。「おわりに」と書きましたが、冒頭で自己紹介をさせていただいたように、私は教育文脈の人間、教育者でございますので、今日はせっかくですから、お目にかかったみなさんに1つだけ。
「事例」は感覚を麻痺させる
このようなビジネスセミナーにね、ご参加されるようなみなさんだからこそお伝えするんですけど。「事例」というものについてです。
事例を知ることは、とても大事だと思います。本当にそう思っていますよ。しかし「事例を知っただけで、わかった気分になっちゃう人が多いな」というのが、私の率直な印象です。
みなさんとは違うかもしれませんが「自ら成功・失敗をして、ようやく『わかった』ってなるんじゃないかなぁ」っていうのが、私の考えなんですよね。
だから私は「事例は麻薬」って思っているんです(笑)。理央さん、笑っているけど(笑)。必要なものなんですよ。ものすごく必要なもの、大事なものなんです。だけど事例って、私たちビジネスパーソンを、ある意味で麻痺させるんです。
だから、くれぐれも気をつけていただきたいなと思う次第です。このようなビジネスセミナーに、わざわざ時間とお金を使って参加するみなさんだからこそ、最後に余計なお世話だったかもしれませんが、お伝えしてみました。だから、今日のこの私の短いセミナーの時間も、事例がとても少なかったはずです(笑)。
事例に惑わされずに思考力を身につける
「もっと事例を聞きたいな」っていうのが、たぶんみなさんの感想だったはずなんです。私はあえて、意図的に事例は最小限にしているんですね。意味がないからです。
私は『「数学的」な仕事術大全』という著書を発表しています。累計(の著作)はもう35冊ぐらいになるんですけど。最近の本としては、これが一番、みなさんにおすすめできるものかなと思います。サブタイトルとして「~成果を出し続ける人が必ずやっている~」と、書いてあります。実は、この本も事例がとても少ないんです。理由は、申し上げたとおりですね。
サブタイトルに「必ずやっている」って、書いてありますよね。だからもう、やっているかどうか。何をやればいいのかっていうことだけが大事だという価値観なので。こういうサブタイトルの付いた本をたくさん、世の中に発表しております。まぁ、もしね、このような話に共感をいただける方がいらっしゃったら、お役に立てるかもしれないので。
やっていることをご説明していますから。ぜひとも、お読みいただいては、いかがでしょうか。ということで、30分弱ぐらいですかね。お時間をいただいてしまったのかな? みなさん、長時間ありがとうございます。このあと理央さんとおしゃべりしますので、ぜひ楽しんでください。理央さん、お返しします。