英語の特徴は「形容詞をたくさん使う」こと
オールライト:でもChatGPTでは、これをやってくれるんですね。今までのDeepLなどの翻訳だったら、もっと日本語らしい英語ができていたんです。それがAIとの最大の違いです。(AIは)日本語らしい英語ではない。それを勝手にやってくれる。では私たちはそれを読んでいれば、勝手に学習して英語の型が作れるかというと、なかなかそうはいきません。
だから1回意識的に「英語の型はこうだよね」「日本語の型はこうだよね」ということを見ていくことが、大事だと思うんです。
2番目(の文)は(日本語だと)「エネルギーが補給され、集中力や代謝がアップします」。アップという英語を使っちゃっています。だけど実際に英語には(アップは)現れてこない(笑)。「せっかくカタカナがあるのに!」という感じですよね。
次も「朝に食べることで、その日のリズムが整います」、ここではhealthy dailyと形容詞が2個も並んでいます。
(スライドの)太字の部分が「これはなんなんだ?」と気づいている方もいるかもしれないですね。最後のproper morningですが、properを辞書で引くと「適切な」と出てくる。「適切な」という単語は日本語にはないんだけど、出てくるんですね。
英語の特徴は形容詞をたくさん使うこと。形容詞に依存することで、圧縮する言い方をします。圧縮とは何なのかは、次に説明しますね。
日本語の特徴は、形容詞を使わない代わりに、動詞の連体形を使います。動詞を名詞のかたちに変えた状態で、単語と単語が癒着しているので、そのままけっこうダラダラと文章が書けちゃうんですね。
だけど英語は1単語、1単語が分かれているので、ギュッギュッと圧縮していく。圧縮が得意なのが形容詞です。圧縮とはこういうことです。
形容詞は「器」
オールライト:これ(スライド)はこの本(『英文法は絵に描きやすいルールでできている』)の526ページに描いてある絵です。形容詞は器だと思ってください。形容詞は、形がある器に具(具体)をそのまま入れて、ギュッとしてくれます。英語はこれがすごく得意なんですね。

実はこれに目をつけたのには、きっかけがありました。ずいぶん前に友だちが5、6歳の子を𠮟っていました。この男の子は妹を叩いてしまったんですね。その時のセリフを全部書いたものです。

赤(スライド)が形容詞です。これだけを見たら「あ、なんか意味はわかる」となるかもしれないですけど。辞書で引いてみると、unacceptableとは「受容できない」、unreasonableも「非合理な」「理不尽な」です。
「Be more sensible」は「もっとsensibleになりなさい」と言っています。(辞書では)「思慮深い」と出てくると思います。つまり英語から日本語には訳せるんだけど、子どもにこんな日本語は使わないですよね。学校や英会話のレッスンでは、このギャップを埋めてくれない。それを埋めるのが仕事ではないから。
だから大人が英語学習をする時、実はそこを埋めることに一番の楽しさがあるんじゃないかなと思うんです。さて、こう言われた子どもはなんて言ったかというと、「That's not fair!」と答えました。fairは、みんな知っていますよね? カタカナでも使います。
辞書を引くと「公平」と書いてあります。でも5歳の子どもが、公平なんて使うかどうか。もし子どもが言ってきたら、ちょっと怖いかもしれない。うんちくを垂れる子どもになっちゃいそうですね。これもギャップがあります。
英語は日本語よりも形容詞の数が倍くらい多い
オールライト:私たちは英語の形容詞の器を持っていない。みなさんの英語の悩みは「ボキャブラリーが……」「単語がなかなか覚えられない」とかですよね。それは、そうなんですよ。器がないところに一生懸命入れようとしているので。
もう1個、形容詞が苦手な理由があります。(スライドの)Gradableとは何を言っているのか。グレードとはグレードアップなどの程度のことです。smallはvery smallと言って、もっと程度を上げることができます。なんでもveryをつければいいんです。

very hotのように「すごく暑いね」「暑いね」「すごく大きいね」「大きいね」で「いいじゃん」と私たちは思うじゃないですか。ただ英語にはもう1段階あるんですね。very bigにはenormous(巨大な)という単語がある。very smallにはtiny(非常に小さい)という新たな単語があります。
つまり英語は形容詞の数が倍くらい多いんですよ。別に「terribleと言わなくても、very badでいいでしょ」でもいいんですが、それだとそれ以上の進歩はない。
「ボキャブラリーが足りないんじゃないか」「私はネイティブが使っている単語を使えていないんじゃないか」となる。どうしてもぎこちない感じになります。先ほどの掛け軸に西洋画が入っているような違和感を、ずっと持ったままになっちゃうんですね。
ちなみに、これらの単語はUngradable(比較級や最上級がない)というカテゴリです。すでにveryが入っている単語なので、「veryをつけることができない」という意味です。だから「How are you?」と聞かれて「I'm very fine」と言うことはできない。
fineは「良くも悪くもないよ」なので、そこにveryをつけることはできないんです。そういうカテゴリもあります。英語はダブルであるんですよ。