あるイラストを英語で説明してみると…
オールライト:では、ちょっとみなさんにやっていただきたいことがあります。これからイラストをお見せします。それを5秒見ていただきます。5秒で、いったん消しますね。次に「何をしてほしいか」の指示をスライドに出します。まずはあまり深読みしないで、ピュアな気持ちで見てください。

いきます! 5、4、3、2、1……、これが指示です。
「英語で」と書いてありますけど、英語があまり得意じゃない方は日本語だけでもいいです。頭の中で考えても、何かに書いてもOKです。ちょっと前の方に聞いちゃってもいいですか? どうでしょう?
参加者1:英語は「A cat cooks」。
オールライト:ありがとうございます。日本語はどうですか?
参加者1:「猫が料理をしている」。
オールライト:おー! なるほど。ありがとうございます。これはみなさん、いろいろでおもしろい。では他の方、日本語はどうですか?
参加者2:「目玉焼きがあります」。
オールライト:そこから来た(笑)。英語は?
参加者2:「There is an egg」。
オールライト:egg、なるほど。ありがとうございます。どうですか?
参加者3:「キティちゃんに似た猫が、目玉焼きを作っている」。
オールライト:キティちゃんに似た猫(笑)。なるほど、それがすぐに出てくるんですね、おもしろいですね。英語は?
参加者3:英語は「A cat like KITTY is cooking a fried egg」。
オールライト:あぁ、なるほど。ありがとうございます。おもしろいですね。一応指示が「短い一文で」なんですね。
参加者3:あー、そっかそっか。
オールライト:あ、でもどんなかたちでもいいんです。日本語でも英語でもいろいろな人とやってみた時「猫ちゃんクッキング」と言った人がいて、「この指示でそれを言う?」という……。
(会場笑)
日本語は「単数か複数か」があいまい
オールライト:それは私の妹なんですけれども、「そうくるか」という感じですよね。コアな答えとしては「猫が目玉焼きを焼いている」なんじゃないかなと。みなさんの中で「キッチンで」とか「台所で」と、すぐに浮かんで書いた方はいらっしゃいますか? 日本語のバージョンで言いたくなった方いる?
参加者4:英語で……。
オールライト:あ、英語で!? おぉー、けっこう「台所で」と入れる方は多いんですよ。では「猫が目玉焼きを焼いている」という日本語から、先ほどの絵に還元できますか?
日本語だったら、猫が1匹なのか、2匹なのかは表示していないんですね。ただ普通は1匹を描きますよね。でも文法的には2匹でも、何匹でもいい。
目玉焼きも「何個だったでしょうか?」というと、だいたい覚えていますよね? でも文法的に言うと、2個でも、3個でもいいんです。あと英語話者で「キッチンで」と言う人は、まずいない。でも日本人だと、日本語でも英語でも入れる人はいるんですね。
日本語は「こう見えてますよ!」というわけではなくて、「こう見えているような言語化ですよね」という考え方です。ちょっとぼやけている感じです。ただ全体はちゃんと入っている。どこにいるか、だいたいわかって、一気に背景まで全部が入ってくる感じです。
ただ単数か、複数かは明示しないので、そのへんの輪郭はちょっとぼやけます。これを英語話者で実験すると、だいたいこう言います。何パターンかあるんですけど、「frying」と言う人が圧倒的に多いです。
makingでもいいんですけど、最初に「making」と言った人に「じゃあ、fryingは?」と聞くと、「あ、そっちのほうがいいわ」という。これが一番自然みたいですね。
すると、こうやって見えてませんか? まずは輪郭が「A cat」、英語はaから始めなきゃいけないんですね。つまり輪郭から見ている。それがdogか、catか、personかは、まだわからなくていいんです。とにかく、aという輪郭から入るんですね。
次にfryingが来る。私たちにとっては、fryだとアジフライやエビフライのような揚げ物ですけど、普通(英語で)fryと言ったらフライパンなので、焼くことですね。
ちなみに揚げ物は、正式には「deep fried」と言います。次に「an egg」ですよ。また、anが来ているので、an appleかもしれないですね。冠詞の次に物が来るので、冠詞だけではまだわからない。
日本語と英語には情報処理の違いがある
オールライト:(日本語と英語には)この情報処理の違いがあるんじゃないかなと思っています。それを視覚的に表したのが、この絵(スライド)です。

どっちがいいとか、悪いとかはまったくないです。どっちも得意な分野、不得意な分野があると思うんです。ただ日本語の認知の仕方は、ある分野では世界的に驚かれている。
フォトグラフィー業界では、ボケというテクニックがあるんですね。英語の辞書にも載っています。これはボケるという動詞(bokeh)から来ているんですね。ボケエフェクトと言うみたいです。
これが1990年代に「新しい概念だ!」「新しいテクニックだ!」という驚きとともに、なぜ西洋文化圏に来たのか……。(当時)西洋のフォトグラフィーはフォーカスを決めて、そこはクッキリ、あとはボカす感じだったみたいですね。
つまり認知の仕方は言語によって違う。言語論には、これが認知言語学のイチ論としてあるわけです。こうやって見てみると、確かに言葉と視覚は結びついているかもなと思えませんか?