接客業・営業職で「他人の価値観」に触れる力を養う
木下:次、2つ目は「接客業もしくは営業職っていうのは経験しておけ」です。社会人になっちゃっているんだとすると、なかなか難しいかもしれませんが。土日とかでもいいので、Timeeとかスポットバイトサービスを使って、接客業を経験したほうがいいと思います。
社会の中で生きていこうとすると、たった1人で無人島で暮らしていくわけじゃないんですよ。社会のたくさんの人たちの中で、生きていく。その中でやっていくということなので、たくさんの人たちの価値観を理解しているかがすごく勝負になってくるんですね。こういう人とは話が合うけれど、こういう人とは話が合わないというプライベートな感覚では、仕事はやっていけないんですね。
いろんな人の価値観を知っていくことが、すごく大事になってきます。もちろんお客さまに対してもそうです。いろんなお客さまがいらっしゃるので、そのお客さまの価値観を知っていないと対応もできませんし、同じ職場、取引先にしてもそうですが、いろんな価値観の人がいるというところに対して、相手の価値観に基づいてやっていかないといけないというところですね。
「理解する姿勢」がない限り仕事では通用しない
木下:例えば、Z世代と言われる人たちの中で「こんなもの、やっても無駄じゃないですか!」みたいな感じのことを言ったりする人がいると思うんですけども。「じゃあ、昭和世代の人・平成世代の人は、なぜそれをやっているんだろう? という、価値観をちゃんと理解するスタンスを持っていますか?」って思うんですね。
「あの人たち、バカなんですよ」の一言で本当に終わらせるほど、あなたは頭がいいんですか? という話なんですね。そうするには理由があったりとか、価値観があったりするんですね。他人の価値観を理解する上では、自分と合わない価値観を持つ人を知ることが大事になって、効率的に自分と違う価値観の人と会えるのが、接客業とかなんですよ。
お客さまは、お金を払ってくださっているので、わがままなスタンスです。つまり自分の価値観を押し付けてくるんですね。職場とかだったらみんなも、気を遣いながらやっていたりしますけれども。お客さまは、そんなに気を遣ってはくださらないので、自分の価値観をバンバン押し付けてきます。例えば接客をしている中で「オーダーをしたら5分以内に来るのが普通だろう!」みたいな、その人の普通を言ってきたりします。
そういう感じで、いろんな人の価値観に触れた時に「この人はなぜこういう価値観になってきたのかな?」ということを理解していくことが大事になってきます。そういうことがわかることによって、いろんな人とうまくやっていくということができます。
相手の「評価基準」を知ることが人間関係を深める鍵
木下:例えば私は、外部の取引先の方と仕事をする時は、相手の方の会社での評価指標を知るようにしているんですね。多くの人は、評価されている立場ですよね。評価されるための仕事をしています。それによって価値観も変わってくるんですよ。
例えば、配達のA社とB社があるとした時に、A社の評価指標は届け率です。100件中100件をちゃんと届けたら100パーセントと評価されます。100件中90件だったら90パーセントと評価をされます。
A社の宅配便のドライバーは、確実に荷物を届けようとしています。一方でB社の評価指標は、何件届けたかなんですね。130件中110件届けた場合、100件中100件届けた人よりも、130件中110件届けた人のほうが「件数が多いよね」ということで評価が高かったりするんですよね。こうなってくると、この人は、いかに速く届けるかとか、いかに効率良く届けるかにフォーカスします。
こういう会社って、だいたい値段が安いんですよ。その代わり、届かない率も一定の割合であったりします。物を確実に届けてほしい時はA社、これはちょっと届くのが遅くなってもいいとか、不備があってもいいという場合は、コストが安いB社に頼むみたいな感じで、その会社の評価指標を理解していきながら、お付き合いしていくんですね。

営業職だったら、営業職単位で僕は見ています。「この営業の人は、こういう評価指標でやっているから、今回これをおすすめしているんだな」とか。例えば、家電量販店ではある程度店員さんが値引きの権限を持っていて交渉すると、ちょっと安くしてくださったりすると思うんですけども。
店員さんには、だいたい売上ノルマがあります。各店員さんの中で値引きの決裁権をだいたい5パーセントから10パーセントぐらい持っているんですね。5パーセントから10パーセントぐらいまでだったら、自分の権限でやってもよくて、それ以上の場合は、店長に確認しないといけないという感じになっています。
家電量販店で一番値引きがやりやすいのがいつかというと、月末の最終日曜日の、雨の日。売上目標はだいたいがんばったら達成できる目標にするので、ちょっと厳しめに設定します。月末に何とかがんばって達成するんですが、家電量販店は土日で売上が上がっていきますので、最後の土日が勝負なんですね。
最後の日曜日に雨が降ったら、けっこうキツイんですよ。この時が一番値引きが利きやすいんです。本人の値引き決定権は10パーセントまでしかなかったとしても「ここまで安くなったら、いけるんだけどなぁ……」と言ったら「わかりました。店長に相談してきます」みたいな。
それで店員さんが店長のところに行って「すみません、このお客さまが『10パーセント以上引いてくれ』と言っています。僕これいったら目標達成するんですけど、なんとかならないですか?」って言うと、店長さんも「あぁ、そうか。ちょっとここまでいこうか」みたいな感じになったりします。
取引先との信頼は「評価されるポイントを押さえる」ことで築ける
木下:僕の場合、AでもBでもどっちでもいい場合は、相手の評価が上がるような仕事の見方をします。「君って、これのどっちのほうが評価が上がるの?」と聞いて「Bです」(と言われたら)「あぁ、じゃあBでいいよ」とか。何か発注することを決めようとする中で「もうちょっと考えようかなぁ。でも、今発注してもいいかなぁ」と思った時に「今月の目標って、どんな状態?」って相手に聞くんですよ(笑)。
「達成しました」と言われたら「じゃあ来月にしたほうがいいよね」って言って来月に発注するし、「今月けっこう苦しいんです」と言われたら、「これを発注したらけっこううれしい?」と聞いてみる。「うれしいです」と言われたら、「検討しきれていないけど、月明けでキャンセルもありだったら今発注していいよ」という感じで、やってあげます。
そうすると、人間関係もできますよね。こっちからしたら別に損はないわけです。人と人とお付き合いしていく中で、良い関係を作っていく時に大事なことって、相手の価値観を知ること。もっと言うと、相手の会社の評価指標を知ること。これによって、良い人間関係を作っていったり、いろんな人と対応できていくかたちになっていく感じですね。なので、そのために接客業とか営業職とか、お客さまに接する仕事をぜひ経験してみてください。
対話を重ねて価値観の背景を知る
——20代で接客業を経験しました。飲食店だとして、お客さまが「料理が来るのが遅い!」と怒り出した。木下社長だったら、この人はどういう価値観を持っているんだって掘り下げますか?
木下:「この人の早い・遅いって、何なんだろう?」と思います。自分としては遅いと思っていないんだけれども、お客さまからすると遅いのだとすると、お客さまにちょっと恐る恐る「すみません、今回ちょっと遅くて」っていう感じで「普通のお店だったらもっと早いですよね」とか「5分ぐらいで来たりしますよね」(と言ってみる)。
「5分っていうことはないけど、10分はかかり過ぎだよね」と言われたら、5分から10分ぐらいなんだなと判断して、「すみませんでした」と言った後に、そこからは雑談みたいな感じで「ふだんは、どんなところに行っていらっしゃるんですか?」と聞いてみる。「ふだんは、こんなお店に行ってる」っと言われたら、「ああいうお店に行っていらっしゃる方っていうのは、だいたいこれぐらいが普通やと思ってはるんやな」と考える。(司会者に)次からどうする?
——5分で提供できるようにがんばるか、注文された時に「この料理は、こういう理由があるから5分以上お時間いただいていますが、お待ちいただけますか?」って、一言声をかけますかね。
木下:そう。今後、別のお客さまが来た時も「こちらのお料理は10分ぐらいかかりますが、よろしいですか?」って聞きますよね。そしたら、もともと「遅いな」と思っていた人は「それならいいよ、別のを頼むよ」ってなってくるよね。こうやって成長していく感じ。
フォロワー1万人を目指せばマーケティング思考が鍛えられる
木下:3つ目ですね。「SNSで1万人のフォロワーを作ってみよう」ですね。SNSをやっていらっしゃる方は多いと思うんですけども。1万人のフォロワーを作るところまでやっている人は少ないと思います。1万人のフォロワーは作ろうとしないと作れないです。よほどのことがない限り、自然に1万人にはならないんですね。
たまたま投稿したものがバズって、インプレッションが増えることはあります。でも、それで別にフォロワーは増えないんですね。SNSで1万人のフォロワーを作ろうとした時に、最初はよくわからないので自分がおもしろいと思うことを発信します。最初はぜんぜん伸びません。
じゃあ「自分がどんなところをフォローしているか?」もしくは「1万人以上のフォロワーがいる人はどんなことを言っているか?」というところを見た時に、自分が言いたいことを言っているんじゃなくて、人が知りたいことを言っているなということに気づくと思います。
自分が好きなことではなくフォロワーが知りたいことを伝える
木下:1万人のフォロワーを作ろうとする場合、自分の好きなことを発信してフォロワーを作るんじゃなくて。1万人の人が知りたいことを伝えることで、1万人のフォロワーができるということなんですね。視点を全部変えましょう。先ほどの接客業の経験も同じです。自分の基準を相手に押しつけるんじゃなくて、相手の基準を理解していくということですね。SNSで1万人のフォロワーを集めるんだったら「どんなテーマだったら1万人の人が興味を持ってくれるか」を考えるところからスタートしていきます。
社会の中で生きていくというのは、あなたが持っているものをみんなに認めてもらうことではなくて、みんなが欲しがっているものを提供すること。みなさん自身もいろんなところをフォローをしていると思います。それは、みなさんが知りたい内容があったからフォローしているんですよね。
なので、視点をまず変えないといけないというところですね。例えば、今このYouTubeのチャンネルもそうなんですが、最初は探り探りやっているんですね。
「我々が発信できる内容って、どういう情報だろう?」と、出していきます。いろいろ出していきながら「こういう情報だったら再生はこれぐらいされるな。登録者がこれぐらい増えるな」「こういう情報は、ぜんぜん再生されないな」とか「何歳ぐらいの人が見ているんだろう」とか、もしくは「こういう人たちは他にどういうものを見ているんだろう」ということを見る中で、「みんなはどういう情報を知りたいんだろう」というところをずっと考えていきながらテーマを作っていって、今出していっている状態なんですね。

今回のテーマも「たぶん、みなさんが知りたいだろう」と想定して、20代の方をターゲットにして、20代の方が知りたいであろうテーマで作っています。これでね20代の人が見てなかったら、けっこうショックなんですけども(笑)。SNSで1万人のフォロワーを作ろうとする場合、マーケティングの視点がないと無理なんですよ。
マーケティングの視点は、自分の観点じゃなくて、相手の視点から物事を見る。相手の人がどういうことを考えていて、どうやったらこの相手の人の目に映るのかという観点ですね。そこに合わせて1万人のフォロワーを作っていくということです。ぜひ、やってみてください。
フォロワー数とビジネスの関係を分けて考える戦略思考
——今回の質問者が「いつか成功したいという思いがある」と書いてくださっているんですけど、どんなジャンルがいいとかありますか?
木下:10回に1回の法則でやってもらいたいんですが、最初から1万人のフォロワーを見つけたやつで稼ぐのは、たぶん無理だと思います(笑)。ビジネスにつながるSNSのアカウントと、フォロワーが増えるSNSのアカウントは違います。フォロワーが増えることを第一優先にしていこうとすると、エンタメに寄っていったほうがいいんですよね。
そっちに寄っていったほうがフォロワー数は増えるんですが、これはビジネスにはつながらないんですよ。ただ、そこまでいった段階で、いったん、どういうものが伸びる・伸びないのかがわかってきます。その経験値をもとに今度はビジネスにつながりそうなテーマで、いかに伸ばすかを考えていきます。
最初のやつが1万人いったら次のやつは、それをもとにして、ちょっとビジネス寄りのやつを運用する。5,000人ぐらいまでしかフォロワーはいかないかもしれませんが、そこでちゃんと採算が合うようにやっていくという感じですね。
メルカリで10万円稼ぐとお金の本質が見えてくる
木下:最後に、4つ目です。「メルカリで10万円稼げ」。お客さまから直接お金をいただく経験をしている人って、ほぼいないと思うんですね。どこかのお店の店員さんだったとしても、それはあなたにお金をくれているんじゃなくて、お店に渡すお金をあなたが受け取っているだけです。
あなた自身は、誰かからまとめてお金をいただいています。お客さまから直接お金をいただくということをしてみてください。会社は、結局お客さまからお金をもらう装置になっていて、その装置の仕事をこなすのが、あなたの仕事になっています。
「お客さまからお金をいただく」ということが、どういうことなのかを、ぜひ自分自身で経験してみてください。そのためにメルカリで10万円稼いでほしいなと思っています。自分のいらないものを売るだけでは、10万円にならないと思うんですね。いらないものを売るだけで10万円になるんだったら、それはそれであまり意味がありません。
もうちょっと、設定を上げてほしいと思います。ちゃんと売っていこうとすると、どんなものが売れて、どんなものが売れないかが、たぶんわかると思うんですね。これがわかったら今度は自分で仕入れてみてください。
よく、ブックオフとかに行って100円の本を仕入れてきて、Amazonとかで1,000円で売ったりしている人がいると思います。ああいうことを、きっちりやってみてください。マーケティングの観点がないと絶対にできないんですね。まず、どんなものが売れるかというところと、どういうふうに表現する必要があるのか。同じものでも、売れているもの・売れていないものがありますよね。
いい例じゃないですが、私の本もヤフオクとかメルカリでズラーッと並んでいます。その中で売れているものもあれば、売れていないものもあるんですね。なんでかというと、写真とかの部分ですね。正直本は中身が全部一緒なんですが、商品の説明の部分だったりで売れる・売れないが変わってきます。1,000円で仕入れたものを1,000円で売っても意味がない。10万円の利益を出すためには、すごく頭を使わないといけません。
自分で考えてお金を稼ぐということを、ぜひ経験をしてみてください。結局会社は、それを大きな組織でやっているんですけども。その中で自分は「このパーツをやっているんだ」ということがわかると、自分がどういうふうに仕事をしていくべきかが見えてくるんですね。
「僕が今やっている仕事は、こういうふうにつながっていて、会社の利益につながっていくんだな」とわかっている状態とそうでない状態ではぜんぜん違ってきます。自分で実際にメルカリで10万円を稼ぐという経験を、ぜひしてみてもらいたいなと思っています。
人生の差は20代で決まる
——(質問者が)新社会人ということでしたが、けっこう土日でもやりやすいことがたくさんあったのかなと感じました。
木下:平日仕事をしているから「土日は遊ぶんだ!」と、遊んでもいいと思いますが、人によっては40代、50代になっても、20人の飲み会も仕切れない人もいるという部分で、20代のうちにどれだけ経験を積んでおくかが、あとでめちゃくちゃ重要になります。最初は我慢したほうがいいかなと思っています。
今日は、「20代のうちにやっておいたほうがいいこと」を4つ紹介しました。これを2026年からじゃなくて、2025年中に全部やってみてください。そこから、ちゃんとした社会人になってほしいなと思っています。50歳とかになって経験して、ようやくわかっても遅いわけですね。今のうちに経験しておくと、これがずっとあなたのこれからの社会人生活に役立っていきます。
ぜひ、これらを実践してもらいたいと思っています。「飲み会仕切った」とか「接客業の経験をした」とか「SNSでフォロワーが1万人を超えた」とか「メルカリで10万円稼げた」場合は、コメント欄でぜひ報告してください。成功者の集まりになるコメント欄が作れればいいなと思っていますので、ぜひチャレンジして結果もご報告してください。