【3行要約】
・「戦略思考」を持っていると思っていても、実際には「打ち手思考」に陥り、成果を最大化できていないビジネスパーソンが多く存在します。
・伊庭正康氏によれば、企業の約8割の人が打ち手思考の罠に陥り、やることを増やす思考になるため常に忙しく、成果も限定的になっています。
・戦略思考を身につけるには「捨てる思考」を習得し、チャンスを数字で把握して、Key Success Factorを特定する習慣を持つことが不可欠です。
あなたの思考は戦略思考か、打ち手思考か?
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。あなたは戦略思考でしょうか? それとも打ち手思考でしょうか? キャリアで圧倒的な差がつく、その思考法の違いを紹介していきます。
(画面を示して)メニューはこちらです。打ち手思考の人が陥る罠。そして戦略思考と打ち手思考の人の大きな差。そして最後に、誰もが戦略思考を簡単に身につけるためのテクニックを紹介していきます。楽しみにしていてください。
打ち手思考の人が陥る限界
では、さっそくいきましょう。まず打ち手思考の人が陥る限界。例えば、職場の戦略発表の場があったとしましょう。その時に発表者がこう言ったとします。「今期は110パーセントの対前年アップを目指します。具体的には半額施策を展開し、同時にSNS、YouTubeを展開することで、販促を強化していきます。これで110パーセントの実現を目指します」と。
この時に聞いているほうは「いや、それって戦略じゃないじゃん。打ち手じゃん」って思うんですよね。そこで質問が飛びます。「110パーセントって、普通にやればできる数字だぞ。もう少し上を目指せないのか?」と。
(その質問に対して発表者は)「いや、今考えられる範囲ではこれが限界です」と答えてしまうんでしょうね。これは打ち手思考の限界です。
戦略思考であればそうはなりにくいんですね。戦略発表の場で打ち手の話をしちゃうと評価を下げてしまい、「この人、大丈夫かな?」になっちゃうわけです。
でも、こういう人が全体の何割いると思います? 会社にもよりますが、私が見る限り、8割はこうなっています。だとしたら、今から(あなたは残りの)2割に入っていきましょう。
打ち手思考の人が陥る罠
打ち手思考の人が陥る罠は、こういうことです。成果を出すKey Success Factor、つまりKSFを絞れないので、成果が安定しません。結果的にやることを増やす思考なので、常に忙しいです。成果を出せたとしても想定内か、それ以下の成果なので「いやぁ、なんかイマイチだよね」になっちゃう。
でもがんばっているので、こうなっちゃうんですよ。「あの人、まじめにがんばるんだけれども、なんか物足りないよね」。これが周囲の評判です。「いい人だし、メンバーマネジメントもするし、チームに対してのケアもする。でも、なんか物足りないんだね」と。こういう人、いますよね。これは、打ち手思考になっているからです。
じゃあ何が必要なのか。「打ち手思考を打ち破っていきましょう!」ということなんですよね。
戦略の考え方
ここで、まずは戦略思考と打ち手思考の差を説明します。あなたはどちらでしょうか。
戦略、戦術、戦法。これは打ち手ですね。打ち手を使い分けて考えられているかどうかが大きなポイントです。
まず戦略とは、方向性を決め、選択と集中をすることと言われます。つまり、「これをやる、これを捨てる」(と決めること)。ここがまず大きなポイントです。何に集中し、何を捨てるのか。あなたの思考は捨てる思考になっているでしょうか。これがまず戦略で考えられる人の大きな差です。
セリフ例はこうなります。「〇〇の地域の市場で、Aという領域の製品分野においてシェアが今は30パーセントなので、これを1年以内に45パーセントまで引き上げたいと考えています。
そのために、取れていない領域がこれだけあります。この取れていない領域の要因を絞ったところ、値段で引っかかっているというケースがあります。ですので、第1弾としては低単価製品を投入することで、取り込めていないところを取り込むということを考えています。それ以外のニーズももちろんあるし、それ以外の対象になるお客さまもありますが、いったんそこをやるだけでも、対前年で言うと〇〇パーセント実現できます。なので、それでいったんやっていきたいと考えています」。
「質問です。それ以外はやらないんですか?」「今抱えているリソースと現実的な計画を考えた場合、このタイミングではこれで十分かと考えています」と。まぁ、こんな感じでしょうかね。
戦術の考え方
戦略の次に戦術というものもあります。選択と集中の戦略を決めたあとに、仕組みを作るんですね。まだ、戦法の話はしていませんよ? 仕組みを作るという話をしています。
「ですので、まずは9月に低単価製品の〇〇を投入します。料金はライバルであるα社より10パーセント、正確に言うと10ポイント低い数値を設定します。具体的にはA地域には直販部隊に、B地域は代理店部隊にやってもらうように、私のほうでマネジメントしていきます」。こんなイメージでしょうかね。仕組み作りの話をしていますよね。
戦略発表の場で時よりあるのが、「うちは営業が10人います。1人あたり月100万円売れるので、月に1,000万円売れます。そこに対して目標を5パーセント上乗せすることで……」というような説明をする方がいらっしゃいますね。
つまり、今のリソースを有効活用するような考え方。これはどちらかというと戦術なんですよね。こういうことじゃないんです。
戦法の考え方
次、打ち手にいきますね。戦法というのは、その戦術を実現するための具体的な手段を言います。
「低単価製品〇〇を投入し、料金はα社より10ポイント低い数値を設定します。直販と代理店部隊でマネジメントしていきます。具体的には……」の後ですね。「具体的には未経験の営業が多いので、成果を出せるように、スキルがなくても売れる営業の型化をします」と。
型作りをします。「具体的には、この営業ツールを1回、2回、3回訪問でやっていくというモデルを作ります。こうすることによって、生産性を上げていきます。加えて、半額施策もここで投入しますので、さらに未経験の営業でもやっていきやすくなります」と。これは具体的な打ち手ですよね。これを戦術に含める考え方ももちろんあるんですけれども、あえて打ち手と分けたほうが、仕組みと本当の打ち手が分けられますよね。
捨てることと、やるべきこと
どうでしょうか? あなたの発想はどこに近いですか? ですから戦略発表の場で、戦略を聞いているのに「営業のツールを作ります」とか「半額施策をやります」とかでは(回答として)物足りないということなんです。
戦略の思考になると、やることが減りそうですよね? そうなんですよ。私も20代の後半で戦略を学びました。「学んで良かったなぁ」って思いますよ。あれもこれもやる必要がない。「これさえやれば結果が出る」というような、自分なりの自信を持てるようになりました。
なぜ自信を持てるのか? 実は、このあと紹介する戦略思考の考え方を身につけたので、やるべきことが見えるようになったんですよ。
捨てることと、やるべきこと。この思考法、あなたのキャリア、あなたのパフォーマンス。もっと言うと、あなたの人生にも大きく影響する話かなと思いますので、最後にその戦略思考を身につけるための、私のおすすめ習慣を紹介していきます。