【3行要約】・1on1は広く実施されていますが、多くの上司が「どう質問すべきか」という表面的な技術に固執し、本質を見失っています。
・1on1支援の経験から見えてきた「1on1成功のピラミッド」では、スタンス(心構え)が土台となり、その上にスキルや進め方が積み上げられます。
・上司自身が1on1を体験することで理論と実感が結びつき、部下との対話が深まり、真に効果的な1on1が実現するのです。
前回の記事はこちら 効果的な1on1には上司の心構えが必要
森大幸氏:ここから、具体的にどうしたらいいのかですね。これまで、1on1の支援をさせていただいて、「ここがポイントなんじゃないか」ということがわかってきたところがあります。
それが、この「1on1成功のピラミッド」です。1on1を成功させるにあたって上司が満たしておくべき条件を整理をしてみたので、今日はこのピラミッドをぜひみなさんに持って帰っていただいて、できそうなことがあれば職場で試してみていただきたいなと思います。
これは何なのかと言うと、下から土台ができて、その上の階層が乗っかってきて、1on1が成功していきますよという構造です。
順番にお伝えしていくと、まずは上司の方のスタンス。1on1に臨む時の心構えがしっかりできている。その上にスキルです。どういう技術を持って接していくのかをしっかり習得していく。その上で進め方をご理解いただく。下の階層がないと、上の階層をやってもうまくいきませんよという話です。
例えば、「どういう質問をしたらいいですか?」「どうやったら話を聞けるようになりますか?」というご質問をよくいただくんですけど、これはお答えするのがすごく難しいなと思っていて。「こういう質問をしたらうまくいきます」といった、一問一答のような話じゃないんです。
上司が1on1の目的に共感しているのか
もちろん、「こうやったらうまくいく」というのが欲しいお気持ちもわかるんです。だけどそうじゃなくて、まずは1on1に臨む時のスタンスを上司の方自身が体感・理解いただかないと、いくら質問の仕方を学んでもうまくいかないんです。
だから、もしみなさんも今、会社の中で1on1をされているのであれば、このピラミッドの下の土台から「どうなっているのかな?」ということを振り返りながら聞いていただけるといい時間になると思います。1個1個、順番に説明していきます。
では、まずはスタンス、スキル、プロセスから。スタンスにおいて満たすべき条件は大きく2つあります。
1つ目が、上司が1on1の目的に対して理解、共感をしていることですね。2つ目が、上司が1on1に臨む時にどのような態度で部下に接するべきかを理解している。
まず(上司が)1on1の目的に対して理解、共感しているとはどういうことか。上司の方からすると、こんなモヤモヤを持ちがちです。「なんで1on1をやらなあかんねん」「別にふだんからコミュニケーションが取れているし」「なんでこんな、時間がないのに業務を増やすねん」という話ですね。
やはりこういう状況だと結局、カタチだけになっちゃう。「とりあえず、人事が言うから1on1をやったことにしておこうか」となると(笑)、その時間が良いものになるはずがないです。
あくまで経営目標の達成のための手段と理解する
じゃあ、どうするのかなんですけど、目的を明確にしましょうということですね。まずこれが重要。あくまで1on1は1つの手段でしかないので、そもそもどうして1on1をやる必要があるのかをちゃんと整理する。
それは会社の方向性、例えばパーパスとかビジョンみたいな方向性を実現していくための手段として1on1が必要なんだと、会社が向かっていくべき方向と(1on1を)ちゃんと結びつけて、上司の方に伝えて、腹落ちをしてもらう。
このプロセスがないと、「やる意味がわからん」ということになってしまいます。これが一番重要だと言っても過言ではないですね。あくまで、1on1は目的を達成するための手段だという話です。
さらに、「1on1を実施することでいつまでに何を目指すのかを明確にする」とあるんですけども。1on1をやったらすぐに部下が変わるとか、行動するようになるという、そんな簡単なものではありません。
例えば、「まずはトライアルとして、この数ヶ月間に2回やってみましょう」「まずは部下のふだん知らなかった一面が知れた」「こういうことをいったんゴールにしてみましょう」というふうに、期間とゴールを区切ってやる。
そういったゴール設定をしっかりしないと、「結局、1回やってみたけど、ぜんぜん変わらないし、時間を使うだけなんです」となってしまう。1on1は万能ではないし、目的があった上での手段。いつまでにどうなっているのかを握りながら進めていくことが重要ですね。
ですが、「じゃあ、この目的、ゴールがわかったらやってもらえるでしょうか?」。どうでしょうか? ここは取り扱い注意のところで、この「目的、ゴールを明確にする」は、ChatGPTに入れてもたぶん出てくるんじゃないかなと思うんですけど。