【3行要約】
・1on1ミーティングは近年、多くの企業で導入が進んでいますが、その本質は見落とされがちです。
・森大幸氏は「1on1は自分で考えることを促すためのコミュニケーション手法」と位置づけ、現代社会では創造性と自分の意志を持つことが人間の強みだと指摘します。
・効果的な1on1は部下主体のアプローチで振り返りと概念化のプロセスを支援し、一人ひとりに合った成長支援を行うことが求められます。
1on1は自主的に考える力を養うトレーニング
森大幸氏:今日は、部下が自ら考えるのを促すことが1on1のポイントだということをまずはお伝えさせてください。

「人間は考える葦である」という名言を引っ張ってきてみたんですけども、やはり自分が考えることが重要です。一昔前であれば、指示されたこと、与えられたことをやるのが大事な時代もあったかもしれません。

特に今はAIが出てきて、人間に残されるのは創造性、自分の意志を持って問いを立てて、自分で考えて成果を出していくこと。
もちろん人の力も借りながらになるんですけども、自分自身で問い、考えていくことの重要性は、みなさんもご同意いただけるかなと思います。
自分で考えることを促すためのコミュニケーションの手法として、1on1があると考えてください。もちろん、1対1で定期的に高頻度で話をする効果として考えると、お互いの関係性が向上していくこともあります。関係性を良くすることは、目的というより結果としてそうなるものだと捉えていただければと思います。
バイアスから脱するには第三者の意見が必要
じゃあ、この「考える」ことがポイントだとした時に、1人で考えるのはけっこう難しい。それにはいくつかの背景があるんですが、例えばバイアスの存在。さぁ、これ(スライドに「ルビンの壺」の絵を表示)は何に見えますか? ちょっと今日は問いを交えて、みなさんにも頭を働かせてもらえたらと思います。

これは有名な「ルビンの壺」ですね。壺にも見えるし、人の顔が向き合っているようにも見える。これをいったん壺に見てしまうと壺にしか見えなくなり、顔に見てしまうと顔にしか見えなくなるんですね。
これはふだん我々が、人と話をしたり仕事をしたりする中で常に起こっていることですね。人は自分のフィルターでモノを見てしまう、認知してしまう仕組みがある。
ですので、1人だけだと当然、ある見方に縛られたり、深く考えきれなかったり、視点が欠けてしまうことが起こります。物事を突き詰めて考える時に、1人だけじゃ難しい。「これは、こういう見方からしたらこうじゃないか?」と言ってくれる存在が必要です。
より深く考えるためのサポートが1on1
ほかにも、深く考えることは根気が要る。深く考えるとはどういうことか、「氷山モデル」をご紹介したいと思います。
起きている事実や事象は本当に表面でしかない。その背景には無数の原因とか理由があって、それが積み重なって目の前に見えている出来事があるということです。

「日々の仕事の振り返りが大事だ」と当たり前のように言われます。例えば何かうまくいかないことがあったとして、それは何があってうまくいかなかったのか、その背景にどんな考え方や感情が動いたのか、そんなことを1人で突き詰めて定期的に振り返るのは、やはり仕事で忙しい中ではなかなかできないですよね。
だとした時に、「じゃあ、どうしようか?」「何があったんだ?」と一緒に考えてくれる存在がいることで、自分の考えを深めて、もっと良くするためにどうするのかを考えられるんです。だから誰かと一緒に考えることが大事で、そのための1つの手段として、上司と部下の1on1があるということです。
評価面談は上司がリードし、1on1が部下が主体
(スライドを示して)これは、テニスのダブルスの場面なんですが。ある研修を受けていただいた方の言葉がすごく印象的だったので、この場面を出してみました。その方は「1on1をする部下は、対戦相手じゃなくてダブルスのパートナーの思いでやっている」ということをおっしゃっていたんです。
一緒になって未来に向かっていくということですね。「その人は、もしかしたら未来が見えていないかもしれない。相手の未来を打ち返すんじゃなくて、前を向いて一緒に考えるスタンスが大事なんです」と、おっしゃっていて、すごく印象的な言葉だなと思ったのでご紹介させていただきました。
「じゃあ、評価面談と何が違うんだ?」という質問をよくいただくんですけど、ポイントは目的ですね。(スライドの)左側が1on1ミーティング、右側が評価面談なんですが、1on1ミーティングは部下を動機づけし、自分で伸びていくことを支援するのが目的です。
ですので、どちらかというと部下が主体になって考えたいことを決めていく。もちろん企業にもよるんですけども、比較的高頻度で実施する。時間は30分から1時間ぐらい。一般的にはこういった内容です。