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【特別公開】「デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか」オーセンティックリーダーズ・アカデミアゲスト授業(全5記事)

かつての長時間労働→16時退社へ デンマーク「ビジネス効率性」6年連続1位の背景

【3行要約】
・デンマークはビジネス効率性で6年連続1位を獲得しているが、日本は51位と大きな差があります。
・デンマーク文化研究家の針貝有佳氏は、デンマーク人が「心の声を聴く」ことで先見性とスピード感を持ち、効率性を高めていると指摘。
・日本企業も「プライベートを大切にして仕事の成果を上げる」というデンマーク流の良い循環を取り入れることで、ビジネス効率性向上が期待できます。

『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』著者が登壇

針貝有佳氏(以下、針貝):では、さっそく始めさせていただきます。『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』という本をベースにお話しします。

コミュニケーションに関する本です。デンマークはビジネス効率性で6年連続1位になりました。そのデンマーク人のコミュニケーション方法、つまりプロジェクトをうまく進めるためのコツをお伝えできればと思います。よろしくお願いします。

まず自己紹介ですが、私はデンマーク文化研究家として活動しています。もともと日本の大学院でデンマークの労働市場政策を研究していました。その後デンマークに移住し、暮らしながら見えてきたことを日本に向けて15年間発信してきました。

発信のかたちはさまざまで、メディアでの記事や、今回のような授業形式での講演。さらに企業向けには商品開発や自治体の都市開発のために「デンマークからインスピレーションを得たい」という依頼が多く、そうした事例を紹介する活動もしています。

そして先ほどもご紹介いただいた『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』を、2023年11月に出版しました。これが私のデビュー作という形になります。タイトルの引きも強く(笑)、多くの方に関心を持っていただき、さまざまなメディアにも取り上げられました。

今回の本『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』は、今年3月下旬に出版した新刊です。前作が時間やマネジメント方法にフォーカスしていたとすれば、今回はコミュニケーションに焦点を当てた内容になっています。今日はこの新作をベースにお話しします。

レゴと自転車都市とコペンヒルに見るデンマークの工夫

最初に「デンマークとはどういう国なのか」を簡単にご紹介します。写真で見ると、とてもビジネス効率性1位の国とは思えないほど(笑)、のんびりした雰囲気の国です。

面積は九州程度、人口は約600万人。日本でいえば兵庫県より多く、千葉県より少ない規模です。つまり「1つの県がそのまま独立した国」とイメージしていただくと分かりやすいと思います。

そんな小さな国デンマークですが、世界的企業を数多く輩出しています。もっとも身近なのは、おもちゃの「レゴ」でしょう。

首都コペンハーゲンについてもご紹介します。まず有名なのは人魚姫の像。世界三大がっかりスポットとも言われますが(笑)、デンマークを象徴するシンボルです。童話作家アンデルセンもデンマーク出身で、ニューハウンという港は観光スポットとして人気があります。街並みには伝統的な建物が残っていて、中はリノベーションされています。

また、コペンハーゲンは世界1位の自転車都市です。環境対策として自動車を減らし、自転車を増やそうという取り組みが行われてきました。自転車利用は環境だけでなく国民の健康にもつながるため、インフラ整備も進められています。右下の写真にあるように、自転車専用の橋なども整備され、通勤・通学で自転車を使う人が非常に多い街です。

さらに特徴的なのが、廃棄物発電所「コペンヒル」です。要するに焼却炉なのですが、発電で地域に貢献しつつ、屋上はスキー場やハイキングスペースとして一般に開放されています。

登れば飲食やくつろぎの場もあり、麓ではスケートボードも楽しめる。普通なら敬遠されがちな焼却炉が、市民や世界から愛される施設になっているのです。

このように、デンマークは「取り組みたくない対策」を市民が楽しんで参加できるプロジェクトに変えてしまうのがとても得意です。

国際競争力とビジネス効率性で見るデンマークと日本の現在地

ということで、デンマークは小さな国ですが「幸せな国」「ビジネス先進国」「DX先進国」「SDGs先進国」「イノベーション大国」「デザイン大国」として、世界から注目されています。

この国際競争力やビジネス効率性こそ、私が本を書いた理由です。デンマークは2022年・2023年に国際競争力ランキングで2年連続1位になりました。

ところがデンマーク人は夕方4時に帰る。それなのになぜ競争力1位なのか。その答えをまとめたのが『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』でした。

現在の国際競争力ランキングを見ると、デンマークは少し下がって3位、4位となっていますが、それでも上位を維持しています。一方、日本は六十数カ国の中でかなり低い順位です。

このランキングは「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」という4つの指標の総合評価で決まります。その中で特に注目すべきはビジネス効率性です。デンマークは2025年も含めて6年連続で1位、日本はこの項目が最も弱く、51位という結果でした。

この差を見ると、日本はデンマークからビジネス効率性を学べるのではないかと感じられると思います。

「先見性」と「スピード」を支えるヒュッゲとワークライフバランス

ではなぜデンマークはビジネス効率性が高いのか。一言で言えば「先見の明があり、スピード感がある」からです。

デンマーク人はふだんから自分の心の声を聴き、「今、自分は何を求めているのか」に敏感です。同時に、他人の心の声や「社会が今何を必要としているのか」にもアンテナを張っているのです。

もう1つ特徴的なのが「未来の子どもの声を聴く」という姿勢です。非常に長期的な視点を持ち、未来に何が求められるかにアンテナを張っています。そのため地球環境への関心も強いのです。

日常的に自分の心の声や社会のニーズに耳を傾けているので、求められる未来にいち早く気づき、スピーディに行動に移すことができます。だからこそ、さまざまな分野で世界をリードできているのだと思います。

そんなデンマーク人が大切にしているのが「ヒュッゲ(hygge)」です。聞いたことがある方も多いかもしれませんが、心地良さや安らぎのあるひとときを意味します。日本語で言えば「安らぎを感じられるプライベートライフ」といった感覚です。デンマーク人は自分の心の声を聴く国民だからこそ、リラックスできる時間をとても大切にしています。

結果としてワークライフバランスを重視しており、首都コペンハーゲンは「ワークライフバランスを実現している都市」世界1位に選ばれました。また2025年には「幸福度が最も高い都市」としても評価されています。

午後4時にはほとんどの人が帰宅し、5時には誰も残っていないという状況です。金曜日はさらに早く帰宅します。

長時間労働からの転換と16時退社が生む好循環

ただし、昔からそうだったわけではありません。これは日本人にとって励みになると思いますが、デンマークもかつては男性中心で偏った長時間労働の国でした。1960年代から現在までを振り返ると、当時は男性が長時間労働を担っていたのが、徐々に労働時間が短縮され、女性の社会進出が進み、今では男女を問わず国民全体で短時間労働を実現しているのです。

フルタイム労働者の性別比を見ていくと、1960年代は男性が中心でしたが、女性のフルタイム労働が徐々に増え、1990年には男性54%、女性46%。現在ではほぼ半々になっています。

デンマーク人のライフスタイルはこんな感じです。

朝は8時から9時に出勤し、午後3時から4時頃に退社。子どもがいる人は迎えに行き、夕方にプライベートタイムを過ごします。家族で夕食を囲むのが日常です。その後は仕事を終える人が多いですが、管理職などでは子どもが寝てから少しメール処理や翌日の準備をすることもあります。翌朝に回す人もいます。「デンマーク人も残業しているじゃないか」と言われることがありますが、ポイントはプライベートを犠牲にしないことです。

デンマーク人の頭の中には、こんな考え方があります。

プライベートを犠牲にして働きすぎると、いずれエネルギー切れを起こして仕事の成果も落ちる。その結果、プライベートにも悪影響が及び悪循環になる。だからこそ「プライベートが充実してこそ仕事に集中できる」と考えるのです。

つまり、プライベートを大事にして心身を整え、仕事に向かう。仕事で成果を出せば、さらにプライベートの充実につながる。こうした良い循環を意識しているのがデンマーク流のワークライフバランスです。休憩を入れることで最後まで高いモチベーションを維持できるのです。

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