勘違いその5 講師として威厳を出す
いのっち:すばらしいですね、ありがとうございます。ということでラスト、5つ目です。「講師として威厳を出す」、これはどうでしょうか。
岩本:講師をやったことがないのでわからないけど……(笑)。
いのっち:そうですよね(笑)。
岩本:確かに威厳がある講師の話は聞こうと思うかもしれない。
いのっち:なるほど。これはプレゼンターと言い換えてもいいですね。話し手として、なるべく偉く見せるというか、すごそうに見せる。これは一定は大事です。私もさっきある意味してもらいましたから。「エース講師です」とか「88回登壇してます」とか話すのは、大事なんですけど、もう一歩先に、「オーディエンス代表として話す」というのがすごく重要だと思っています。
つまり「私の話をあなたたちは聞いてくださいね」ではなくて、ある種一緒に見ているような感覚。例えばプレゼンのスライドを見るような感覚です。
言葉遣いも「教えます」とかというよりは、「一緒に見ましょう」とか「紹介します」とか、そういう言葉遣いが大事だと思っています。細かい話ですが、実は最初に見せたタイトルスライドを「シリョサク講師が教える」としなかったのは、まさにそういった理由になっています。
あくまで「私はちょっと先に実践した者として紹介させていただきます」という、姿勢がけっこう重要だよなといつも感じているんですよね。
岩本:確かにそうですね。今までのプレゼンを思い返すと、全部そうなっていましたね。
いのっち:そうなんです。「俺の話を聞け」というスタンスではなく「良いこと知ったから、ちょっと聞いてみて」ぐらいのテンションが私としては良いと思っています。
営業とかもそうじゃないですか。自社の商品を「とにかく良いんです」って一方的に聞かせるんじゃなくて、「これは、本当に1ユーザーとしても良いんですよ」みたいなほうが、意外に刺さると感じます。なので、この「オーディエンス代表として話す」はすごく重要だなと思っています。
岩本:そうですね。
本当に大事なのは“何者でもない”自覚
いのっち:ということで5つをギュッと、MOREとGOODというかたちで、身の丈に合った話し方をお伝えしてきたんですけれども。最後にまとめとして、今日一番何が言いたかったのかというと「私は何者でもない」という自覚が大事ということです。
岩本:(笑)。確かに。
いのっち:これは本当に大事で、一番プレゼンターとして良くない状態は「みんなが私の話を聞きたいと思っている」もしくは「15分の時間、必ず聞いてくれる」みたいな、慢心だと思っています。
「誰も1分以上の話なんか聞いていられない」というスタンスで準備や話を進めていくと、結果的に聞きやすい、最後まで聞いていられる良いプレゼンが出来上がると思っているので、この自覚が私はとにかく大事だと思っています。
岩本:確かに営業とかでも、会社の名前を背負ったらやはり「この会社の○○です」って、ちょっと何者かみたいなところがついちゃうじゃないですか。
いのっち:間違いないです。
岩本:例えば商談の時間をいただけていたら、それによって話を聞いてくれるんじゃないかという慢心が生まれる時はありますよね。
いのっち:本当にそうなんです。だからこそ相手は別に聞きたくもないし、なんならどんどんしゃべりたいと思っている時に、聞いてもらうにはどうしたらいいんだということを考える。
そうすると今日のような「時間をちゃんと示そうね」とか「メリハリをつけようね」とか「偉そうにしゃべるんじゃなくてオーディエンスを代弁しようね」とか、そういったテクニックが結局、身の丈に合ったテクニックとして返ってくると思います。
我々はプロの講師でも一流の人でもない、何者でもないというつもりでやると、結果的に聞きやすいプレゼンができると思いますので、ぜひ本番ではこの自覚を持って。今日の5つのテクニックから、何か1つ持ち帰っていただけるとうれしいなと思っています。