【3行要約】・業務を0→1で回せる人材になるには「業務構造の視点」が必要ですが、多くの人はその全体像を把握できていません。
・木下氏によれば、業務構造とは「お金と商品の流れを理解すること」であり、これがナビのような地図の役割を果たします。
・曖昧な仕事を具体的なタスクに落とし込むには「業務に人がついている」という視点で物事を見る習慣をつけ、業務フローを理解することが重要です。
前回の記事はこちら 業務構造の視点はどのように手に入れられるのか
——ナビを見ている感覚を手に入れたいなと思うんですけど、業務構造の視点があると、ナビを見ているという状況になるというイメージで合っていますか?
木下勝寿氏(以下、木下):簡単に言うと、お金の流れと商品の流れを理解するということです。

会社っていうのは、商品やサービスを提供してお金をいただくっていうことをやっていますよね。その商品やサービスがどこでどんなふうに作られていって、どうやってお客さんに渡っていっているのかと、お金はどういうふうに流れていっているのか。
一番いいのは、例えばお金は営業の人が受注をして、商品を納品して、営業の人からお金が会社に入ってきます。そこから自分のところの給料として入ってくるまで、どういうふうに分配されて入ってくるか。この全体の流れをまず理解する感じですね。
——それ自体がナビのような。
木下:ナビというか地図ですね。
——地図。それで全体像が見えてくるということなんですね。
木下:そうですね。
フリーペーパーを作る際の思考プロセス
——じゃあもし新しいフリーペーパーを作ろうとなった時に、どういう思考プロセスをたどって作っていったらいいですか?
木下:まず基本的にお金の流れと商品の流れがあるとした時に、まず「誰がお金を払うんだ?」というふうにいうと、例えば情報誌というメディアというのは、広告主と読者の間に成り立っているんですね。お金は広告主からいただくものです。なので、ある意味でいくと、ここに関して読者は直接的には関係ないんですよ。
なので、本がどれだけ良かったとしても、広告主が「お金を払いたい」となければ絶対に成り立たないというのが大前提にあるので。
最初にお金の流れでビジネスモデルを確認します。「誰がなんのためにお金を払うんですか?」というところですね。

そして、商品を作るっていうことについては、情報誌という商品ではなくて、情報誌に広告を出してもらったところで、情報誌が一切配られていないと、まったく商品として成立していないわけですね。なので読者に配られて、読まれていて初めて商品として成り立つ。「読者の人たちに好まれるかどうか」という観点で作っていくところです。
ビジネスの観点でいくと、いいものを作るんじゃなくて、広告主がお金を払いたいものを作る。そのために、いい記事を作るっていう概念になっているというところ。例えば新しいものを作ろうとした時に、最初に聞かないといけないのは、広告主に「どんな情報誌であったら、お金を払いたいですか?」と。
この広告主から「女性向けの関西の広告誌だったら、お金は払わないよ」みたいな感じでくるから。まず広告主の人たちがどういうものをほしがっているかを確認して、それを実現するためにどういう情報誌を作って、それが本当に読者に読まれるかどうかを見ていくという感じですね。
——まさしくベルトコンベアですね。
木下:そうそう、ベルトコンベア。(業務の)前後をちゃんと理解してやっていく感じですね。
全体像から具体的なタスク切りを行う方法
——それで全体像がわかったとして、そこからどうやって具体的なタスク切りを行ったらいいですか?
木下:先ほどの話とかでいくと、まず、お金をいただくのは広告主ですよね? じゃあ「どんなものだったらお金をくれるか?」を広告主に聞きに行くことが一番大事ですね。ヒアリングに行くということ。
ここから始まっていって、実際に発生する時のことを想定していく中で、「誰がどうやって営業していくんだ?」とか。
自分がこのプロジェクトの責任者だとしたら、まったく未経験の前提で振られていますよね? 「未経験の前提で全部考えてくれ」という状態なんですよ。なので、ヒアリングに行きます。営業していきます。僕は営業未経験です。これは経験がいる営業なのか、いらない営業なのか。(経験が)いらない営業だったとすると、どういうふうに営業トークを作っていったらいいのか。
もしくは完全に人脈がないと無理な営業だったとすると、そういう人脈がある人をどうやって採用していくのかということを、一つひとつ考えていきますね。

これは別に(誰かに)聞かなくても、考えたらわかりますよね? 全体像の中でプロセスプロセスを一つひとつ見ていって、自分がぜんぜん知らないことを明確にしていくという感じで、タスクにしていく感じですね。
“見えないタスク“にどう対応していくのか
——未経験、まったく初めてだと、見えないタスクがあったり、気づいていないタスクとか、フローがあったりすることもあるのかなと思ったのですけれども、そういうことってありますか?
木下:抜け漏れはあります。なので、まず自分の中で、広告主からお金をいただいて、情報誌を作って、届けるというところを考えます。ここで自分が見えるところをまず全部やっていきます。見えるところというのは、自分の中で考えられる最大限、「これをこうやっていけば、こうなるよね」というところをやっていきます。
その中で「ここはどうしていいか、まったくわからない」というところがあったとしたら、まずは人に聞くんじゃなくてネットで調べます。人に聞く場合は1人分の情報しかないですけれども、ネットで調べると10人分、20人分の情報があって、その中で一番いいものを選べますよね。ネット上で情報を集めて、スタートからフィニッシュまでをつなげていきます。

それで「自分がわかる範囲では、これでいくはずだよな」というふうに一応なってから、次に経験者の人たちに「こういうふうに考えているんですけども、抜け漏れないですか?」と聞く。そしたら、ピンポイントで「ここがこう」「ここがこう」となっていくので、そこをブラッシュアップしていく感じですね。
タスクの優先順位の付け方
——たくさんタスクが出てきた時に、タスクの優先順位の付け方とか「どこから取り掛かったらいいか?」というのは、どのような順番で考えたらいいですか?
木下:川上から川下までのタスクになっているので、いきなり川下からは無理というのはたぶんわかると思うので。まず川上から全部やっていくことが大前提です。
選択肢として3つぐらいあるとした時に、ここ(選択肢①)を全部準備していても、ここ(選択肢②)の部分で失敗してしまうと全部無駄になるかもしれないというところがある場合は、ここ(選択肢②)のテストだけを間に先に入れるとか。

不明確なところのテストができるんだったら先にやってしまう方向でテストしていく感じですね。
——北の達人さんでは、事業構造目線を身につけるために、どのようなことをされていますか?
木下:当社の場合は、まず入社した時に、全部署を回る研修があるんですね。カスタマーとかの部署に回って、実際にお客さんからの電話に対応してみるとか、各部署のミーティングとかに参加していって、各部署がどういうことをやっていて、どういうふうにつながっているかを理解してもらう研修をやっていますね。
——みなさんされているんですか?
木下:総合職がメインですね。
——すごくわかりやすいと思うんですが、もしそういう研修制度が自分の会社にない場合、どんなアプローチで事業構造目線を身につけていったらいいと思いますか?
木下:お金の流れと、商品やサービスの流れを全部自分で考えてみるというところで。お金の流れも商品の流れも基本的にシンプルで、どこの会社でもそんなに大きく変わらないので。

まず「うちの会社では、今どうなっているかな?」というところを考えてみて、それを今の会社の組織図とかを見ていきながら「ここはこういうふうに流れていっているんだな」と見ていく感じですね。
そして、自分が今の全体像の中で、今どの位置にいるのかを理解する感じだと思います。
——ありがとうございます。
“業務に人がついている”観点で物事見る癖をつける
木下:最後にまとめます。0→1ができるっていうのは、タスク切りスキルっていうことになります。タスク切りスキルっていうのは、曖昧な仕事を具体的なタスクに落とし込んでいくスキルです。これができるようになるためにどうすればいいかというと、業務に人がついているというような見方をしてください。
(0→1が)できない人というのは、人に業務がついているという見方をしているので、この視点で物事を見ている限りは、どれだけ経験を積んでもタスク切りスキルは身につかないんですね。もともとあるタスクをこなしていくことしか見えないので、新しいものが発生することは見えません。業務に人がついている、業務フローを理解するということを増やしてください。
この観点で物事を見る癖をつけていくと、1~2年ぐらい経てば、どんなものに関しても0→1でできるようになっていくスキルが身についていくと思いますので、ぜひがんばってみてください。
——ありがとうございました。