がんばったのに成果が出ない…努力は本当に報われるのか？　美しい成功物語と無視される失敗 [2/2]

ホッケースティック型は死屍累々

荒木：何かを信じて、耐えに耐えに耐えたら、やはり報われましたって。だから、だいたいのサクセスストーリーはそれですよ。例えばQUEENのフレディ・マーキュリーの映画（『ボヘミアン・ラプソディ）があったじゃないですか。

あれも、すごくわかりやすく低迷期が続いて、ドカンッとヒットしてみたいな。またそこで落ちちゃうんですけど。このヒットするまでのプロセスはすごく沈んでいたんだけど、その才能が一気に見出される。そういう世界、憧れますよね。

入江：感動ストーリーとかに多いですよね。

荒木：感動ストーリーですよね。もちろん、それが大事だというのを教育的効果として語ってもいいんですけど。冷静に考えると、ギャンブルをやっている人は、その話を語るんですよ（笑）。

入江：（笑）。確かに、どこまで賭けるかということに似ていますもんね。

荒木：そうそう。「もうあと10万円やったら」とかね（笑）。

入江：「くるよ！　もう少しだよ！」って（笑）。

荒木：「もう少しだよ！」と言って、そのままリターンがこないで終わるみたいなものも、「もうちょっと早く判断すればよかったんじゃないの？」みたいな。ホッケースティック型って実は死屍累々なんですよ。でも、そのまま当たらなかったギャンブルの話は誰もしないじゃないですか。したくないですよね。

そうやって下積み期間が大きくて売れなかったアーティストの話とかも、たぶん語られない。だから、そういうストーリーはなかったことにされちゃうんだけど。実はそういう意味では、永遠にお金を注ぎ続けても返ってこない可能性もある。

すべての神話に功罪両面がある

荒木：じゃあ、それはどういうふうに考えればいいのか。そのホッケースティック型には功罪両面がある。すべての神話に功罪両面があって、そのへんの話を神話の解説ではやっていますね。

入江：それで神話がそのように9個あるんですよね。

荒木：はい。

入江：どれも「まぁ、あるな」という感じはしましたし、納得できる部分もあるし、自分の経験で「これは、これかな？」と読んだら、みなさん当てはまる部分があると思うんですよね。

荒木：そうですね。これには実は第4章があって。先ほど言ったように前半の3つの章は、努力とは何か、報酬とは何か、神話とは何かを構造的に説明しているんですけど。そこまでが、どちらかというと理論編というか解説編なんです。最後の第4章は、じゃあ普通に生きている我々がその構造を踏まえると、どうやって世界が変わっていくのか。

それをちょっとヒント的に、3つのケーススタディを通じて考えていくというストーリーを取っています。そこのストーリーもそうだし、我々もそうだと思うんですけど、（型に）凝り固まっちゃうんですよ。

入江：あぁー。

結果が出なくても、見方を変えれば救われる

荒木：これが努力であり、これが報酬であり、そしてそれをつなぐ神話はこれ、みたいな。

入江：うん。「自分の信じる道はこれ！」と、固定してしまうということですね。

荒木：固定してしまうんですよね。固定して、それに向けて一点突破でがんばるみたいな生き方ももちろんあるんですけれども。これでポキッと折れちゃう人は、やはり多いわけですよね。その時に、「いや、実は努力の種類はいろいろあるよ」とか、「報酬もいろんな見方ができるよ」とか、もっとも大きいのは神話ですよね。「神話には、いろんなパターンがあるんだよ」ということに気づく。

例えばバスケットボールの練習をずっとがんばってやってきたんだけど、身体が大きくて身体能力のいい、センスのいいポッと出の新人に抜かれちゃった。「俺の努力は意味がなかったのか！」みたいな。ケース1は、そういうふうに悩んでいる主人公なんですけれども。

これはこういう見方をしたら「君の努力は意味がなかった」と言えるかもしれないけれども、「こういうふうに見たらどうかな」と。見方そのものを捉え直すと、実はまだまだ楽しめるんじゃないの？　という。

最後の章は「認知を多様化する」というタイトルにしているんですけれども。「物の見方をいろんなかたちに変えていけば、その苦しさからちょっと逃れられるんじゃないの？」という。

入江：確かに。特にスポーツだったり、毎日練習するようなものだと、どんどん凝り固まってしまいそうなので。あとは若い方だったら、より「もうこれしかない！」と思いやすいのかなと思うので。そういう9（個の）神話があれば捉え方が変わりますよね。