【3行要約】・社長の意識改革は直接的アプローチでは難しく、仕組みを通じた間接的な変化が効果的です。
・浅井隆志氏は自身の経験から「データに基づく提案と実行権限の獲得が、社長との関係性構築の鍵になる」と語ります。
・No.2の役割は社長の足りない部分を補完し、縦横のコミュニケーション体制を構築することで、組織全体の成長と社長の意識改革を同時に進めることです。
前回の記事はこちら 社長が変わるように仕掛ける
浅井隆志氏:今、つらつらとちょっとお話をさせていただきましたが、とにかく社長に対するアプローチとして、社長を直接的に変えるのは、正直なかなか難しい。
なので社長の意識や行動を直接変えるというよりは、こちら側が仕掛けていきながらうまいこと巻き込み、引っ張り出して介在させていくかたちで、最終的には意識と行動がそれで変わっていくんじゃないかなと思います。「社長、変わってください」と言ったところで変わらないので、うまい仕掛けが必要なんじゃないかなと思います。

仕掛けについてお話をさせていただきますと、まずは育成方法。社長も「ちゃんと教育して育成しろ」とだけはたぶん言うと思うんです。どうやって教育していけばいいかは、「会社でこういうふうに育成をしていきましょう」という計画を立てて、社長にどう関わっていただくのかを決めていく必要があります。
それから幹部の方の取り組みについては、ちゃんと社長がコメントバックをするとかフィードバックをするとか、社長と幹部の方と面談をするとかがあります。
100名ぐらいの企業だと、場合によっては、四半期に1度でいいので社長と社員の面談をするのも、1つ僕のお勧めです。期待をとにかく伝えてもらうとか、会社の方向性を伝えてもらう。
1対多数じゃなくて、1対1の面談を社長にやってもらうと、これはすごくいい機会になりますし、社長も現場の社員と会話をすることによって意識や行動がやはり変わってきますので、ぜひこういうことを取り組んでいただきたいなと思っております。
形骸化した企業理念は刷新する必要が
それから等級制度や評価制度を刷新していただく。制度が今の社長の思いやビジョンにちゃんと紐づいているかどうかって、すごく大事ですよね。形骸化した企業理念はさっさと捨てて、新しいビジョンや理念を立ち上げて、それに紐づいた等級や評価にしておく必要があります。当然会社として、四半期ごとや毎月、こういう効果測定を測り、それに紐づいた事業計画を作ると。
これをNo.2としては「社長は等級制度や評価制度についてどうお考えですか? 考えがあるなら教えてください。ないならこちらが作るので、これでいいですか?」というやり取りをしていかないと、なかなか変わっていかないんじゃないかなと思っております。
交流につきましてはコロナも明けましたので、ぜひ社内イベントを行ってください。まぁ、社内イベントは好き嫌いもありますね。
それから面談等々は会社のルールとして、社長を巻き込んだ面談をやっていただくのがよろしいかなと思っております。
理念系は先ほど、評価のところでお話をさせていただきました。
あらためて、採用につきましては、とにかく今は労働市場の状況が変わっております。まず、労働市場がどういう変化をしているのか。このあたりの情報を敏感にキャッチしている社長は正直少ないので、これはNo.2の方に情報をかき集めていただきます。
「今はこれだけ採用が難しいということは、育成もしないといけない。だから会社としてはどういう育成をしていくのかについて、社長としてはここをどうお考えなんですか?」と、やはりエビデンスやデータを社長に突きつけていくのが大事ですね。
社長を説得して自分でやれる環境を作る
僕の過去の話で大変恐縮なんですが、僕が営業として売れるようになった時、当時の社長はスーパーパワハラ系、スーパー圧力系社長だったんですね(笑)。「おい、これをやれ! あれをやれ!」みたいな社長でした。
僕は当時その会社のトップセラーになったタイミングでいろいろ勉強していましたので、会社の今後の事業計画を僕なりに考えて作りました。会社のブランドや、業界の中でのブランディング、ポジショニング、それに紐づいた事業計画、営業戦略、マーケティングの戦略、人材の戦略、採用の戦略を全部盛り込んだ提案書を作りました。
社長に「すみません、ちょっと2時間ください」とお時間をいただいて、説明したんですね。で、社長に何と言われたか。「そうか。浅井、やってくれ」みたいな感じで(笑)。
結局、僕はいわゆる決裁権限をもらいました。営業統括に行ってそれを全部やらせてもらったわけですね。社長を変えるのも話は早いんですが、社長を説得して自分でどんどんやる。自分のスキルにもなりますし、当然それに見合った報酬が得られます。
どちらかというと社長に突きつけて「これが必要ですよね。これをやらせてください」みたいな感じでやって、その進捗についても細かくコミュニケーションを取って会話をしていくと、関係性もぎゅっと築けましたし、逆に僕の理解者、応援者にもなってくれました。
どっちが社長かという話なんですが、社長にはビジョンを示していただいて、僕は実務の最高責任者ということで、とにかく僕は当時、社長の心を握っちゃう戦略をやっておりました。そちらのほうが健全かなというところですね。
チェックリストを作っておきました。みなさん、どうでしょう。まずみなさんの会社に事業計画があって、社員にそれを浸透できているかどうか。よく「年一で事業計画の方針発表」とか、あるじゃないですか。はっきり言って、年一の発表って忘れますよ。
なので、作った事業計画を社長からメッセージで発信するのはいいんですが、それを四半期や毎月、毎週の行動管理や評価面談の時に紐づけて、再度それを伝えられるかという仕組みもすごく大事になってきますね。(スライドの)このへんは今説明したようなところです。
育成の目標管理が重要
それから、誰がどれだけできて、どういうことができないかが明確になっていないと、「やって当たり前だろ、なんでできないんだ」みたいな話になりますので、スキルマップの整備と認知が大事です。
営業だったらどういうスキルや知識が必要なのか、どういう業務フローや営業フローなのか。ほかのお仕事でも同じように、必要な知識や体験、経験、業務フロー、マニュアル等々を整備してジャッジしていくのはすごく大事になってきます。
それから「育成の目標管理がなされているかどうか」「生産性向上の目標管理がなされているかどうか」。これはものすごく大事ですね。目標管理とは簡単に言うと、目標値を定めて行動計画と振り返りをして検証作業をしていくという、いわゆるPDCAですよね。
なので社長は役員に対して、役員をどうしていくのか。役員は幹部をどうしていくのか。幹部は管理職をどうしていくのか。管理職は部下をどうしていくのか、という目標設定をして、計画を作って、このサイクルを回していく。生産性向上や業務向上についても目標管理を回していく。
これが会社全体にないと、やはり全部ビジョンに紐づいて作っていきますので、社長発信でそういうことをやっていかないとなかなか変わらない。社員に「やれ」と言うだけだとなかなか難しい。社長も引き入れるということですね。なので必ず上司が介在をしていくというのがとても重要になってきます。
社長だけではなく、社員同士で情報共有する意義
あともう1つ。これは社長の意思を変えるのとはまたちょっと別(の話)です。組織力ということで考えていきますと、ナレッジ共有なんて言いますが、どういう目標でどういう行動計画かという、それぞれの目標管理の情報共有を横軸(社員同士)でしていく。
「どういう体験や経験からノウハウや気づきが得られたか?」というのは部下から上司という、上下の報告・連絡・相談で吸い上げてフィードバックをする。これは面談等々でやっていけばいいんですが、横軸も非常に重要になるんですね。
組織のあるべき姿についての1つの答えとして提示させていただきます。まず社員は当然、管理職に自分の業務や取り組みについて報告を上げていきますよね。ただ「これをやりました」じゃなくて、「これをやったらこういう気づきがあった、学びがあった。こうしたらもっとうまくいくと思います」ということを、上司にまず報告します。
上司は適切なタイミングでこの報告についてコメントバックやフィードバックをする。いわゆる上下の報告・連絡・相談。これは日常的に日報等々でやるとは思いますが、週に1回、もしくは2週間に1度はやはり面談でやっていただく必要がある。
さらに横軸の共有というところで、「社員同士でどういう取り組みなのか」「上司からどういうフィードバックをもらっているのか」も共有する必要があるということですね。
さらに管理職もしくは幹部の方が、社長に対して報告を上げる。それで社長が幹部や管理職の方に定期的にフィードバックをしたりコメントをつけたりする。これが非常に大事になってくるわけですね。
歴史が証明する、No.2の重要性
当然、本日ご参加いただいている幹部やNo.2の方については、どちらかというと「社長、もっとこうしてください」と知恵を入れていくわけですよ(笑)。こそこそつぶやきながら社長を動かしていく。
この全体の取り組みに社長をいかにして引っ張り込めるかということで、「面談は何ヶ月に1度社長が入ります」「管理職の業務報告は社長に直接上げて、社長が必ずコメントをつけます」というルールや制度にしちゃって、引っ張り込んじゃう。これがやはり一番現実的に、社長の行動と意識を変えることができます。
実際、僕がコンサルティングをしている企業さまですと、1年間とか2年間の施策の計画を作るんですが、やはり必ず社長を介在させていくんですね。これでコミュニケーションも取れますし、社長自身も変わってきます。

今回はNo.2の方にご参加いただいておりますが、ちなみに企業はやはりNo.2や右腕・左腕の方が非常に大事になってくるわけですね。
社長はだいたいどの会社でももちろんすばらしい方だと思います。社内から見ると欠点だらけに見えるかもしれませんが、やはり光るものがあるから社長なんですよ。その足りないところを補完していくのが右腕・左腕で、やはりどんな大企業でも、表立った立役者と、「裏方に徹していたけど、この人がいたからその会社になった」というNo.2が必ずいます。

なので、みなさんもそういう立ち位置で、社長をいろんな施策にうまいこと引っ張り込みながら変えていくことが重要であると考えております。