【3行要約】・業務効率化は多くのビジネスパーソンの課題ですが、「その業務は本当に必要か」という根本的な問いが見落とされがちです。
・「片付けパパ」こと大村信夫氏はマネジメントの父として知られるドラッカーの「無駄なことを効率的にやるほど無駄なことはない」を引用し、不要な業務を続ける危険性を指摘します。
・業務改善には「ECRSの4原則」を活用し、まず業務の排除(Eliminate)から検討することで、本当に必要な仕事だけに集中することが大切です。
前回の記事はこちら ドラッカーに学ぶ業務の整理
大村信夫氏(以下、大村):ということで最後、5問目はこちらです。同じく業務の生産性を上げる際に意識すべきなのはA・Bどちらでしょうか。Aが効率化できるか。Bがその業務は本当に必要かという話でございます。

こちらも、もうみなさんBで。ありがとうございます。感覚が合っているなとあらためて思いました。みなさんの想像どおり、その業務は本当に必要かを問うようにしております。
この発想に至ったのは、マネジメントの父でもある、かの有名な(ピーター・)ドラッカーさんですね。
ドラッカー先生は、「無駄なことを効率的にやるほど無駄なことはない」とおっしゃっているんですよね。そうですよね。この言葉を聞いた時に「あぁ、なるほどな~」と思いました。
本当にその業務が必要かどうかを考えずに、ひたすら効率化することが意外とあったりしますので、ぜひこのあたりをちゃんと認識していただきたいなと思っております。
無駄な業務を繰り返していた例
大村:これは、私がとあるビジネスパーソンに聞いた話ですけれども、その方は毎月第3営業日までに、関連するグループ会社の売上データを集計して、それをまた他のグループ会社に報告するという業務をやっていたんです。10時間ぐらいかかるので、けっこう大変だったらしいんですよね。
作ったら指定されたフォルダに置くという作業だったんですけれども、けっこう大変。その業務自体はその方の前任の方から引き継いで、さらにその前任の方からたどると10年ぐらいやっていたらしいんですよね。
これはけっこう大変なので、例えばそれこそRPA(Robotic Process Automation)みたいに自動化する仕組みを使ってやったらいいんじゃないかみたいなことを考えたんですけれども、その導入に50時間ぐらいかかるとかで「どうしよう」と悩んでいたそうなんです。
それを直属の上司に相談したら、「○○さん、ちょっとこの業務をいったんやめてみません? 何かあったら責任は私が取りますから」と言ってくれたんですね。なので、やめてみたんですって。
「関連会社から怒られるんじゃないか」とドキドキしていたら、結局3ヶ月経っても誰からも何も言われなかったそうなんですよ。「なんでだろう」と思ったら、そのデータを必要としている会社さんは、もう3年ぐらい前から他の方法でデータを取れていたらしいんですよね。
でも、それが前任の方を含めてうまく引き継げていなかったみたいで、無駄な業務を毎月3日間かけてやっていたことがわかった。そもそもその業務が必要かどうかをちゃんとレビューしていなかったのが事実だったそうでございます。
「ECRSの4原則」で業務を見直す
大村:こういうことも踏まえて、生産性向上に役立つ考え方があります。これは家事にも仕事にも役立つものなんですけれども、「ECRSの4原則」です。これはイクルスの4原則とも言うもので、業務改善手法として有名でございます。

排除(Eliminate)、結合(Combine)、交換(Rearrange)、簡素化(Simplify)の頭文字を取ったものがECRSの4原則と言われております。
排除は、そもそもその業務をなくすことができないのか。結合は、業務を1つにまとめられないのか。交換は、業務の順序や場所などを入れ替えることで効率化、向上できないか。Simplify(簡素化)は、業務をより単純にできないかということです。
この順番で(先にあるものが)効果が一番大きくて、だんだん薄れていくというものになっています。ただ、日本人はやはり器用なので、どうしても手前のあたりから業務改善する傾向があるんですよね。

それに対して、このEliminate、排除する。例えばアメリカでリストラというと、ここから始まるとも言われているぐらいなので、「Eliminateからできないか」を見ていくのがECRS4原則の重要なところでございます。
なので、ぜひこの「本当にこの業務は必要なの?」というところを考えてみてください。これは片付け・整理と一緒です。業務をなくすことができれば、それに続くプロセスがなくなっていきますので、より効率化につながります。
複数のタスクがある時の優先順位の付け方
大村:ということで、最後にまとめとさせていただきます。
片付けでは、まず整理をする。収納スペースは8割、仕事は仕掛かり時間を意識し、2割の進捗でいったん報告し、生産性向上のため、その業務は本当に必要かを考える。というところで、できる人・できない人の区分けでお話しさせていただきました。

平野さん、以上でちょうど40分です。なんとか時間どおりに終えることができました。みなさま、いろいろとフィードバックをいただきまして、ありがとうございました。
平野裕一氏(以下、平野):大村さん、ありがとうございます。
大村:はい!
平野:何点か質問が来ております。「仕事の優先順位付けで、複数のタスクがある時、重要度と緊急度を瞬時に判断し、取り組む順番を明確にするにはどうしたらいいでしょうか」。
大村:これもやはり重要か緊急かではあるんですけど、いったんは緊急時で判断するのがいいのかなと思います。
ただ僕がお伝えしているのが、やはりこれだと思っています。仕事が複数あったら、まずはいったん、それぞれ軽く着手してみてください。それで時間の見込みや、何かしらの解決方法を見出した上で、こっちが優先だなと思ったらそっちを一斉にやる。
まずは軽く両方とも着手してみると考えていただいたほうがいいかなと思います。
手元に残すのは最終データに限定
平野:ありがとうございます。続きまして、情報の一元化に関して。「必要な情報がどこにあるかを常に把握し、探す時間を極力減らしていく方法を教えてください」ということです。
大村:この情報のところは、実は私も勉強していることが多くあります。やはり「いろんなファイル、どこにやっちゃったっけ」という問題は誰しもつきものですし、「この情報をスクラップしておこう」みたいなところも含めてかなと思うんですけれども。
まずファイルに関しては、僕もそうなんですが、作成途中のファイルがけっこうできちゃうんですよね。例えば提案書を作るにしても、途中で先方に確認するやり取りの中でできちゃうデータとか情報が多いと思うので。
それに関してはもう一括して、どこかのタイミングで消しちゃうとか、バックアップにまとめておく。本当に純正の最終的なものだけをフォルダに残しておくのがいいかなと思っております。
SNSの投稿をメモとしても活用
大村:もう1個、情報の整理について。例えば本を読んでいて、「この情報いいな」と思ったらTwitter(現X)とかにメモとして載せちゃうんです。
そうすることによって、自分が共感した情報を世の中にお伝えする。それ自体も(みなさんの)役に立ったらうれしいなと思うんですけれども、自分の読書メモみたいにやったりしています。重要なことは、SNSとかを使ってストックしていくのもありかなと思ったりします。
平野:ありがとうございます。最後の質問になるかもしれないんですけど、デスク周りの維持に関してなんですが、「常に必要な物だけが置かれ、探し物がすぐに見つかる状態を保つ秘訣はありますか」。
大村:そうですね。やはり特に書類は散らかるかなと思うので、立てておいたほうがいいと思います、というところですかね(笑)。
平野:立てておくとかしながら……。
大村:書類棚みたいなものに立てて置くようにする。それを1週間に一度、月曜日の朝30分でもいいんですが、適宜見直す。
横に積んでいってもいいんですけれども、そうすると取り出すのにけっこう大変になると思います。机の面積もそんなにでかくないと思うので、(書類を置くのは)縦にしておくのがいいかなと思います。
「押出しファイリング」で使用頻度を可視化
平野:「書類は縦というところをもう少し」と、コメントが来ています。もう少し教えていただいて今日は終わろうと思います。
大村:たぶん、本は積ん読になっているからって横にしないですよね。書類とか本とか、縦も横もできるような物というと、あとはCDとかがあると思うんですけれども。
僕がけっこうやっているのは、使った書類を右か左かどっちかにどんどんまとめていくんですよ。そうやっていくと、例えば右がけっこう使ったり見たりする書類になって、逆に左はあんまり見ないものになっていくんですよね。
ごめんなさい、今、名前を失念してしまいましたが、整理方法として有名でございまして(経済学者の野口悠紀雄氏が著書『「超」整理法: 情報検索と発想の新システム』で紹介した「押出しファイリング」)。活用される書類ほど自然に右にいくようになるんですね。
あと、例えばレコードとかCDもそうで、よく聴くものほど右にやっていくと、右のほうが「あ、活用しているんだな」と目に見えるので。逆に反対側にあるほうはあんまり使用頻度がないことがわかります。そういうそういう時に(書類を)立てると便利かなと思います。
平野:ありがとうございました。では本日のセミナーはこちらで終了させていただきます。大村先生に大きな拍手をお願いします。
大村:ありがとうございます。
平野:みなさまも今日ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。