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新規事業を生み出す「クリエイティブ・マネジメント」事業化を見据えたアイデア創出の思考法を学ぶ(全6記事)

ユーザー視点、構造化、情熱…バランスよく1人でこなす人材は希少 新規事業を生み出すチームを作るポイント

【3行要約】
・新規事業開発では「情熱」が重要とされますが、アイデアの見える化や思考のバランスなど実践的なアプローチが課題。
・柴田雄一郎氏は「アート・デザイン・ロジカルの3つの思考をバランスよく持つ人材は希少だが、新規事業には不可欠」と指摘しています。
・新規事業を成功させるには、AIに頼りすぎず自分の情熱を育て、思考プロセスを大切にしながら、チーム内の多様な思考特性を活かすことが重要です。

既存事業との掛け合わせで新規事業を考えるコツ

司会者:それでは、質疑応答に移りたいと思います。今回も事前に多数のご質問をいただきまして、まずはこちらの質問を柴田さまにおうかがいできればと思います。

「新規性と有用性と自社の強みをうまく掛け合わせる思考や考え方があれば知りたいです」というご質問です。いわゆる新規事業という文脈において、既存事業などとの掛け合わせに関する趣旨かと思われます。

柴田雄一郎氏(以下、柴田):先ほどもお話ししたように、マインドマップ的に見える化していくことで結びつけること。掛け合わせるというのは、まさに「結びつける」ということだと思うんですが、これを頭の中だけでやろうとしても、なかなか出てこないんですよ。

新規性といわれる場合、その新規性の要素、あるいは新規のサービスや商品をとにかく可視化することが非常にわかりやすいアプローチだと思います。頭の中で悶々と考えて「なんかつながらないかな」と思っていても、なかなかつながるものではないので。

手法の1つとして、新規性と有用性、それぞれが何を意味するのかという要素をいったん全部書き出して、それを見ながら考える。そうすることで、整理もしやすくなるかと思います。

頭の中で考えるだけではなく、アイデアを有形化して見えるようにすることによって、ほかの人もその内容を把握しやすくなりますし、それをテーマにディスカッションしていくという方法もあると思います。

すでに何か取り組まれているかもしれませんが、有用性の要素、新規性の要素をまずは書き出して、そこから結びつけていくという、見える化のプロセスをぜひ試してみていただけたらと思います。

自分の中の「デザイン思考」「アート思考」「ロジカル思考」を評価する基準

司会者:続いての質問です。「1人でアート・デザイン・ロジカルを練習し、それぞれを評価する場合、どのような基準で評価すればよいのでしょうか。必須の評価観点、指標、重み付けをご教示いただけますと幸いです」というご質問です。

具体的には、アート思考での問いや独創性、デザイン思考でのユーザビリティや感情共鳴、ロジカル思考でのビジネス妥当性などが挙げられると思いますが、それぞれをどのような観点と基準で評価すればよいのかという趣旨です。

柴田:それぞれの評価基準って非常に曖昧だと思います。アート思考での問いの評価は、すごくパーソナルな問題なので、評価できるかどうか自体が難しいと思います。

それは例えば、アート思考は「それでもやりたいか」というマインドの評価だと捉えています。アイデアがおもしろいとか、ユニークだとかいうよりも、ビジネスにおいてそれを本当にやり続けたいかという意思の部分が重要で、僕の中の定義ではそこが強いと思っています。

先ほどお話ししたように、「それでも絵を描き続けたいなら芸術家」「それでも事業を実現させたいなら起業家」だとすれば、その精神を評価できるのは自分の内発的なモチベーションだけであって、他人が評価するものではありません。

もしそれを「会社が評価してくれない」と他責にしてしまうのであれば、自分でやったほうがいい。つまり、自分で起業するほうが良いと思います。この方が企業の中で取り組もうとしているのか、起業を考えているのかによって、答えも変わってくるとは思いますが、アート思考においてはそういった基準になると思います。

デザイン思考については、とにかくリサーチして、いろんなケースを外に出して試してみる必要があります。自分の頭の中や社内の評価ではなく、顧客の評価が基本です。

ユーザビリティを評価したいなら、モックを作るとか、サービスの企画書を作って「これ、買いますか」と外に出して聞いてみる。例えば、それを映像に撮って「おもしろそうだね、絶対買うよね」と言ってもらえれば、それはユーザーニーズを満たしていると考えられると思います。

ロジカル思考のビジネス妥当性に関しては、すでに定番の型があります。MBAの本などを読めばその指標は明確に書かれているので、それに則って根拠を持って考えていけばよいと思います。

外部パートナーと新規事業を進める際のポイント

司会者:次のご質問は、「種となる技術の基本的な特許が成立している状態であれば、外部パートナーを探索して議論をすることもやりやすいと思いますが、そうでない場合のパートナー探索やパートナーシップの構築について、良い進め方や考え方があればご教授いただきたいです」というものです。

柴田:技術的な特許がまだ成立していない状況で、外部と何か進めたい場合の話ですよね。この時に出てくる課題は、やはり権利的な問題です。特許が取れていないと外部に見せづらいというのは当然あります。

ただ、今はとにかくスピードが速いんです。アイデアを形にした時には、すでに他の誰かが同じようなことをやっている可能性もある。そうなると、特許を取ってから外に出すという従来のやり方だと、間に合わないことも多いんですね。

しかも、仮に外に出した途端に真似されるようなアイデアであれば、それはそもそも強くないということでもあります。

そういう意味で、私個人としては、スピードを優先すべきだと思っています。「こういうことをやりたいんです」と先に伝えて、秘密保持契約を交わしたうえで進めていく。信頼できる相手と、スピード感を持って取り組むほうが、いまの時代には適しているのではないかと感じています。

もちろん、本当に独占的で、自社にしかできない技術があるのであれば、特許を取得してからという選択肢もあります。ただ、それにこだわって動き出しが遅れてしまうくらいなら、私はどんどん動いたほうがいいと考えています。

AIに新規事業のアイデア出しをさせることの弊害

司会者:少し趣旨が異なる質問ですが、ご参加の皆さんにはAIに興味を持っている方も多いようです。AIが普及すればするほど新規事業に落とし込む際の影響はどうなるのか、またAIをどう活用すればよいのかといったご質問が寄せられています。ざっくりとしたご所感をお聞かせください。

柴田:本にも書きましたが、「AIはうまく使いましょう」と。それ自体に弊害もあります。というのも、AIはアイデア会議以上にすぐ良いアイデアを出してくれますが、「AIが言ってくれたアイデアだよね」となると、内発的動機が生まれにくい。結局、自分のコミットメントが弱いので、推進するエネルギーも薄くなってしまうんです。

コンサルに高額を払って「いい案だ」と言われても、やる気が伴わず実行されないケースは多いでしょう。それよりは、自分で時間をかけて必死に生み出したアイデアのほうが、瀬戸際まで守りたいという思いが強くなります。これが、本当の情熱だと思います。

ただし、AIのスピード感や結びつけ能力は非常に優れているので、余計なリサーチはどんどんAIに任せるのがよいと思います。「これとこれを結びつけて何かやって」と指示すればすぐにかたちになる。ただし、簡単にできるものは簡単に真似されるので、本当に価値あるものは、遠回りして自分たちの手で作り込んだものです。

AI自体を否定するつもりはまったくありません。むしろ、知らないうちに生活や業務に溶け込んでいくでしょう。例えば私はChatGPTに学習させ、「シバさん」というAIカウンセラーを作りました。1on1をAIに任せるというアイデアですが、上司のパーソナリティを学習させれば、忖度なく客観的なフィードバックが得られるかもしれない。そういう使い方もあると思います。

大事なのは、AIをどう使うかです。使い方を間違えれば恐ろしいことになりますから、適切なノウハウを持った人と一緒に進めることが重要だと考えています。

司会者:AIが通常業務の一部となる中で、アイデア創出までの思考プロセスがいっそう重要になるということですね。

柴田:そうですね。プロセスが大切です。

新規事業を生み出すチームを作るポイント

司会者:ここで少し追加のご質問を紹介します。先ほどのお話と関連していますが、「新規事業への情熱を育てることに共感しました。そうなれる見込みのある人材を見出すために、どのようなポイントを見るべきでしょうか」とのことです。育成や選抜の観点からのご質問です。いかがでしょうか。

柴田:これは、その人が何年勤続しているかにもよりますが、ちょっと変なことを言う人っていますよね。僕自身もそうだったんですけど、周囲から見ると「何を言っているのかわからない」と思われがちなタイプ。でも、よく聞いてみると、実は3つぐらい先のことを考えていたりする。つまり、少しネジが外れているように見えるけど、実は未来を見据えて動いているんです。

こういうタイプって、ロジカル思考がやや弱くて、むしろクリエイティビティとかアート思考が強いことが多い印象があります。僕もまさにそうで、もともとは感覚的なタイプだったんですが、トヨタ自動車のようなロジカルが求められる環境や、国のプロジェクトなどで鍛えられ、ロジカル思考を後から身につけていきました。その結果、アートとロジカルをバランスよく使えるようになったと思います。

ただ、3つの思考をバランスよく回せる人って、本当に希少です。例えばアート思考が強い人は、自分のやりたいことに情熱を注ぐタイプ。一番マネジメントが難しい人材です。失敗して怒られても落ち込むだけで終わらず、反省せずにまたやる(笑)。でも、その突き抜けた感じがアート思考の特徴です。

一方、デザイン思考が強い人は、相手や社会のことをよく考えるタイプ。物事の本質を深く読み解き、丁寧に進める傾向があります。そしてロジカル思考が強い人は、構造的に物事を捉えて、筋道を立てて考えられる。

なので、人材を見極める時に、このアート思考・デザイン思考・ロジカル思考という3つの軸で見ていくと、それぞれの特性が見えてきます。どれが優れているという話ではなく、どの思考が強いかによって適した役割や育て方も変わる。そうやって考えると、人材の見方が少し違ってくると思います。

主催:ビザスク

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