一代で東証プライム上場を成し遂げた木下勝寿の仕事術や、北の達人コーポレーションの社員の働き方などを通して、「リアルな北の達人コーポレーション」をお届けする「北の達人チャンネル」。今回は、お金儲けするための社会のセオリーが学べるオススメ書籍を紹介します。本記事では、ビジネスで原価を抑えて利益を上げる秘訣をお伝えします。
ビジネスや事業のセオリーがわかるオススメ書籍
木下勝寿氏:次以降に紹介する本は、かなりビジネス寄りの本になります。世の中のビジネスや事業で知っておいたほうがいいセオリーについて書かれた本を2冊紹介したいと思います。人によっては若くても20代で管理職になっていたり幹部になっていたりすると思います。
なっていない人でも、世の中のビジネスや事業のセオリーってこうなっているんだなということを知った上で仕事をするのと知らずに仕事をするのとでは、大きく成果の違いが出てきます。なのでぜひ、(それを)理解するために読んでほしいなと思っています。
まず紹介したい1冊目は『金儲けのレシピ』というタイトルの本です。この本は(一見)非常に怪しい本です。東京大学在学中に起業して成功し、「謎のお金持ち」と言われている、ある人が書いた本なんですね。この方は頭が良く、いろいろと試行錯誤をしながら、世の中には儲かるビジネスと儲からないビジネスがあることを知りました。その儲かるビジネスについて、レシピとして公開した本なんですね。
非常に怪しいタイトルなので、私も「うさんくさそうだな」と思っていました。ですが、内容を読むと非常に本質的で、とてもわかりやすい内容だったんですね。実は(この本を)読んだ後に、この作者の方は私の知り合いの知り合いだったことが偶然発覚しました。実際に1度お会いしたんですけれども、とてもすばらしい方だったんですね。
なので自信を持っておすすめできる本かなと思います。詳しくはぜひ読んでほしいんですが、どんなことが書いてあるのかを、ちょっと4つぐらい紹介したいと思います。
『金儲けのレシピ』を紹介
まず1つ目。ビジネスにおいて、普通の値段で仕入れて高く売るのと、安い値段で仕入れて普通の価格で売るのってどちらがいいかという話なんですね。結論は後者です。安い値段で仕入れて普通の価格で売るほうが儲かるよと。なぜかというと、売値価格はオープンになっています。誰でもわかる、見える情報です。
ですが、仕入れ価格はオープンになっていないんですね。つまり、普通に仕入れて高く売る状態は、売値はオープンなので、高い値段で売れているのが見える状態なんです。ということは、競合から見ると「あの商品は高い値段でも売れるから人気なんだな」とすぐにわかります。普通の価格で仕入れて高く売る部分に関しては、競合が「あの商品は高く売れているんだ」と参入してきやすくなるんですね。

一方で、安い値段で仕入れて普通の価格で売っている場合は、売値が普通の価格なので、それがどれぐらい売れているのかがあまりわからないんですね。ところが、普通に売れているだけでも仕入れの価格が安いから実は儲かっているんですね。仕入れ価格が安いのはわからないので、競合他社に一切バレないということです。
なので、売値を高くするよりも仕入れ値を安くする努力をしたほうがいいという話ですね。普通の価格で仕入れて高く売るよりも、安い価格で仕入れて普通に売っているほうが、儲かっていることが(競合他社に)バレにくいので競合の参入を防ぐことができます。そのために努力をするのが仕入れ値を安くすることなんです。
「消費者に売るビジネスじゃなくて、消費者から買うビジネスを狙え」
けれども次の問題は、安く仕入れるためにはどうすればいいかです。「消費者に売るビジネスじゃなくて、消費者から買うビジネスを狙え」と書いてあるんですね。多くのビジネスは、消費者に売ります。ところが質屋さんやリサイクルショップなどの一部のビジネスは、消費者さんから買っているんですね。消費者から買った上で、別の消費者に売っているんです。
消費者というのは、文字どおり消費のプロですよね。ふだんからいろんなものを買っています。消費のプロなので、物を買う時は1円でも安いところで買おうとします。つまり価格感応度が高いんですね。消費者が消費者として商品を消費する場合、「これはいくらだろうな?」という価格感応度の感覚がすごく強くなります。
ところが消費者が(物を)売る立場になった場合、消費者は売るプロではありません。ブックオフに本を持って行きました。「これは全部で1円にしかならないですね」となっても、けっこう持って来るのも面倒くさかったから、1円でも売っちゃいますよね。
消費者は高く売るプロフェッショナルではないので、売る時にはどうしても安く買われてしまいます。めったに売る機会もないので価格相場ももちろん詳しくないです。1円が低すぎるということもぜんぜんわからないです。
一方で、消費者から買う側の買取業者はよく買い取っているので、完全にプロとして優位なんですね。なので仕入れをする際は、生産者から買って仕入れるビジネスよりも消費者から買って仕入れるビジネスのほうが圧倒的に安い仕入れができるんです。なので安い仕入れをすることによって利益が出せると書いてあります。「なるほどなぁ」という感じですよね。
「お客さまに作業をさせるビジネスが儲かる」
3つ目。「お客さまに作業をさせるビジネスが儲かる」と書いてありました。家具の原材料は、棚でいうと板とネジと棒なんですね。実は原価はそんなに高くありません。ところがどこにコストがかかるのかというと、実は組み立てる人件費にコストが高くかかるんですね。これをIKEAは、DIYということで組み立て自身をお客さまにしてもらっているんですね。
一番コストがかかる部分を省くことによって利益を出しているんですね。なので、みなさんは「棚を買って自分で組み立てた」と思っているんですが、実はIKEAは「板とネジと棒を売っている」と思っています。思っているかどうかは知りませんけれどね。板とネジと棒と組み立て方の説明書を売っていると考えると、実はぜんぜん原価が変わってくるということですね。

例えば飲食店においても、「焼肉屋さんが儲かる」と書いてあったんです。焼肉屋さんも(お客さまが)自分で調理しているんですね。まず焼肉というのは、換気の問題で家では作りにくい料理である。だから家でやるのではなくて、焼肉屋にわざわざ行って自分で焼きます。
仕入れでも、どういう牛を仕入れるかによってけっこう優位性を築けます。(また)お酒の注文が出やすいんですね。飲食店のお酒って利益率が高くて儲かるんですよね。というふうに焼肉屋さんは儲かる要素がすごく詰まっています。なので同じ飲食業にしても何の飲食をやるかによって儲けってぜんぜん違いますよということなんですね。
「甘いもの」が非常に儲かりやすい理由
4つ目ですね。「砂糖、小麦粉、脂肪の3点セットは原価率が低くて中毒性が高い」ということです。砂糖、小麦粉、脂肪の3点にイメージを持たせるとめちゃくちゃ儲かる。イメージというのは、クレープ屋さんやタピオカ屋さん、パンケーキ屋さんは全部原料がほとんどこの3点なんですね。非常に低原価なので当たればものすごく儲かるということです。
最近当たっているお寿司屋さんは、シャリに砂糖をまぶしているらしいんですね。シャリが甘いらしいです。これがすごく病みつきになって中毒性があるらしいんですね。それぐらいおいしいらしいです。とにかく甘い物は原価が安くて中毒性が高いので非常に儲かりやすいビジネスだということです。

「儲かる」という言葉ばかり言うとすごく下世話な感じがします。けれども同じ努力なら、より儲かる努力をしたほうがいいですよね。ということで、これ以外でも儲かるレシピが書いてあるので、ぜひ読んでほしいなと思います。
新規事業で知っておきたい視点
新規事業をやる時にこういうことを知らずにやるのと、知ってやるのとはぜんぜん(スタートラインが)違いますよね。例えば飲食店をやるにしても、「僕はこれが好きだから、これをやります」よりも、先ほど言ったように飲食店で儲かる条件というのがバーッとあった時に、焼肉屋が最適だと知っているほうが有利な立場で新規事業を始められると、その本では言っていました。
何かで読んだんですけども、以前、日本マイクロソフトの社長をやっていらっしゃった成毛(眞)さんが、「今からご自身でビジネスをやるとしたら、何をしますか?」と問われ、「鉄板焼き屋」とおっしゃっていたんですね。理由は一緒なんですよ。「材料を与えたらお客さまが全部自分でやってくれて、価格も高く取れる」みたいなね。
本当の経営のプロでもやはりこう見ているということで、ぜひ読んでほしいなと思います。すごく読み物として楽しいと思います。