シリョサク株式会社代表・豊間根青地氏と外資系IT企業の岩本紘佳氏が、説明上手になるためのヒントを紹介。「説明は山登り」という発想と「聞き手・メインメッセージ・起こしたい変化」をそろえる「キメヘン」の考え方で、言いたいことが伝わるコミュニケーション術を語ります。
説明が上手な人はどうやって考えているのか
豊間根青地氏(以下、豊間根):仕事をもっと。
岩本紘佳氏(以下、岩本):おもしろく。
一同:「シリョサクTV」です。お願いします。
豊間根:今日は説明の仕方を話したいなと思います。説明って、「この人の説明はうまいな」という人と、「この人の説明はわかりづらいな」という人がいるじゃないですか。僕はたぶん、説明が比較的得意なほうなんですね。
岩本:めちゃくちゃわかりやすいと思います。
豊間根:そういう説明がうまい人がどういうことを考えて、どういうイメージを持っているのかを簡単に説明する動画にできればと思っています。
流れとしては、説明をする時に僕が頭の中に持っているイメージの話と、お題を使ってヒロカに実際に説明をしてもらって、それをベースにディスカッションする感じで進めていきたいなと思っています。
相手がどこまでわかっているのかを理解する
豊間根:まず「説明する時にどういうイメージを持っているか?」なんですけども、僕は説明というのは山登りだと思っています。山登りは好きですか?
岩本:好きです(笑)。
豊間根:(笑)。どういうことかというと、要は、人がある場所にいて、「よいしょ、よいしょ」と(山を)登っていって、ある高みまで連れて行く。この行為が説明なんですね。なぜこの概念が大事かというと、「そもそも、まずこの人がどこにいるのか」「どこまで連れていきたいのか」によって、説明の仕方ってぜんぜん変わるんですね。
岩本:そうですね。
豊間根:それで、例えば現在位置を間違えると、まず俺はここにいるのに、ここから説明を始められちゃう。(例えば)「カーボンニュートラルって何なのか?」がわかっていないのに、「具体的に何キロ削減します」って言われても、「何を?」みたいなことがよく起きるんですよ。
逆に説明されて「いや、もうそれはわかったから、早く次にいってもうちょっと具体的な話をして」ということもあると思うんですね。これって結局、現在位置がどこにいるかを見誤ると起きる。一方で、このゴールを間違えても説明ってわかりづらくなるんですね。
相手は何を知りたいのかを見極める
豊間根:例えば、あるサービスの説明をされました。「確かに良さそうだね」と思っていたら、「じゃあ、どうですか?」と言われました。「いや、『どうですか?』と言われても、それはどのくらいのスケジュールで、いくらかかるのかがわからないと何とも言えないよ」とか。
逆に、今はセミナーだからサービスのコンセプトや概要がなんとなくわかればいいのに、すごく細かい料金プランの話をされて、「そこまで細かくなくていいよ」と思ったりする。こういうところが、説明をわかりづらくする要因なんですね。

だから「今、相手がどこにいて、どこまで連れて行きたいか」をちゃんと明確にして、それをちゃんと理解に必要な間のポイントを(リストにして)、潰す要素を順番に説明していくことを意識すると、けっこうわかりやすくなります。
ヒロカは説明が得意なほうなので、そういうイメージを持って話していると思うんですけども……。
岩本:いや、どうかな(笑)。
伝える相手によって説明がどう変わるか
豊間根:その概念を前提として、今からヒロカに「人生ゲーム」をお題にして、ちょっと説明をしてもらいたいと思います。

シーンが2つあります。1つ目は、聞き手は外国人留学生。どこにいるかというと、まず「人生ゲーム」なんていう言葉をまったく聞いたことがありませんと。日本語はわかる方なんですけども、外国の方なので、場合によっては「人生」と「ゲーム」というのもあまりわかっていないかもしれないですね。「人生ゲームというのは、何それ? 人生のゲームってどういうこと?」と思うぐらいの方ですと。
どこまで連れていきたいかといったら、「人生ゲームとは何なのか? どういう特徴があるのか?」を理解してほしいというのが1つ目のシーンです。

2つ目のシーンは、ヒロカの大学の同期5、6人。それでどこにいるかといったら、みんなさすがに概ね「(人生ゲームは)聞いたことがありますよ」と。なんだけど、人生ゲームをプレイしたことがない人、名前だけは聞いたことがあるぐらいの人もいますと。これに対して「今からさっそくプレイし始めたい、みんなで遊び始めたい」というところまで持っていきたい。
そういう2つのシーンを定義した時に、人生ゲームの説明がどう変わるのかをヒロカさんに実演していただきます。ヒロカさん、準備はよろしいですか?
岩本:はい。
「人生ゲーム」を外国人に説明するとしたら?
豊間根:じゃあ、それでは私が今から外国人留学生をやりますので、人生ゲームの説明をよろしくお願いします。
岩本:ねぇ、「人生ゲーム」って知っている?
豊間根:人生ゲーム? 何それ?
岩本:ボードゲームなんだけど、ボードゲームはわかる?
豊間根:わかる。
岩本:ボードゲームなんだけど、日本でけっこう人気のボードゲームで。どういったゲームかというと、「人生ゲーム」という名前に由来している部分として、初めのスタートからゴールまでにどうやってお金持ちになるかというゲームなの。
豊間根:へぇ、おもしろい。
岩本:だから、人生の縮図みたいなゲームだから「人生ゲーム」という名前がついていて勝ち負けが決まるんだけど、「最後に一番お金を持っていた人が勝ち」のゲームなの。
豊間根:じゃあ、本物の人生と一緒ということ?
岩本:うーん。それはちょっとどうかわからないです(笑)。
豊間根:(笑)。ちょっと要らんボケをしてしまった。
岩本:要らんボケをしているけれども、その縮図みたいな感じで名前がついたゲームになっています。
豊間根:へぇ。なるほど。
岩本:すごくナチュラルにタメ口を使っちゃいました(笑)。
「ゲーム自体は知っている」人に説明する場合
豊間根:(笑)。ロープレ(ロールプレイング)ですからね。
続いて2つ目のシーン。大学の同期と、さっそく人生ゲームを遊び始めたいというシーンで、じゃあ、ヒロカさん、説明をお願いします。
岩本:じゃあ、みんなで人生ゲームをやろう!
豊間根:やろう! ピース!
岩本:人生ゲームはわかる?
豊間根:名前は聞いたことがある。
岩本:(私が今)持っているこのボドゲなんだけど、最初は車に人を入れてみんなでスタートするの。それでゴールとしては、一番お金を持っていた人が勝ち。それで道中で家を買ったりとか、結婚したりとか、いろんなイベントがあるの。そこでお金をもらったり、お金が出ていったり、仕事をリストラされたりすることがあるから、それをうまく切り抜けて最後に(一番)お金を持っていた人が勝ちというゲーム。
豊間根:なるほど。すばらしいですね。
どんなゲームかの前に「ボードゲーム」だと伝える
豊間根:ということで、ヒロカさんが「今どこにいるのか」と「どこまで連れて行きたいのか」を意識しながら説明してくれたと思います。それぞれでどういうことを意識しながら説明してくれたのか、まず1回目のシーンから教えてもらえますか?
岩本:外国人留学生のパターンの時は、どういったゲームなのか概要をざっくり伝えるのが自分の目的でした。なので「どうやったら勝てるのか」と「そもそもなんで人生ゲームという名前になったのか」にフォーカスをして話してみました。
豊間根:いいですね。あとヒロカはけっこう無意識にやっていたかもしれないけど、まず「ボードゲームです」という表現を使っていたよね。もしかしたらテレビゲームとか「Nintendo Switch」のソフトかもと思っているかもしれない。だから、「いやいや、電気を使わない、テーブルの上でやるボードゲームだよ」ということを前提として、全体感として押さえていたのがすごく良かったんじゃないかなと思います。
続いて2回目はどういうことを意識して説明しましたか?
岩本:2回目は「実際にやろう」というところまで持っていかなきゃいけないので、もうちょっとルールを細かく説明しました。例えば、「家を買ったり結婚したりするイベントがあります。それで、結局勝つのはお金を(一番)持っていた人」。ゲームだと「先に着いた人が勝ちなんじゃないか?」みたいに捉えられやすいので、そうならないように意識しながら説明をしました。
あと、2つに共通して言えるのが。「わかる?」とか「ここまではわかったかな?」と確認をするようにはしていました。
「お手本」で相手の行動を促す
豊間根:いいですね。ということで、前提が違うと同じトピックであっても説明する内容がぜんぜん違うことがわかったと思います。ちなみに2つ目のシーンだったら、俺だったらたぶんアクションまでいくと思う。
岩本:「やってみよう」の(アクション)?
豊間根:そう。まぁ見りゃわかるんだけど、具体的に何をしたらいいかというと、「手番が順番に回ってきて、このルーレットを回して、出た数字に応じて駒を進めていく。要するにすごろくだよ」まで言えると、よりイメージが湧く。お手本的にはそこまでいくといいかなというのと。
さらに言うと、「最初の職業選択がけっこう条件を左右するから、ここはめちゃくちゃ重要だから気をつけてね」まで言うかな、というのはちょっとありました。
より具体的に行動やアクションを起こすことを求める場合には、「最初の一歩が何なのか?」まで踏み込むといいかなとはちょっと思いましたが、すごくいい整理じゃないかなと思って聞いておりました。さすがヒロカさんですね。
岩本:ありがとうございます。
(一同拍手)
「キメヘン」を意識してコミュニケーション上手に
豊間根:たぶんみなさんも「いや、そりゃそうだろ」と思いながら聞いていると思いますが、意外と我々はこれができていないんです。
岩本:意外と難しいですね。
豊間根:意外とミスる。シリョサクではこれを「キメヘン」といって、「聞き手」「メインメッセージ」「起こしたい変化」を明確にしましょうという表現を使います。まず、相手がどういう状態にあって、それをどういう状態に持っていくために、今自分はこの話をしているのか、あるいはこの資料を使っているのかを常に明確にする。
こういうことは、仕事を円滑に進めたり説明をうまくしたりする上ですごく重要なので、みなさんもぜひ、今日の山登りのイメージを持ってわかりやすい説明をしてみてください。