事業成長を牽引してきたリーダーたちと共に、常識に捉われないB2Bマーケティングを学び、革新的な洞察をお届けするカンファレンス「B2B Marketing Breakthrough」が開催されました。本セッションでは、The Breakthrough Company GO 代表取締役 CEOの三浦崇宏 氏と、ノバセル株式会社代表取締役社長の田部正樹氏が登壇。本記事では、“型通りのやり方”の限界と突き抜ける人の考え方について語ります。
業界のナンバー1になるには、何かしらの「異常値」を作る
三浦崇宏氏(以下、三浦):そういう一見ビジネスモデルの中に書き切れない、その企業を愛する仕組みとか、その企業を尊敬する仕組みとか、「なんかその企業と一緒に仕事をしたいな」って(思わせるもの)。特にノバセルの場合は、やはり田部さんというキャラクターが出ていって無料で壁打ちし続けるという、ああいった業界全体に対するギブの精神や、そういったいろんなものが総合して選ばれている。 結局、人間が意思決定する時は、そういう小さいことの積み重ねで。アンケートを取ると、「安かったから」とか「UXが良かったから」というのに○が付いて答えになっちゃうんだけれども、実はその○と他の×の間に見えない○がたくさんあって、そこで意思決定されるということを忘れちゃいけないなというのが、ここ最近ずっと思っていることですね。
田部正樹氏(以下、田部):でも、めちゃくちゃそうですね。BtoBは特に会社を選ぶ時に、結局ムダを作る経営者みたいな人たちがいて、狙っていないのに、実はそれがうまくいく秘訣になっていることはあるじゃないですか。
三浦:ありますよね。
田部:直近で言うとBtoB SaaSは4~5年前に盛り上がったので、「この市場、イケてる」というか「この課題を解決したいな」ということで入ってきた今いい感じの人たちは、頭のいいスマートな人たちが多いんですよ。
だから逆に言うと、ビジネスはスマートに一定のところまで持ってくるんですけど、「突き抜けるのがなかなか難しい」という相談をけっこう受けていて。その時に、論理的にやり尽くしている、型どおりやってきても限界はやはりあって、どこかで突き抜けないといけない。
うちのラクスルで言うと、周りからみるとクレイジーだと思われるほどテレビCMに突っ込みましたし、ノバセルも突き抜ける時に、ある種、業界をざわざわさせるようなことをしました。みたいなことで、おっしゃるとおり、「ムダ」という言い方がいいかどうかわからないですけど、クリエイティブな何かジャンプがないと、1個突き抜けられないみたいな話はけっこうありますよね。
三浦:そうですね。70点、80点じゃなくて、「業界のナンバー1になっていく」みたいな本当に突き抜けたい時に、やらなきゃいけないことは大きく2つあると思っていて、「異常値」と「全体最適」という言い方を僕はするんですけど。
まず1個は、異常値を作るということですよね。例えば、まさにCMを突っ込みまくるとか。僕の場合は言ってしまえばBtoBのクライアントサポートの会社なので、いわゆるBtoB やSaaSみたいなものとはちょっと違いますけど。
やはり僕も田部さんも、1回自分が露出しまくるとか、あるいは何か1つ、自分たちが赤字を切ってでも、とんでもないホームランの成功事例をわかりやすく作るとか、そういったわかりやすい異常値を作るのは、絶対やったほうがいい。
「部分最適」を目指して失敗するケース
三浦:もう1個は、今日メディアで初告白するんですけど、僕、クマ取りをしたんですよ。
田部:おお。確かに若返りましたね。
三浦:若返ったでしょう? 僕のX(旧Twitter)とか本とか読んでくれているお医者さまに、手術をする直前に「三浦さん、ちょっと術前に確認しておきたいことがあるんですけど」と言われて、「はい」と。
「リスクがあって」「何ですか?」「かわいい顔になっちゃう可能性があるんですけど、ビジネス的にどうですか?」と言われて、「大歓迎です」みたいな謎のやりとりをした上でこうなったんですけど。
これは何の話かというと、当たり前ですけど、整形手術は例えば(その医師が)目がうまいからといって目だけいじるとか、鼻がうまいからといって鼻だけいじるじゃないですか。鼻がめっちゃうまい人に鼻だけやらせると、鼻だけめちゃめちゃきれいになるんですよ。でもそうすると、全体の中で浮いちゃって、仕上がりとして変な顔になっちゃうんですよ。
田部:そうですね。
三浦:だから、鼻だけやった後に、今度は「やっぱり変なので、目も」と言って、目と鼻だけやると、また変になっちゃって、「今度はほっぺたも」みたいなかたちで、どんどん重課金勢になっていくところがある。
これはつまり何が言いたいかというと、1個ずつのポイントの改善だけだとバランスがどんどん崩れていっちゃう。自分のビジネスというエコシステム全体の中で、どういう配置が最適かを考えながら施術していくことがすごく大事だなと思っています。
昨今のマーケティングとかビジネスモデルを作っていくと、部分最適を目指して、全体としてのバランスを損なってミスっているみたいなことがけっこうあるなと思っていて、ここもすごく重要なポイントだなと思いますね。