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B2B Marketing Breakthrough(全4記事)

あえて顧客を名前で呼ぶスターバックスの戦略 一見ムダだが愛される「企業らしさ」の価値 [1/2]

事業成長を牽引してきたリーダーたちと共に、常識に捉われないB2Bマーケティングを学び、革新的な洞察をお届けするカンファレンス「B2B Marketing Breakthrough」が開催されました。本セッションでは、The Breakthrough Company GO 代表取締役 CEOの三浦崇宏 氏と、ノバセル株式会社代表取締役社長の田部正樹氏が登壇。本記事では、BtoBビジネスの初期段階で重視すべきポイントや、一見ムダに見えるが愛される「企業らしさ」の重要性について語ります。

「型」や「効率重視」のやり方で平均点は取れるが、突き抜けられない

田部正樹氏(以下、田部):せっかく見てくれている人がいるので、「これをしたほうがいい」みたいなものを伝えていけるといいなと思っているんですけど。まずBtoBの企業の会社が、自分たちはどういう存在なのか、どのステージにいるのかということを、客観的に明確に理解したほうがいいかなと思うんです。

それを理解しないと、打ち手がおかしくなってくる。ただ、それはやはり自分たちでは理解できないじゃないですか。といった時に、僕は数年前まで、今でも大事にしているんですけど、一応、型とか効率を愛してきた。

やり切った先に何があったかというと、それって平均点は取れるんですよ。ただ、結局本当に勝っていこうとすると、平均を突き抜けていかないといけない。そういう時に、例えば広告のテレビCMで一番成果が出るものは、「見たことない」なんですよ。この指標が高いものは、おっしゃるとおり、やはり成果が出るんですよ。

といった時に、やはり客観的に認識をすること。あと、「これから新しく、自分たちが他と比べられないような存在になるにはどうするべきか」みたいな話をしようとした時に、例えば1つのアイデアとして……。今日、三浦さんがいるからというのもあるんですけど、そういう早めのタイミングでクリエイターとかをちゃんと入れて、クリエイティブな会社を作っていったほうがいいと思うんですね。

事業の初期こそクリエイターを入れる


田部:
つまり、経営者とマーケターとビジネスパーソンだけでBtoBを考えがちなんだけど、最初のほうに、けっこうクリエイティブな発想を入れていきながら、「うちの会社はどうしていきたいんだっけ?」「どうしたらジャンプできるのか?」「どうやったら差別化できるんだっけ?」みたいなことをしていくのが重要だと思うので。その一例でいくと、ラクスルという会社は意外とそれで。

三浦崇宏氏(以下、三浦):はいはい。そうですね。

田部:名前もそれなりに最初から考えているし、かなり早いタイミングでコピーライターとかを入れているんですよね。やはり名前とロゴがけっこう秀逸で、あれが大衆化しているというか、マス化しているんですよね。その上で、ちょっとおしゃれとか、そういうのもあったりして、あれはけっこううまくいったな。

ノバセルという会社もけっこうそれを意識していて、僕らが一番変わったタイミングは、タクシーCMで大手代理店がめちゃくちゃ嫌がるようなCMを流した時。

三浦:やっていましたね。いろんな大手の代理店が企業にプレゼンするんだけれども、担当者がボンクラすぎて、ぜんぜん効果を可視化することを考えていなくて、上司の女性が困惑するという。あれ、めっちゃいいCMでしたよね。

田部:そうです。あれで、僕らはステージがけっこう変わったんですね。あれはクリエイティブの力だと思うんですよ。という意味で、ビジネスのことはみんな考えるし、型のことはめちゃくちゃ考えているんだけど、自分たちだけでは考えられないようなクリエイティブな発想を初期に採り入れるのは、けっこうおすすめですね。

サービスの差分がなくても「選ばれる」会社

三浦:ありがとうございます。まさにそれは僕もすごく思っていて、自分たちのサービスが最終的にテクノロジーとかでけっこう進化していった時に、意外と差分が作れなくなっていっちゃう時がありますよね。

そうなった時に、初期構想の段階で見ているものがぜんぜん違うと、その後の確度がぜんぜん変わってくるので。経営者と営業をしっかりやり切れるプロデューサーと、そもそもこのサービスに関するユーザーとの接点を作る、ブランドを作るクリエイティブの人がいると強いですよね。でも現実的に、今BtoB SaaSを作る人たち、BtoBのビジネスを作る人たちは、最初は何から始めているんですかね?

田部:ビジネスモデルですよね。誰からお金をいただくのか。どういう商品を誰に売っていくのか。これを考えるのが……。

三浦:普通に考えますよね。まずコアがね。でもその時に、わりと感情の動きとか、「ユーザーが何に喜んでいるんだっけ?」「なんでこのサービスを選んでいるんだっけ?」みたいな、PL、BS、お金の流れだけでは意外と見えてこない、人間の感情とか組織の……結局、組織も人間じゃないですか。「人間がなぜそれを選ぶのか?」ということに対する生々しいメカニズムに対して思いを馳せる部分が減ったりしますよね。

田部:そうですね。

三浦:だからやはりクリエイターと呼ばれる人が必要、と言うと、ちょっとポジショントークみたいに見えちゃうから……今、田部さんも気を遣って言ってくれましたけど。だから、そもそもの人間を記号として捉えないという。担当者の人がいて、意思決定者の人がいて、経営者の人がいてという、「人間がなぜそのサービスを選ぶのか?」ということを、解像度高く考える。

それは例えば、いわゆる顧客に対するN1インタビューみたいなこともそうだと思うし。生身の人間が選ぶ、生身の人間が買って使うサービスとして考えるというところから目を離しちゃいけないなという感じはありますね。

柳井正氏や三木谷浩史氏も重視するクリエイティブの力

田部:そうです。でもやはり僕は、クリエイター(が必要だということ)は本当に思っていて。理由は、例えばラクスルもそうだったし、マネーフォワードも初期にコピーライターの渡辺潤平さんが入っています。「お金をもっと前へ」って、めちゃくちゃいいコンセプトだと思いますし、freeeもかなりクリエイティブな思想がめちゃくちゃ強い。

三浦:freeeは、佐々木(大輔)社長がもともと博報堂ですからね。僕、同じ部署だったんですよ。

田部:あ、そうなんですね。

三浦:僕が入る頃にはもう、辞めちゃってたんですけど。

田部:SmartHRとかもそうですし。あと、勘定奉行とか昔からやっていますけど、あれもある種、すごくクリエイティブの思想が強いと思うんですよ。といった時に、やはり結局、特にプロダクトの機能なんて、どこも横並びになっていくわけですよね。

なので、誰を集めるかという組織づくりや、どういう人に選ばれるのかも含めて、「これをやらない」とか「これをやる」とか、「俺たちはこういう会社なんだ」みたいな、まさにそれがブランドだと思うんです。

それがBtoCは、比較的顧客も変わるから、コロコロ変えていいじゃないですか。だから、ある種、3年か2年でキャンペーンを変えていくとか、リブランディングとかやりますけど。BtoBは1回変えたらなかなか変えられないから、初期の頃に考え抜いて考え抜いて決める必要が絶対にあると思っています。

そこに、「BtoBじゃないけど、企業のブランディングとかをちゃんと考えようぜ」ということで、経営者の人は、例えば柳井(正)さんや三木谷浩史さんは佐藤可士和さんを起用し続けていて、やはりクリエイティブを重視しているわけですよね。

なので僕は、今日はBtoBマーケティングというと効率の話もあると思うんですけど、結局そうじゃないアートの部分が今、型を越えてめちゃくちゃ重要になってきているんじゃないかなとは思っているんですね。

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