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B2B Marketing Breakthrough(全4記事)

「ビズリーチ」のCMを真似して失敗する企業 GO三浦崇宏氏が語る、BtoBマーケでありがちな勘違い [2/2]

「ビズリーチ」のCMを真似して失敗する企業

三浦:ただ、BtoBマーケティングのことを話す時に、タクシー広告があって、いくつか型化されていくというのがこの何年間かの風潮だったと思うんですけど。でも、人間はやはり感情が動かなきゃ意思決定しないわけですよね。「めっちゃ好き」「めっちゃおもしろい」「めっちゃ愛おしい」、そういった感情が動くから人間は意思決定する。

やはりテレビCMを作る時とかは15秒しかないので、その15秒の中で感情を動かすにはどうすればいいかというと、1回(視聴者を)驚かさないといけない。クリエイティブの仕事で「新しい」とか「今までにない」ことがすごく重要視されるのは、実はそこがポイントで。

1回見たことがあるものには、人間は驚かない。驚かないと、感情が動かない。だから、それによって物を買ったり、行動変容が起きなかったりすることが問題になっていて。クリエイターの変なこだわりで、「とにかく新しいことをやりたい」と言っているわけじゃないんですよ。これは田部さんは、もちろんわかっていらっしゃると思うんですけど。

翻って何が起きているかというと、例えばビズリーチ。北尾(昌大)さんというCDが電通時代に作ったビズリーチの型が、1つの有名な型になっていますけれども。ああいうBtoBのセールスの商品の動画表現のかたちが1つの型になっていて、「あれをずっと真似したら、ある程度うまくいくんじゃないか」という都市伝説が広がって、みんなが真似して、意外に思ったよりうまくいかないという。

僕はそれを当時、冷ややかな目で見ていて。「それはそうだろう。人間は驚かないと感情が動かない。感情が動かないと意思決定しないから、一度やられたことをまたやっても効きは弱くなっていくよ」と思いながら、ずっと見ていたんですよ。

大手の「型」を真似してもうまくいかない理由

三浦:近年で言うと、BtoBマーケティングの型化がどういうふうに進化しているのか? あるいはそれの信頼性がちょっと揺らいでいるのかでいうと、今どういう状況になっているんですか?

田部:そもそも、今「型」と言われているものは、Salesforceや超大手企業が作ってきた型なんですよ。それって要は、「リード」と言われている問い合わせが死ぬほど来ますという。「型化しないとみんな効率が悪いよね」という前提で作られたのが、例えば「THE MODEL」というものだったりする。それを、リードも来ないような、営業を超がんばらないといけない会社が導入したって……。

三浦:(笑)。スタートアップのね。

田部:「そんな効率化より、先にやることがあるでしょ」みたいな話があるんですよ。だから「型」と言われているものは、いわゆる型を作らないといけなかった大手が作ったものじゃないですか。それをベンチャー、スタートアップが真似していいのかというのは、そもそも懐疑的です。

三浦:なるほど、なるほど。

田部:なので、ビズリーチはビズリーチのステージがあったはずで、ラクスルはラクスルのステージがあってうまくやってきたものがあるのに、それを違う会社が採り入れるのはどうなのか。例えばタクシーCMも、導入企業の事例インタビューみたいなものが今でも多いじゃないですか。あれはあれで有効な手法だと思いますけど。

みんな、「うちもあれをやりたい」みたいなのはあるんですけど、それはただ目立たなくなるだけだし、会社のステージも違うので。やはり型は常に存在するんですけど、完全に同じステージの型だったら使えばいいし、そうじゃないものを使っても結局、型にもなっていないとは思いますよね。

“BtoBにはクリエイティビティは必要ない”という勘違い

三浦:そういうことですよね。要は、当然スポーツでも1つの型みたいなものはあるけれども、当たり前だけど、ボディのサイズだったり、骨格のフレームだったり、そもそも持っている技術だったりを変えていかなきゃいけないのと同じで。

自分のビジネスの特性だったり、成長ステージだったり、市場環境だったり、もっと言っちゃえば世の中の空気だったり、そういったものでけっこう変わっていくということは、大前提で理解しておかないといけないですよね。

田部:そうです。だから、大谷翔平の打ち方は、野球のプロからすると「おかしい」と言われているので。あの体格とあの力があって初めて成り立つので、あれを真似しても絶対ダメみたいな。

toCでもあるかもしれないですけど、BtoBの場合は、やはりみんな上を目指しているので、「SmartHRのあれをやりたい」「Salesforceのあれをやりたい」みたいなことが起こってくるんだけど。

三浦:「落ち着け、落ち着け。そんな身長も体重もないだろう。筋肉量もないだろう」と。

田部:だから、自分に合ったものを選ばないといけない。そうすると結局、自分たちがオリジナルを作っていかないといけないんですけど。

「toCに比べてクリエイティビティがあんまり存在しない」とみんなが思っているがゆえに、「型とかを学んで、自分たちに落とし込んでやっていくことが正義なんじゃないか」という人たちがけっこういるんですけど。意外とぜんぜんうまくいってなくて、オリジナルでやってきた人たちが、けっこううまくいっているんだろうなという感じがしますよね。

「敵を知る」よりも大事な「己を知る」こと

三浦:そこですよね。僕はこの間、『コテンラジオ』の深井龍之介と会話をしていたんですけど、彼が言っていたすごくいい言葉があって、孫子に「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉があるじゃないですか。

田部:ありますね。

三浦:あれはつい、「敵を知り」のほうにウェイトが置かれちゃって、「お客さまのことをちゃんと知らないといけない」とか、あるいは「競合のサービスのことをちゃんと把握しておかないといけない」とか、いろいろ考えちゃうんですけど。実は「敵を知り」の1個手前の「己を知り」のほうがすごく大事だという話をしていて。

要は、「自分のサービスの価値はいったい何だろう?」とか、「自分のサービスを本当に求めているお客さんはいったい誰なんだろう?」とか、「自分のサービスが向いていないお客さんは誰なんだろう?」とか、「今後、自分のサービスが伸ばしていかなきゃいけないところはいったい何だろう?」とか。

本当の意味での自分のサービス、自分のブランド、自分の会社に関する認知を、すごく的確にできている人はなかなかいないし、実はそれが超難しい。それができて初めてようやく戦略を立てられるという話がありました。自分に対する明確な認識や分析がないままに、自分とフレームもサイズもぜんぜん違う成功した企業の型を真似しても、だいたい事故るよということですよね。

田部:おっしゃるとおりですね。

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