マーケティングカンファレンス「B2B Marketing Breakthrough」より、株式会社GiftX Co-Founderの飯髙悠太氏、株式会社ベイジ 代表取締役 / CEOの枌谷力氏のセッションをお届けします。ビジネスインフルエンサーである両氏が、企業SNSを導入・運用するためのヒントや、SNSで事業に貢献するために必要な要素を語り合います。
SNS運用の“成功例”を見せる
細沼章弥氏(以下、細沼):仮に、経営者が「どうしてもみんなに個人としてSNSをがんばってほしい」と思った場合って、組織的にやるように仕掛けるのか。それとも、「自主的にSNSをがんばるようになったらいいかな」みたいな……。
飯髙悠太氏(以下、飯髙):僕はけっこう厳しいと思っちゃっている側ですね。ホットリンクの時も、前職のベーシックの時も、いろいろと仕組みでやろうと思ったんですけど、結果的に「やれる子しか採らないよ」みたいなところに集約してしまったので。だから、強制力を働かせてやるのは、かなりムズいんじゃないかなと。
「1日2投稿、絶対やりましょう」みたいなことは、やればできると思うんですよ。でも、それによって何を得たいかは別の話だと思っています。「得たい」ほうまでを期待値として持つんだったら、僕は難しいと思いますね。
枌谷:「みんなやりなよ。それ以上は任せる」みたいな指示では絶対に続かないので。超戦略的に全社員でやるんだったら、やはり1人は編集者みたいな人を立てて、「君は何月何日にこれを出してね」「君が書いたのどれ? 見せて。あ、それじゃ駄目だよ。これで出して」と、完全にマネジメントしてやる。
飯髙:そうやらないと駄目ですよね。
枌谷:これはこれで、いわゆるオウンドメディア運用ですよね。やり切ったらなんかありそうだと思うけど。そこまでやらないと、「みんなでSNSをやろう。はい、がんばって」では、うまくいかない。
飯髙:無理ですね。とりあえず、半年後に一番フォロワーを増やした人に、インセンティブをいくらみたいな。
枌谷:そうそう。「いや、要らないです。本業をがんばります」みたいになっちゃうので。
細沼:そうか。
飯髙:なので、会社から言われたというより、「自分は今、SNSが気になっているけど、がんばれてないんだよね」みたいな人は、身近な人たちがSNSで何かを得ています、みたいなことを体験したほうがやると思いますよ。
そうしたら、「あ、こんなに近い存在でも、こういうことが起きるんだ」ということを得られる。やはり人なので、会社から「やろう」だと、「いや、ちょっと」みたいなことはあるかもしれないですよね。
細沼:確かに。もう成果を出しちゃっている人を周りに固めるみたいな。
ベイジのオウンドメディア運用手法
飯髙:僕の知り合いでも、やらないと言っていたけど、「絶対にやってください。なぜならば」みたいに口説き切ってやってもらったら、すごいことになった方がいるので。
あっちは「やらない」を繰り返したんですよ。でも、だらだらとやっていたら、「あれ? なんか(反応が)来るぞ」みたいな、ちっちゃな体験の積み重ねはあると思います。そこはたぶん他と一緒だと思いますけどね。
枌谷:うちはXではやっていないけど、「ベイジの日報」という日報記事を全社員でやっています。一応、責任者をちゃんと決めて、最終リライトして、というやり方が一番(運用が)回っています。やはり、完全に任せてはいないですね。
飯髙:メンバーはちゃんと書いてくるけど、最終的には日報としてちゃんと体裁を合わせてみたいな。
枌谷:そうですね。ピックアップをして、「この人の何月何日の日報が良かったから取り上げます」みたいにして、文章の最終加筆はその人がやってアップするとやはり回っているので、責任者はちゃんと決める。
飯髙:それは回りますね。
枌谷:普通の多くの事業と同じですけどね。ちゃんと責任者を決めてマネジメントすれば、という感じです。
SNS運用の前に考えたい「誰に届けるか」問題
細沼:それはどの施策だとしても一緒ですね。最後にもう1個、お聞きしたいことがあって、ここまでSNSの話をいろいろ聞いて、いざ「事業に活かす」みたいに考えた時に、とはいっても、SNSに慣れていて「やれる」と思う人がいない企業がほとんどだと思います。
そうなった時に、「人材が来るまで待つ」なのか。強制しようと思ってもできないし、みたいな。そういう時って、どうしたらいいんですかね?
枌谷:マーケティングの基本で「Who」「What」「How」という話があるじゃないですか。結局SNSって、Howの話なんですよね。
細沼:確かに。
枌谷:だから、Howだけをなんとかしようとか、「うちはやれていないからやろう」と考えていても、本末転倒なことが起こるだけで。
まずは「誰に」「何を」を明確にすることが大事かなと思います。やれていないより、やれていたほうがいいっちゃいいので。まず、SNSが得意とか好きな人がいるならば、自由にやってもらいましょう。「やっちゃいけないことだけ決めてやらせよう」でいいと思います。
問題はそういう人がいない場合、意図的に作るべきかどうか。まず、いったん目的を顧客獲得とした時に、自分たちが取りたい顧客イメージを作らないといけなくて、要はマーケの話なんです。「この人はSNSを接点として接触できるのか?」という考え。
接触できそうだったら、「じゃあYouTubeがいいのか、Xがいいのか、Facebookがいいのか、LinkedInがいいのか」とかいろいろとあるので、「やはりXだよね」となってから、「じゃあXをテコ入れしましょうね。できる人を採用しましょう」なのか、社内でそれに近しいポテンシャルのある人を育てるのか。
この前段が無いまま、「したほうがいいよね」となると、事業とつながるかどうかは、本当に運次第になっちゃうと思いますよね。