SNSではポジション取りよりも、自然体かどうかが大事
細沼:お2人は、SNSでのポジションの取り方を考えながらやってきたんですか?
枌谷:やってない。
(一同笑)
飯髙:そう。だからこれ、ムズいんですよね。こういうテーマだけど、僕らは別に気にしていないみたいな(笑)。
枌谷:わからないけど、そういうやり方でうまくいく人もいるだろうし、仮に自分が誰かにアドバイスをするとしたら、「ポジションを意識しなよ」って言っちゃうと思うんですけど。
一方で、やはり自然に湧き上がるものじゃないと続かないし、リアリティも生まれない。そう考えた時に、ポジションは自分の仕事で作れば良くて、仕事でやっていることとか学んだことを自然に投稿すれば良い。だから僕は「SNS用のポジションを考えなくてもいいんじゃない?」と思う派ですかね。
細沼:ありのままで。
枌谷:そう。どちらかというと、仕事でポジションを作るほうが大事。
飯髙:確かに。ただ、今なおよく言われるのって、「何を投稿すればいいですか?」とか。
細沼:絶対に言われますよね。
飯髙:そう言われると、「あー、やめたほうがいいです」ってなっちゃうし。
細沼:(笑)。
飯髙:例えば、日々の生活で、「のどが渇いて水を飲む」って誰もがやる行為で、「それって考えてやりますか?」という話になってしまう。
それこそ僕が枌谷さんとしゃべっている内容で、「あの言葉が良かったな」と思ったら、自分の解釈を付け加えて投稿することが自然になっていればいいだけの話じゃないですか。
となれば、何かを考えるとなると、「今日はあと何投稿しないといけない」という、そのスタートがまず間違えているみたいな。
細沼:間違えているんだ。
飯髙:やっているうちに、「あ、こういう投稿だと反応が来るんだな」と。これは人によってまちまちだと思うんですけど、まず、(運用を)回さないと何もわからないところはありますよね。
100人以上にSNS運用を教えて、続く人は1割
枌谷:僕、一時期「Twitter道場」というものを趣味的にやっていて、100何人かは教えていると思うんです。だけど、続く人って1割ぐらいなんですよ。
その1割の何が共通点かというと、内発的な動機があるんですよね。「出したい」「見せたい」「しゃべりたい」。それがない人に技術を教えてやらせるのはけっこうムズくて。
飯髙:いや、そうですよね。
枌谷:もし本当にSNSをやる習慣を身に付けさせたいのなら、内発的動機をハックしないと。強制力とかインセンティブは、ちょっと限界があるなと思っていますね。
細沼:枌谷さんと飯髙さんは、そもそもなんでSNSをやろうと思ったんですか?
飯髙:僕は社会人スタートが2009年なんですけど、まさに「Facebook」、「Twitter(現:X)」が登場しているタイミングなんですよ。最初はただ流れで、「これ、おもしろそうだな」という感覚で始めただけですね。
枌谷:僕は2つぐらい切り口があって。Windows 95とかをリアルタイムで経験しているので、インターネットがない時代を知っているんです。だから、「そもそもインターネットを使うって、情報発信をすることだよね」みたいな。

例えば1998年ぐらいからずっと自分でホームページを作ったり、掲示板をやったり、デザインポータルサイトみたいなものを運営したりしていたので、情報発信が自然な行為だったというのがまずありますね。
もう1個は、すごく戦略的に、意識して内発的動機を高めたわけでもなく。当時、よくEvernoteにメモを書いていたんですね。「ん? これ、外に書くのも一緒じゃない?」という感覚がありました。だから今も「誰かにどうこうしてほしい」という欲求はそんなになくて、ただメモを外に出している。
細沼:確かに。そうかもしれない。
枌谷:メモなんですけど、外に出すとちょっとゲーム性ができて、「いいね」という点数がポンポン上がっていく。リアクションも付くから、「俺の思ったことで、こう思う人がいるんだ」みたいな気づきもある。「自分で書くより楽しいからやっているメモ」って感じですね。
飯髙:メモの話で言うと、これは名前を出して大丈夫なんですけど、昨年(2024年)、ビジネス本で一番売れた安達裕哉さんという方がいらっしゃるんですけど、彼は今、「Books&Apps」というメディアをやっています。彼って人との会話で良かったキーワードをEvernoteに全部メモっているんですよ。それがメディアのタイトルなんです。
それで、「この内容を書いたらおもしろそう」というのを、SNSも含めて発話しているんですよ。なので、ネタ帳として言葉をためていって、「これだったら、今の自分の感情を乗せられる」というふうにコンテンツ化しているので。それから僕もEvernoteとかで、いい言葉を常にメモるようにしていますね。
細沼:いい習慣ですよね。しかも、それが話した人との記憶になって、また「久しぶり」となった時も、「そういえば、あの時にあんなことを言っていた人だよな」と、会話のきっかけにもなったり。
枌谷氏が“3万フォロワーの壁”を突破できた要因
枌谷:働く人の時間は限られているじゃないですか。自分が仕事をしている時間にプラスアルファでSNSをやると破綻するので、置き換えるとやりやすいと思います。だから、僕とか安達さんとかは、たぶんメモをSNSに置き換えるみたいな。
僕は今でこそ雑多なものを上げていますけど、初期の2万フォロワーに行くぐらいまでは、BtoBのことしかツイートしていなかったんですね。メディア型運用がいいと思っているので、まず「やりたい」とか「興味がある」と接続させるんですけど、一方でメディアとして考えた時は、テーマを絞ったほうが良い。
細沼:そうですね。
枌谷:ただ、BtoB系の専門カテゴリーだと2~3万フォロワーあたりがピークな気がするんですよね。たぶんそのあたりで止まっている方ってけっこういて。別に僕はそれ以上伸ばす必要はないと思うんですけど。
細沼:2~3万に行ったらけっこうですよね。
枌谷:たぶんそのあたりでピークアウトするんですよ。でも、1個のカテゴリーだとぜんぜん十分なんです。
なぜ僕は有名人でもないのに10万ぐらい行くかというと、テーマが分散していたというのがあると思います。
デザインとか経営とかUX、それからコピーライティングとか、複数のテーマと接点がある状態によって、結果を出し始めた感じですね。別のカテゴリーとひも付いていくので流入が増える、いわゆるカテゴリーエントリーポイント(ブランドを想起するきっかけ)の考え方ですね。
投稿内容のカテゴリーを広げることが事業上、あるいは自分のキャリア上で必要ならやればいいけど、必要ないんだったら、単独メディアで2~3万あれば「このチャネルは終わり。次はYouTubeをやろう」とかでいいと思うし、捉え方次第な気がします。
会社を辞めそうな人は、Xのポストでわかる?
細沼:おもしろい。飯髙さんも同じような感覚?
飯髙:僕は違うんですよ。そもそも、プライベートが入っちゃっているので。
細沼:そうか。スタートがそうなのか。
飯髙:なので、逆に言うと、僕は仕事のことをあまり投稿してないんですね。他のアカウントを見ているとたまに、「この人は何かをやろうとしているんだな」というのはわかります。急にコンテンツ化をやり始めたりとか。
細沼:(笑)。
飯髙:「思いを書き始めたぞ」みたいな時は、何かを狙っているのかって。
枌谷:あと、投稿を見ていると「メンタルがやばそうだな」というのがわかりますよね。
飯髙:あー、ありますね。
細沼:ええ? そこまで?
枌谷:「つらいんだろうな」って。
細沼:「大変なんだろうな」みたいな。
枌谷:だいたい、つらいとちょっと否定的なツイートが多くなったり。「この人、あんまりこういうことを言う人じゃないのにな」という。
飯髙:そうですよね、言っている時がありますよね。
細沼:見る側としてもプロフェッショナルですね(笑)。
飯髙:辞めそうな人もわかりますよね。「今、声を掛けたら来るかもしれないな」とかも、なんとなく空気はわかりますよ。
枌谷:あと、M&Aをした後の経営者とかだと、「そろそろ抜けるのかな」とか(笑)。
飯髙:そうですよね(笑)。
細沼:「全部バレてます」になっちゃう。
枌谷:「たぶんマッチしてないんだろうな」みたいな。