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まとまらない考えをスッキリ整理!「構造化思考」(ゲスト:荒木博行氏)(全3記事)

仕事ができる人はいきなり「フレーム」で整理しない 頭の中をスッキリさせる「構造化思考」の使い方

本の学びを深めるオンライン講座「flier book camp」を運営する株式会社フライヤーが主催したイベントに、『構造化思考のレッスン』著者の荒木博行氏が登壇。順序立てて思考を整理するための「構造化の5P」について解説しました。

「構造化の5P」で順序立てて思考を整理する

荒木博行氏(以下、荒木):順序立てて整理していくためのフレーム「構造化の5P」は、flier book campなどで実際に使っている中心的な概念でもあります。

今日はその5Pの考え方をお伝えして、本をまだ読んでいない方にも、この場を通して持ち帰っていただけたらと思っています。

最初の「P」は、Purpose(パーパス、目的)です。「何のために構造化するのか?」。

久保彩氏(以下、久保):なるほど。

荒木:この視点を最初から出せる人は、実はほとんどいないんです。「とりあえず3つに分けました」みたいな人が多い。でも、ちょっと考えてみてください。例えば上司にこれからのキャリアを相談する時、今まで使っていたような「3本柱」の整理だけで本当に十分ですか?

キャリア相談の文脈なら、「今できていること」「今まさに取り組んでいること」「これからやりたいこと」みたいな分け方のほうが、相手に伝わりやすい場合もあるはずです。だからこそ、「その場で何を伝えたいのか」、つまり目的を意識することが、ものすごく重要なんです。

久保:今の例を聞いただけでも、難しそうって思いました。

荒木:そうなんですよ。

構造化に強いのは“いきなりまとめない人”

荒木:これは抽象的な概念なんですけれども、抽象概念を押さえたあとに必要になるのが、具体的な要素です。それが次の「P」。Piece(ピース、断片)です。「具体的には何があるのか?」つまり構成要素ですね。

じゃあ、「久保さんの仕事を構造化してください」と言われた時、その構造化されたアウトプットを「何に使うのか」(Purpose)というのが、まず1つ目のポイントです。

2つ目のPieceは「久保さんがやっていることを、いったん全部机の上に出してみてください」というフェーズです。

久保:いきなりまとめない、という感じですか?

荒木:そう、いきなりまとめない。「過去・現在・未来」とか、「A向けの仕事・B向けの仕事・C向けの仕事」といったような括りにいきなり飛ばない。まずは、構成要素を全部を出す。これが僕がみなさんの前回のアウトプットを見ていて、決定的に欠けていると感じた点なんですよ。

これをやる人は、実はあまりいません。逆に、これができている人は、構造化が非常にうまくいきます。

久保:へぇ、確かに。世の中にはいろんなフレームワークがあるから、ついそっちに飛んじゃって、思いついたものをそこにはめ込んでしまいがちですよね。

荒木:おっしゃるとおりです。「こうやって仕事は整理するものだよ」とか、「こういう括りで考えるのが正解だよ」みたいなものにいきなり飛びついて、それだけで語ってしまうというパターンが本当に多いんです。

「企画系と運用系だよね」とか、「国内向けと海外向け」だよね、とか。もともと自分が思っていた整理の仕方でいきなり話してしまう。

構造化に欠かせない「視点」の持ち方

荒木:でも、「目的」という抽象的な視点に照らしてみたり、具体的な断片、つまりPieceに照らしてみると、まったく違うPerspectiveが見えてくることがある。Perspective(パースペクティブ)は3つ目の「P」で「視点」のことです。

目的と断片をつなぐキーワードがPerspectiveです。いきなりそこに飛ばないでください、とお伝えしたい。

久保:これは「まとめるための視点」と思っておけばいいんですよね?

荒木:そうです。まとめる時の「視点」です。そして、まとめられた「塊」が4つめ「P」Pillar(ピラー、支柱)、「どのくらいの単位でまとめるのか?」です。

久保:Pillarが「塊」そのもの。なるほど。「これを3本柱でまとめようか」みたいなものですね。

荒木:そうです。そして、みなさんが先ほどチャットで挙げてくださったような「業界別」「業種別」といったのは、視点=Perspectiveの側に入ってきます。

久保:確かに。

荒木:「業界別で分ける」といっても、「いくつの業界に分けるのか」というのが、まさにPillarです。

このPerspectiveとPillarは、最初は少しごちゃっとしてしまっても大丈夫です。むしろ、みなさんが最初につまずきやすいポイントでもありますし、今日のセッションでは詳細に時間をかけて説明する余裕がないので、いったんは「なんとなくでOK」です。

そして最後のPは、Presentation(プレゼンテーション)、つまり「表現」のフェーズです。「最適なビジュアル形式は?」を考えます。例えばマトリックスで見せるのか、それともツリー状にするのか。どんな形式で見せるのが適切かを考えるということですね。

“構造で表したい欲求”が強すぎる人がハマる落とし穴

久保:そういう意味では、いろんなところに落とし穴がありそうですね。構造で表したいという欲求が強すぎて、いきなり「表現」から入ってしまうって、ついやっちゃいますよね。

荒木:本当にそうなんです。「いや、私の仕事はいつもこういうふうに説明してますから」って言って、「はい、どうぞ」と出してくれるんですけど、それが、例えば上司との1on1で、これからのキャリアを話し合う時に本当に適切な表現かというと、そうじゃない可能性もあるわけですよね。

今、チャットにも書き込んでくださってますけど、「バイアスフィルターが知らぬ間にかかってしまう危険性がありそうです」といったご意見もありました。

久保:あぁ〜。確かに、それはありますね。

荒木:今回の目的に対して本当にそれが最適かどうか。1つひとつのシチュエーションが少しずつ違えば、当然、視点も変わるし、支柱も変わるし、表現の仕方だって変わるんです。

このあたりは、僕の本でも口酸っぱく言っている部分です。ストーリー形式で書いてあるので、読んでいただければわかると思いますが、まさにそのことを伝えています。例えば、「あなたのスキルを構造的に表現してください」というお題も、本の中で紹介しています。それを今、少し引用しているんですけど。

このお題を出された時、みなさんが直感的に思い浮かべるスキルってなんだろうなと。「私のスキルは、コミュニケーションスキルと◯◯スキルと××スキルです」みたいに、いきなり羅列しないでほしいというのが、さっきから繰り返し伝えていることです。

久保:言われた瞬間、挙げたくなりますもんね(笑)。「スキルを構造的に」と言われたら、つい。

荒木:そうなんです。だからまず、Purpose(目的)を考えましょうという話になるんです。

「なぜ構造化するのか?」を自分に問う

荒木:これも、本の中にある具体例ですが、「最近あまり評価されていないようで、人事部からも『成長が心配だ』と思われているかもしれない自分」が、1on1の場で人事担当者と話すことになった。そんな状況です。

そこで、「あいつ大丈夫かな」と思われているとしたら、構造化の目的は、「ちゃんと私は順調に成長しているんですよ」ということを理解してもらうことですよね。

久保:確かに、それは大事。

荒木:さらにその上で、今後の自分の成長の方向性について議論をしたい。「だから安心してください」ということと、「ただ、この領域はもっと経験を積んで能力を高めたいんです」といった対話をしたい。そのために、自分のスキルを構造的に表現するということなんです。

この「目的の明確さ」があるかどうかで、構造化の質はまったく変わってくるんです。ただ思いつきで「コミュニケーション」「対人スキル」……しかも「社内的な対人スキル」と「社外的な対人スキル」みたいに、出しやすいところから構造化するのではなくて、「何のためにこの構造を使うのか」をちゃんと考えることが大切なんです。

人事担当者との1on1で使えるスキルマトリクス例

荒木:今回は縦軸・横軸で分けるかたちにしています。この図は本にも書いてあるものと同じです。

ここには前提があって、この会社における1on1の場では、「この人が営業として今後も継続的にがんばれそうかどうか」を見極める意図があるんです。ですので、縦軸には「営業行為との関係性」を入れています。営業に直接関係するスキルか、それともバックオフィス的な役割にも通じる汎用的なスキルか、といった区分です。

横軸はスキルのレベル感です。これは「基礎」「応用」、そしてあえて「マスターレベル」という3段階にしています。例えば、「基礎レベルまではできている」「応用レベルに至っている」といったことで、ある種の安心感を与えられる設計にしています。

さらに、空欄の枠を1つ用意しておくことで、「このあたりの領域は、今後伸ばしていけるんじゃない?」といった建設的な対話がしやすくなる。そういう余白を意図的に残しているんです。

これを1on1で、「今の私のスキルはこんな感じで捉えています」と提示するわけです。営業に直接関係しない汎用スキルから、営業に直結するスキルへ。例えば、「営業系スキルの基礎部分は、かなりできるようになってきました」とか、「汎用的な対人スキルは、応用レベルまでいっていると思います」といった具合に。

久保:確かに。こういう紙が1枚手元にあれば、話がいきなり各論に入れそうですね。

荒木:そうなんです。

久保:逆になかったら、すべてを物語として語らなきゃいけない可能性もありますよね。

荒木:そうなんです。

久保:「この1年でこういう経験をして、こういうことを学んで……」みたいな。

荒木:そう。

対話を前に進めるスキルマトリクスの力

荒木:「君はこの1年で何を身につけた?」って聞かれて、「そうっすね、えーと……あれですかね」とか、ちょっと曖昧になって、ランダムに話が飛んじゃうこともあるじゃないですか。

久保:あります、あります(笑)。

荒木:でも、そういう場面を想定して「ちょっと整理してきました」と言って、構造的に表した紙を見せる。「この軸とこの軸で分けてみたんですけど……」と説明する。「なるほど、なんでこの軸なんだ?」と聞かれて、「こういう意図で選びました」と答える。

もうその時点で、対話の場面が想像できますよね。人事の方と一緒に、実際にその紙に丸をつけたりしながら会話が展開されるような。

久保:「実はこっちの領域なんじゃない?」って言われるかもしれないし、「いや、ちゃんとできてるよ」と言ってもらえるかもしれない。

荒木:「これはもう、早めにこっちへ行ったほうがいいね」とか、「このあたりはもういけるんじゃない?」とか。「いや、営業やってるのに、ここがまだこのレベルだとちょっとマズいんじゃない?」といったようなことも含めて。

「この辺りは無視していいから、まずここを重点的にがんばりなさい」とか。こういった話が、すごく建設的に展開できるんですよね。

久保:確かに。今、具体的なシーンとして想像がつきました。

荒木:だから、こういったものがちゃんと用意できていると、議論の質が大きく変わってくるんですよね。それは、たぶんみなさん直感的にはわかっていると思うんですけど、「じゃあ実際に作ってみてください」と言われると、これがまた、めちゃくちゃ難しいんですよ。

久保:そう! もう、ぐちゃってなっちゃうんですよね。

荒木:何から手をつけていいのかわからない、という状態になる。それを「こういう順番で、こういうふうに考えていくと、意味のある構造が作れますよ」というのが、今回お伝えしている内容です。

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