「どんな仕事をしているの?」と聞かれた時にどう考えるか
荒木:ここからは、みなさんの頭も少し動かしながら一緒に進めていければと思います。例えば、こんなふうに言われたとします。「あなたの仕事を構造化してください」「構造的に整理してください」。もう少しわかりやすい言い方だと「どんな仕事をしているの?」と聞かれた時、みなさんは何を考えますか?
頭の中でちょっと巡らせてみてください。「あなたの仕事を構造的に整理して」「構造化してわかりやすく伝えてください」と言われた時、どんなふうに考えるか。
久保:どうしたら「構造化できている」と言えるのか。ちょっとドキッとします。
荒木:ドキッとしますよね。
チャットでは以下のように答えてくれている方もいますね。「『Why』 『What』『How』を説明するかな」など。
久保:それ、すごくいいな。私も言いたい。
荒木:あと「一言で言えるのがいいのかしら」とチャットに書いてくれている方もいますね。
久保:確かに。
荒木:みなさんも、頭の中で考えたことを、ぜひチャットに入れていただけるといいかなと思います。これ、けっこう難しい問いなんですよ。「いや、自分の仕事ってなんだろう」「いくつかの塊でできてる気がするな」とか、いろいろ考えますよね。
「一言で言えるといいよね」と書いてくれた方もいますね。「一言で言うと◯◯です。それが何本柱でできています」とか、そんなふうに表現するのもいいですよね。「時系列、機能別、信条別」……いろいろな軸で考えてくださっている。
久保:いろんな軸が出てきますね。
荒木:「その仕事におけるミッションを考える」「私なら“品質管理”とまず答えます」なんて声もありますね。
久保:なるほど。いつも使っている表現が、そのまま使えるかもしれませんね。「相手に合わせて粒度を変える」とか。
荒木:あぁ、いいですね。「現在、過去、未来。現在はこういう仕事をしていて、過去にはこういうことをしていて、将来はこういうふうになりたい」といった整理の仕方や、「立場や役割によって表現が変わるかもしれない。社長ならビジネス全体を語るし、社員なら自分の担当業務を語る」といった視点もあります。
久保:確かに。
荒木:このあたり、けっこうポイントをついていると思います。
構造化する前に押さえておきたい目的と使い手の視点
荒木:少し進みますね。例えば、頭の中の独り言をかいつまんでみると、「私の仕事は『企画系』と『実践系』に分かれていて、さらに『国内向け』と『海外向け』があるから、2×2のマトリックスで表現すればいいかな」みたいなことを考えることもありますよね。

チャットの中でも「過去・現在・未来で整理するのが良さそう」とか、「ミッション・ビジョン・バリューで構造化できるかも」といったコメントがありました。どれも、近い整理の仕方かもしれません。
これはこれで、もちろんいいんです。ただ、ちょっと大事なことが抜け落ちている可能性があるんですよね。では、久保さん、ずばり言ってください。
久保:えっ、なんですか? それ……なんだろう。ちょっとわからないかもしれないです。
でも、チャットで書いてくださっている方もいますけど、「相手」や「目的」がよくわかんないですよね。
荒木:そうなんです。今回、「構造化してください」っていうお題しか出していないので、そこから考えてくださった方が多いと思います。でもやはり、「構造化されたものを何のために、誰がどう使うのか」っていうのが、当たり前だけどいちばん大事なんですよね。
みなさんがいろいろと整理してくださったアイデアの数々、それは「何のために使われるのか?」という視点がすごく大事なんです。
構造化の精度は「誰に対して」「何のために」を意識できるかで決まる
荒木:今回は「自分の仕事を誰かに説明する」という文脈で考えていると思うんですけど、その説明する相手は誰なのか。そして、それを聞いた相手は何をするのか。その前提によって、構造的整理の仕方は変わってくるという話なんですよね。
つまり、「構造化された仕事の図を、どこで、どのように使うのか?」。これを考えないといけない。目的に応じて、適切な構造化の仕方があるわけです。
あるいは、「あなたの仕事は本当にそれで全部なの?」というツッコミも重要です。

例えば、「一言で言うと◯◯です」「品質管理とまず答えます」みたいな回答もありました。でも本当に「品質管理」だけで全部言い表せているでしょうか。もちろん、それが的を射ている場合もあるとは思いますが、実は見逃している部分があったりするんです。
実際に取り組む方を見ていても、「あれ、これ、漏れていることたくさんない?」というケースもありました。そうした意味でのツッコミも存在するんです。
それから、「その分け方、本当に最適なのか?」という問いも大切です。例えば「過去・現在・未来」で分ける人もいましたけれども。思いつきやすい分け方って、往々にして凡庸だったりします。
部署別、職種別……それはこれまでよく使ってきた方法かもしれませんが、今回の「目的」に照らしてみた時に、本当にそれが最適なのかというと、疑問が残るケースもあるわけです。
ですから、こうしたツッコミをまず自分自身の中でちゃんとしてみてほしい。そして、それを順序立てて整理していくためのフレームが、「構造化の5P」です。今回の本の柱になっている考え方でもあります。