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アート思考研究会「すごい壁打ち~アイデアを深化させる壁打ちの極意」(全7記事)

上司との壁打ちで「やらなくていい」こと 準備しすぎる真面目なタイプが見落としている視点 [1/2]

『すごい壁打ち~アイデアを深化させる壁打ちの極意』の出版を記念して開催した本イベント。著者で株式会社インキュベータ代表取締役の石川明氏と、創造性ART思考研究会代表幹事の秋山ゆかり氏が「すごい壁打ち」について対談します。本記事では、石川氏の考える「壁打ち」の定義やよくある誤解についてお伝えします。

『すごい壁打ち』著者の石川明氏が登壇

石川明氏(以下、石川):私も少し資料を共有しながらお話をしていきたいと思います。たぶんお会いしたことがない方が大勢いると思うので、まず簡単に自己紹介をさせていただきます。今はインキュベータと名乗っておりますが、主に大手企業の新規事業をボトムアップでどうやって立ち上げるか、に特化してやっています。

社内で何か起案をする方々が、それを起案して社内承認を受けるまでのプロセスに伴走することを、16年ずっとやっているんですけど。かなりニッチな領域でやっているので、逆に業界は問わず、かなり広い業界で新規事業創出のお仕事をしております。

メインはこういった企業とのお仕事なんですが、至善館という大学院と明治大学のビジネススクールでも、やはり事業開発、事業創造といったことを教員として教えている人間でございます。

こういう仕事をやる中で、振り返ってみると自分がやっているやり方は、実はコンサルティングというよりは伴走。伴走をどうやってやっているかというと壁打ち。そんなやり方でやっていることが多いです。

リクルートの社内で飛び交う「壁打ち」

石川:バックグラウンドは、もともとリクルートに入社した時に「壁打ち」という言葉がそこら中を行き交っていたんですね。僕はそれまで壁打ちという言葉をあんまり聞いたことがなかったものですから。

「社会人になるとみんな壁打ちをやるのかな?」ぐらいの感じだったんですが(笑)。もう社内では至るところで「ちょっと壁打ちしようよ」みたいな。「ちょっと壁打ち付き合ってよ」「壁打ちしてみない?」みたいな言葉が、けっこう飛び交っておりました。

そもそもそんな文化の中で育ったんですが、その中で私は新規事業開発室でマネージャーを7年やっていました。この時はもう本当に日々壁打ちという感じで、自分が誰かに「壁打ちに付き合ってください」と言うこともあったり、ほかの人に「壁打ちに付き合ってください」と頼まれることもあったり。そんなことをずっとやってきました。

その後、オールアバウトを創業していくわけなんですが、2000年なので本当にインターネット黎明期で、マーケットがどうなっていくのか、インターネットがどうなっていくのか、もうそれすらもわからないような時代でした。まさに正解がよくわからんという状態でしたから、もがきながら、いろんな人に壁打ちしまくって仕事をしていた感じです。

その後、2010年に独立をして今のようなかたちでやっているんですけど。主にいろんな企業で社内起業をされようとする予備軍のみなさんの壁打ち相手になっているというのが、今の私の仕事です。

新規事業にまつわる書籍を3冊出版

石川:これまで『はじめての社内起業 「考え方・動き方・通し方」実践ノウハウ』『新規事業ワークブック』『Deep Skill 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」』という本を3冊書きました。これは自分の中では新規事業3部作なんですが。

「そもそも新規事業ってどうやって考えていくのよ?」みたいなところから始まって、「具体的な案のまとめ方はどうやってやっていくの?」というのが『(新規事業)ワークブック』、「案はできたんだけどそれをどうやって通していくの?」みたいなところを『Deep Skill』という本で書きました。

秋山さんとの出会いは、実は初めて出した本の『はじめての社内起業』の書評を書いてくださったのが最初でしたね。

秋山ゆかり氏(以下、秋山):ちょうど私が『日経ビジネス』で書評のコーナーを持っていて、当時はまだ石川さんのことは知らなかったんですよね。

でも、同じ事業開発、新規事業の立ち上げをやっている人間として、「あっ、これはおもしろい本だな」と思って、「新規事業の立ち上げに効きそうな本3冊」というのをパンパンパンと並べたうちの1人だったんですね。

そうしたらたまたま私の……「お兄ちゃま」って呼んでいる元リクルートの秋山進さんという方がいるんですけども、お兄ちゃまから、「紹介してあげようか?」って言われてつながったのが、この『はじめての社内起業』でしたよね。

石川:いやぁ、もう初めて書いた本の書評を『日経ビジネス』で書いてくださって。

秋山:しかも紙ですからね。

石川:これはもう本当にうれしくて(笑)。「秋山さん、ありがとうございます!」という感じでご連絡もして、それから懇意にさせていただいているという、そんななれそめでした。それ以来だから、もう10年ぐらいになりますかね?

秋山:10年以上じゃないかしらね?

石川:そうなんですよ。お付き合いをさせていただいているのは非常にありがたいんですが。そんな中で今回この『すごい壁打ち』という本を4冊目として出させていただいた。というのが、私の自己紹介でございます。

ボストン・コンサルティング・グループでもされる壁打ち

石川:いったんここでおうかがいしたいんですけど、壁打ちってどうですか? 秋山さん自身もけっこうやられている感じですか?

秋山:私は、壁打ちだと思わずに壁打ちをずっとやってきている人で、壁打ちという言葉を知ったのはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に入ってからです。

石川:あっ、ボスコンでは壁打ちという言葉はけっこう使うんですね?

秋山:もう二十何年前から。私はちょうど25年前にBCGに入社したんですけれども、その時にはもう壁打ちや1人壁打ちという言葉がありました。

石川:1人壁打ち。

秋山:あとは先輩の頭を使ってやる壁打ちの両方があったんですけど。私自身は、「あっ、私がやってきたことって壁打ちなんだな」とその時に思ったのが……ここで私の具体的な話をしちゃいますね?

石川:ぜひぜひ。

秋山:BCGに入るちょっと前に、私は某大手IT企業にいたんですけれども、そこのプロジェクトがもう本当にデスマーチのプロジェクトで。

石川:デスマーチ(笑)。

秋山:投入していく人、投入していく人、みんな鬱になって来なくなる。実際に職場で亡くなった方もいらっしゃって。自死があって、これはやばいと。私も今すぐ現場から逃げたい。もう辞めたい。でも勢いで辞めるのは嫌だなとすごく思っていたことがあって。

たまたま同期と同じプロジェクトで同じ場にいたんですけど。最初は同期と2人で夜中にトイレに行って、向こうは男子でこっちは女子で、トイレに行ったところで待ち合わせて、その前でコソコソやっていたんですけれども。

みんな鬱になって辞めていく職場…状況を打破するための策

秋山:「この状況をどうやって打破するか?」というところで、「本当に辞めるべきか? 状況を変える方法はあるか?」という2点で、ブレストじゃないんですよね。あれはもう壁打ちだったなというやり方をしていたんです。

石川:なるほど、なるほど。

秋山:その時に私が「先輩を引き込もう」と(言ったんです)。私には親しくしているドイツ人の先輩がいて今でも親しいんですけども。その人に「『キャリアアップにつながる辞め方、抜け出し方は見つけることができるのか?』というテーマでディスカッションしてください」と言ったんです。

石川:(笑)。いや、なかなか難しいテーマですね。

秋山:(そうしたら先輩は)「答えがないのでそれはノーディスカッション」だと。「I can ask questions」って、「私は質問を聞いてあなたの頭の中を整理することはできるけれども、答えはたぶんあなたの頭の中にしかない」と言われたんです。

石川:おぉ。

秋山:いろいろと彼と一緒に壁打ちをしていく中で、私はこうこうこういうスキルを身につけたい。そのためにはこのポジションにいてはまずいと思う。なので、こういうキャリアを考えて社内転職をしようということで、社内でポジションを見つけて行くことになっていたんですけど。

なんと前日の夜に自分のマネージャーが「絶対こいつは手放さない。会社を辞めて行くならかまわない。再入社するならかまわないけど(社内転職は)絶対に嫌だ」と言って人事と揉めて泣いて、元のプロジェクトに戻ったんです。

「辞めるんだったらもっといい会社に行けば?」と言われて、ボストン・コンサルティングとマッキンゼーを受けて、私はマッキンゼーよりボストン・コンサルティングのほうが動物園的だから、「ちょっと動物園に行く」と言って転職をして、今の私があるという感じなのです。

あの先輩に「答えがない。あなたの頭の中にある答えを整理するのを手伝ってあげる」と言われたのが壁打ちだったんだなと、BCGに行ってから思ったんですよね。

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